一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第34期竜王戦第1局

2021-10-10 11:26:20 | 男性棋戦
8日の第34期竜王戦第1局は藤井聡太王位・叡王・棋聖の先手で、相掛かりとなった。これは豊島将之竜王も得意とするところで、熱局が期待された。
豊島竜王は△8六飛のままで△7四歩。これが今風の手で、この歩は▲2四歩の合わせから取られてしまうが、大昔の「横歩3年の患い」にも似て、そう指したら大勢に遅れますよ、と言っているのだ。
それでも藤井三冠は果敢に歩を取りに行った。だがやはり毒饅頭だったようで、藤井三冠はこの飛車の措置に苦労する。
豊島竜王は△2四飛と回り、藤井三冠は▲2七歩。これは相当な辛抱で、初手▲2六歩から飛車先の歩を切った手がほとんど無駄になってしまった。
そして△5四飛に▲6六金!(第1図) これも相当な手で、この手を怠れば△6五桂があるが、それにしたって四段目の金は異筋である。穏やかに▲7八金はなかったものか。しかし▲6六金も、藤井三冠が指すと弾力性のある手にも見える。そういえば昨年6月28日の第91期棋聖戦第2局でも四段目の金(第2図・対渡辺明棋聖)が登場し、話題になったものだった。


藤井三冠は先入観に捉われずに着手するのが、最大の強味に思える。
しかしこの局面を冷静に見れば、藤井三冠の飛車は歩越しで、もう自陣には戻れない。対して豊島竜王の布陣はのびのびとしていて、藤井三冠以外は後手を持つ人がほとんどではないだろうか。ここで封じ手だが、私は豊島竜王が勝ったと思った。
明けて2日目(9日)、封じ手は△8四飛。本命の手で、△8六飛を味よく受ける手がない……と思いきや、藤井三冠は▲5六金。なるほどこうやってお荷物気味の角を捌くのか。
それにしても▲6六金~▲5六金とは升田幸三第四代名人創案のタコ金戦法を思わせる(第3図・1956年1月14日、第5回東西対抗勝継戦・対松田茂役八段)。天才は思考回路が同じなのだろう。

だが現実は藤井三冠が不利。豊島竜王は交換した右桂を△4四桂と金取りに打ち、飛車を入手。そして△7八飛の王手。豊島竜王が順調に勝利に近づいているように思われた。
だがそこから数手進むと、何ともいえない形勢になる。受け一方に見えた藤井三冠の▲7九香が△7三銀と交換になり、竜の威力が絶大だ。三段玉も妙に座りがいい。
そして気が付けば、藤井三冠が勝勢になっていた。もはや豊島竜王も抗いきれず、123手目▲3四桂打まで、藤井三冠の勝ちとなった。
いやはや、藤井三冠、豊島竜王相手にこの将棋を勝つ? 底知れない強さだ。
対して豊島竜王は、この将棋を落としたのは痛かった。勝ちと負けと出はエライ違いで、19歳の怪物相手に、残り6局を4勝2敗は相当キツい。
年末、私たちはビッグニュースに遭遇しそうな気がする。
コメント
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