一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第72期王将戦第1局・第2日目

2023-01-09 23:48:21 | 男性棋戦
第72期王将戦第1局の2日目である。封じ手は大方の予想通りでスタート。▲同金に羽生善治九段は3筋に歩を垂らしたが、これも大方の予想通りだったらしい。
そこで藤井聡太王将が銀捨ての強手を放った。加藤一二三九段の棒銀に、端に銀を捨てる手筋があるが、あれと似た雰囲気だ。
この銀は毒まんじゅうなので羽生九段は取れず、飛車取りに銀を打ち返す。結果、金桂と飛の交換になった。しかし飛車を取った羽生九段の銀が、半分遊び駒になってしまった。
反対に、藤井王将は手にした駒を効果的に使う。手始めは桂で、控えて打った。これが存外厳しかったようで、この桂を軸に、藤井王将が利かしまくる。
羽生九段は辛抱たまらず、この桂を持駒の角と刺し違えたが、こんな手で収めるしかないようでは、羽生九段の劣勢が明確になってしまった。
羽生九段はその桂で、金取りに打つ。先の折衝で駒損になったが、ここで金と桂の交換になれば、駒損をほぼ回復できる。
ところが藤井王将は金を逃げず、銀取りに桂を跳ねた。問題はここである。私たちふつうのアマなら、後手は何はともあれ、桂で金を取って王手をする。
ところが羽生九段はたんに銀を逃げたのだ。この落ち着きがどうだったか。
さればと藤井王将も金を逃げた。金取りの桂をスカタンにし、一本取った形である。
さしでがましいようだが、羽生九段は金を取って、何がいけかったのだろう。
ともあれこれで、藤井王将の勝勢である。藤井王将は中央に桂を成り、羽生九段形作りの王手に捨て銀を放ち、そこで羽生九段の投了となった。
投了図で羽生玉は詰めろになっており、どの筋も測ったようにピッタリ詰む。半分遊んでいた▲2一成銀まで、詰みに一役買っているのだ。藤井王将の将棋には、この「ピッタリ詰む」という形がひじょうに多い。
改めて投了図を見てみると、とりたてて固いともいえなかった藤井玉が、金銀5枚で囲まれている。そして遊び駒が1枚もない。唯一▲1九香は遊んでいるようだが、▲1八角と打つ際の土台になったから、十分役目は果たしたといえる。
局後の談話で、羽生九段は「敗因が分からない」と言った。事実、AIの判断は2日目のかなり遅い時間まで、互角だった。ただ藤井王将のほうが模様がよく、この差が見た目以上に大きかったようである。
例えるなら、藤井王将が毎回100点の手を指していたのに対し、羽生九段は95点の手がチラホラあったということか。
たしか渡辺明名人戦だったか、藤井竜王が渡辺名人のごくふつうといえる手に異議を唱え、それが敗着?とされた将棋があった。
どうも本局にもそれが云えるようで、突き詰めると一手損角換わりを選んだことが文字通り損となり、藤井王将がその修復を許さなかったともいえる。
あらためて、藤井王将の先勝である。藤井王将は残り6局を指し分けで防衛。反対に羽生九段は、残り6局を4勝2敗で乗り切らねばならなくなった。第1局はおろか、第2局も羽生九段が勝ってようやく、羽生九段に奪取の可能性が出たところ。それなのに第1局を負けたのだから、何をかいわんやである。早くも、藤井王将防衛確定になってしまった。
と嘆いてもしょがない。あと3局は藤井VS羽生戦が見られるということで、佳しとしようか。
コメント (3)
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