いまさらという感じだが、前期の女流王位戦五番勝負を振り返る。
第23期は、里見香奈女流名人・女流王将・倉敷藤花が挑戦者になった時点で、甲斐智美女流王位の防衛は危うくなった。甲斐女流王位が1勝を挙げられるかどうか、と私は見ていた。
第1局は4月26日に行われた。甲斐の先手で、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8八角成。里見の指し手は意欲的だが、以下の進行を見ると、成功したとはいいがたい。まだ里見の居飛車には、課題があるようである。
甲斐、37手目に▲8五ポン(桂)を敢行した。部分的にはよくある筋だが、後手が十分の構えを取っているから、有効ではなかった。
対して里見の△5五歩が味わい深い好手。▲8五桂を相手にせず、中央の歩を突く。いかにもプロらしいではないか。
この2手を比較すれば、どちらに勝利の女神が微笑みたくなるかは、自明である。以下は里見が巧みに指し、先勝。早くも甲斐は、苦しくなった。
第2局は連休明けの5月8日に行われた。
先番里見、初手▲2六歩。いまや何の違和感もない。甲斐はゴキゲン中飛車に構える。対して里見は超速▲3七銀。里見は角を成り、飛車を成るが、甲斐も△1四角と据えて決め手を与えない。里見は▲3四金と角を殺したが、歩でも同様に角が死ぬから、できればこの金は打ちたくなかった。
ということで、気分的には甲斐を持ちたくなった。以下、見応えのある応酬が続くが、86手目△5六桂がどうだったか。里見に▲5五銀と銀を取られ、△6八桂成に▲同馬で、一遍に先手玉が堅くなってしまったからだ。
船囲いの醍醐味は、戦いながら囲いを固めていくところにある。▲6八同馬は、居飛車党なら指がしなるところであった。
以下は里見のガジガジ攻めに、甲斐が土俵を割った。難敵里見を相手にタイトルを防衛するなら、優勢の将棋は確実に勝たねばならない。それなのに本局、優勢な将棋を落としては、何をかいわんやである。残り3局を、甲斐が棒に勝つとは思えない。本タイトル戦は、ここで大勢決したのである。
第3局は5月23日に行われた。甲斐の先手で、相三間飛車。お互いの構想力が問われたが、甲斐の▲3七桂が危険な一手だった。これでは桂頭が弱く、後に負担になってしまったからだ。
里見は桂を入手して、△3六歩▲同金△4四(2四)桂を狙う。そしてこれが実現すれば、後手が勝つ。
本譜は▲7四歩△同銀▲8四歩としたが、銀を攻めに呼び込んだ形にもなり、微妙だった。
そして△3六歩▲同金に△6五銀左▲同桂△同銀と、後手に思わぬ形で桂が入った。以下▲7八飛(引)と後手を引いた手に待望の△2四桂が入っては、里見が優勢になった。
以下▲2六金△3六歩▲2五桂△同桂▲同金に△1六桂と跳ねた手が、△2一の飛車が▲2五の金に当たって、王手金取り。ここで里見の勝ちが決まった。このあとも指し手は30手以上続くが、これは甲斐の冷めやらぬ闘志が、指し手を進めさせたにすぎない。
里見、盤石の女流王位奪取だった。
ここまで里見は、タイトル戦で負けなしとか。しかし名だたる強豪の中で、まだタイトル戦を戦っていない女流棋士がいる。中井広恵女流六段である。
現役女流棋士の中で中井女流六段が、里見女流四冠からタイトルを奪取する可能性が最もあると、私は見ている。
第23期は、里見香奈女流名人・女流王将・倉敷藤花が挑戦者になった時点で、甲斐智美女流王位の防衛は危うくなった。甲斐女流王位が1勝を挙げられるかどうか、と私は見ていた。
第1局は4月26日に行われた。甲斐の先手で、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8八角成。里見の指し手は意欲的だが、以下の進行を見ると、成功したとはいいがたい。まだ里見の居飛車には、課題があるようである。
甲斐、37手目に▲8五ポン(桂)を敢行した。部分的にはよくある筋だが、後手が十分の構えを取っているから、有効ではなかった。
対して里見の△5五歩が味わい深い好手。▲8五桂を相手にせず、中央の歩を突く。いかにもプロらしいではないか。
この2手を比較すれば、どちらに勝利の女神が微笑みたくなるかは、自明である。以下は里見が巧みに指し、先勝。早くも甲斐は、苦しくなった。
第2局は連休明けの5月8日に行われた。
先番里見、初手▲2六歩。いまや何の違和感もない。甲斐はゴキゲン中飛車に構える。対して里見は超速▲3七銀。里見は角を成り、飛車を成るが、甲斐も△1四角と据えて決め手を与えない。里見は▲3四金と角を殺したが、歩でも同様に角が死ぬから、できればこの金は打ちたくなかった。
ということで、気分的には甲斐を持ちたくなった。以下、見応えのある応酬が続くが、86手目△5六桂がどうだったか。里見に▲5五銀と銀を取られ、△6八桂成に▲同馬で、一遍に先手玉が堅くなってしまったからだ。
船囲いの醍醐味は、戦いながら囲いを固めていくところにある。▲6八同馬は、居飛車党なら指がしなるところであった。
以下は里見のガジガジ攻めに、甲斐が土俵を割った。難敵里見を相手にタイトルを防衛するなら、優勢の将棋は確実に勝たねばならない。それなのに本局、優勢な将棋を落としては、何をかいわんやである。残り3局を、甲斐が棒に勝つとは思えない。本タイトル戦は、ここで大勢決したのである。
第3局は5月23日に行われた。甲斐の先手で、相三間飛車。お互いの構想力が問われたが、甲斐の▲3七桂が危険な一手だった。これでは桂頭が弱く、後に負担になってしまったからだ。
里見は桂を入手して、△3六歩▲同金△4四(2四)桂を狙う。そしてこれが実現すれば、後手が勝つ。
本譜は▲7四歩△同銀▲8四歩としたが、銀を攻めに呼び込んだ形にもなり、微妙だった。
そして△3六歩▲同金に△6五銀左▲同桂△同銀と、後手に思わぬ形で桂が入った。以下▲7八飛(引)と後手を引いた手に待望の△2四桂が入っては、里見が優勢になった。
以下▲2六金△3六歩▲2五桂△同桂▲同金に△1六桂と跳ねた手が、△2一の飛車が▲2五の金に当たって、王手金取り。ここで里見の勝ちが決まった。このあとも指し手は30手以上続くが、これは甲斐の冷めやらぬ闘志が、指し手を進めさせたにすぎない。
里見、盤石の女流王位奪取だった。
ここまで里見は、タイトル戦で負けなしとか。しかし名だたる強豪の中で、まだタイトル戦を戦っていない女流棋士がいる。中井広恵女流六段である。
現役女流棋士の中で中井女流六段が、里見女流四冠からタイトルを奪取する可能性が最もあると、私は見ている。