一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

桐山九段の「あと7」

2019-08-26 12:25:30 | 将棋雑記
昨日、「通算勝利10傑」を書いていて意外に思ったのは、「1000勝達成棋士」が9人しかいなかったことだ。800勝棋士はかなりいるが、やはり4桁となると至難の業で、数が激減してしまう。
現在1000勝に最も近いのが桐山清澄九段で、993勝である。
だがこれがまさかの数字で、2018年元日の時点では、991勝だったのだ。だから私は「クイズ・正解は1年後2018」に、「桐山九段が公式戦通算1000勝を達成する」と予想したのだ。
ところが2018年、桐山九段は1勝に終わり、予想は大外れとなった。
そして今年も桐山九段は、3月に1勝したのみである。この間、実に26連敗。公式戦の連敗記録は「30」(31という説もある)だが、2位の「25」を抜いて、その名前を刻んでしまった。

■2017年度
2月某日 第68回NHK杯将棋トーナメント予選2回戦 ○阿部隆八段
2月某日 第68回NHK杯将棋トーナメント予選決勝 ●竹内雄悟四段
2月27日 第44期棋王戦予選2回戦 ●杉本昌隆七段
3月15日 第76期順位戦C級2組10回戦 ●村中秀史六段
3月23日 第68期王将戦一次予選2回戦 ●船江恒平六段

■2018年度
4月23日 第31期竜王ランキング戦4組昇級者決定戦1回戦 ●矢倉規広七段
6月22日 第77期順位戦C級2組1回戦 ●竹内雄悟四段
7月某日 第27回銀河戦予選 ●大橋貴洸四段
7月26日 第77期順位戦C級2組2回戦 ●高野智史四段
8月9日 第12回朝日杯将棋オープン戦一次予選2回戦 ●豊川孝弘七段
8月21日 第4期叡王戦九段戦1回戦 ●森下卓九段
8月30日 第77期順位戦C級2組3回戦 ●西川和宏六段
9月5日 第60期王位戦予選2回戦 ●大石直嗣七段
9月20日 第77期順位戦C級2組4回戦 ●佐藤紳哉七段
9月27日 第67期王座戦一次予選2回戦 ●山本真也六段
10月11日 第90期棋聖戦二次予選1回戦 ●畠山鎮七段
11月8日 第77期順位戦C級2組5回戦 ●上村亘四段
11月15日 第31期竜王ランキング戦4組残留決定戦 ●黒沢怜生五段
11月29日 第77期順位戦C級2組6回戦 ●南芳一九段
12月20日 第77期順位戦C級2組7回戦 ●池永天志四段
12月27日 第45期棋王戦予選2回戦 ●小林裕士七段
1月10日 第77期順位戦C級2組8回戦 ●阿部光瑠六段
1月15日 第69期王将戦一次予選1回戦 ●神崎健二八段
1月22日 第32期竜王ランキング戦5組1回戦 ●都成竜馬五段
2月1日 第77期順位戦C級2組9回戦 ●佐藤和俊六段
2月某日 第69期NHK杯将棋トーナメント予選1回戦 ●船江恒平六段
3月7日 第77期順位戦C級2組10回戦 ●島本亮五段
3月12日 第32期竜王ランキング戦5組昇級者決定戦1回戦 〇伊奈祐介六段

■2019年度
4月16日 第32期竜王ランキング戦5組昇級者決定戦2回戦 ●藤倉勇樹五段
6月13日 第78期順位戦C級2組1回戦 ●藤森哲也五段
7月4日 第78期順位戦C級2組2回戦 ●中村亮介六段
7月25日 第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選2回戦 ●村田智弘六段
8月8日 第78期順位戦C級2組3回戦 ●渡辺大夢五段
8月13日 第61期王位戦予選1回戦 ●脇謙二八段
(このほかに、銀河戦と思われるナゾの●が1局あり)

桐山九段は棋王1期、棋聖3期の実績を持つ大棋士で、大崩れしないイメージがある。ゆえに26連敗はにわかには信じがたいが、やはり若手棋士の実力の向上と、自身の加齢による衰えがあるのだろう。
心情的にはもちろん1000勝を達成させてあげたいが、こんな状態だと、今後は1勝もできないのではという気がしてくる。しかも桐山九段は現在順位戦C級2組で降級点を2つ取っている。すなわち今期3つ目を取ったら、強制引退となる。時間がないのだ。
いや違う。3月の竜王戦5組で勝利したのが大きく、現役を引退しても、5組在籍を維持すれば、最長2期、竜王戦を戦える。
いずれにしても、あと7勝。真部一男九段が598勝で亡くなったのは、心の弟子として残念無念だが、今回のキリ番は大記録である。奇跡は起こるだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

谷川九段は、通算勝利数を2位にできるか

2019-08-25 00:19:34 | 将棋雑記
この17日に谷川浩司九段が公式戦通算1324勝を達成し、3位の加藤一二三九段に並んだ。
3位とは若干中途半端だが、新聞ではしっかり記事になっていた。11日の日本シリーズで藤井聡太七段が和服を着たことが新聞記事になったのも驚いたが、将棋もメジャーになったものだ。
ではここで、通算勝利10傑を記しておこう。

1位 羽生善治九段 1439勝594敗2持 0.7078
2位 大山康晴十五世名人 1433勝781敗2持 0.6472
3位 加藤一二三九段 1324勝1180敗1持 0.5288
3位 谷川浩司九段 1324勝852敗3持 0.6084
5位 中原誠十六世名人 1308勝782敗3持 0.6258
6位 内藤國雄九段 1132勝1000敗 0.5310
7位 米長邦雄永世棋聖 1103勝800敗1持 0.5796
8位 有吉道夫九段 1088勝1002敗 0.5206
9位 佐藤康光九段 1035勝631敗 0.6212
10位 桐山清澄九段 993勝939敗 0.5139
(2019年8月24日現在)

谷川九段は1977年2月の初対局から、42年6ヶ月での達成。年平均31勝だが、2010年度から負け越し数が多くなる。

2009年度 21勝16敗
2010年度 11勝18敗
2011年度 10勝17敗
2012年度 11勝15敗
2013年度 14勝22敗
2014年度 12勝20敗
2015年度 11勝17敗
2016年度 12勝18敗
2017年度 17勝14敗
2018年度 28勝19敗
2019年度 9勝11敗

谷川九段は2009年4月から2011年3月まで日本将棋連盟棋士会会長。同年5月から2012年12月まで専務理事。同年12月、米長邦雄会長(永世棋聖)の逝去に伴い、会長就任。以降、2017年1月まで務めた。
この間は成績が低迷し大きく負け越したが、会長辞任のあとは、激務から解放されたのがよかったのか、2017年度は8年振りの勝ち越しを決めた。そして2018年度は28勝を挙げ、2003年度・38勝以来の勝ち星となった。
大山十五世名人のように、多忙をエネルギーに変える人もいるが、このケースは稀。谷川九段のような棋士には、対局に専念させてあげなければいけないと思う。
では、谷川九段が通算勝利2位の1433勝を達成することはできるか。残り109勝だが、年度15勝すれば、あと7年半で抜ける計算だ。
これは谷川九段が還暦以後も健康に留意すれば、達成できる。
問題は、谷川九段が突発的な不調に陥って、順位戦をB級2組に降級してしまった場合だ。
何しろ、永世名人がB級2組で指したケースはない。谷川九段も、そこまで落ちて指したくはないだろう。
谷川九段の将棋は格調が高く、熱狂的なファンも多い。それだけに、自己の進退にも厳しくあると思われる。
いずれにしても私は、今後の戦いに注目している。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近見た夢(2019-08-19、23)

2019-08-24 00:37:38 | 
最近見た夢を記しておこう。
まずは19日に見た夢。私は観光地を散策していた。雰囲気的には偕楽園か梅園みたいな感じだった。
私は木村拓哉と一緒に散策していたのだが、当然周りはキムタクが分かる。ヒトも集まってくるのだが、「これはプライベートなので、私の存在はないものと思ってください」みたいなことをキムタクがいい、散策は続けられた。
どうもこの場所には芸能人がいっぱいいて、誰かとペアを組んで歩いているらしかった。そのうち私の散策相手がタモリになった。
しばらく歩いていると向こうから若い男性が来て、「私は羽田恵梨香の……」と言うので近くにいるのかと思ったら「ファンです」というのでズッコケた。
……というところで、尿意で何となく目が覚めた。

続いて23日に見た夢。
私は新宿にいた。大通りの真ん中には、立派な廃線跡が通っていて、レールや枕木が残っていた。いまは冬で、黄昏時に雪が舞っていた。
そこはかつて「太陽にほえろ!」のロケ現場だった。私は刑事役でレギュラーを務めたらしい。
そばに黒電話があって、それは過去の現場に通じるらしかった。私は石原裕次郎に電話をかけた。こういう設定は、日本でも放送された、韓国ドラマの「シグナル」のようだ。
石原裕次郎は、七曲署の刑事部屋で、受話器を取った。私は、「『太陽にほえろ!』は、21世紀の今、伝説的な番組になって、(ビデオなどで)誰でも見られるようになっています。だから今の撮影を頑張ってください」と激励した。
場面変わって、私はある洋館にいた。そこでは飯野愛女流初段ともう1人男性がいて、手塚治虫のマンガをリメイクした同人誌を描いていた。でもその画風は手塚治虫というより、石ノ森章太郎だった。
なぜ飯野女流初段が出てきたか。それは、「刑事7人」で倉科カナを見たからだと思う。飯野女流初段と倉科カナはちょっと似ている。
私と飯野女流初段はいい雰囲気だった。
ある日から、洋館の2階に人が住み込むようになった。2人目の住人は、私が3番目に就職した会社の社長だった。私は緊張したが、媚びへつらうことはなかった。
社長が荷物を部屋に入れたところで、何となく目が覚めた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カトモモに教えていただく(後編)

2019-08-23 00:31:40 | 女流棋士の指導対局会

第7図以下の指し手。△6二同金▲4二竜△6六桂▲8八玉(第8図)

加藤桃子女流三段がこちらに向き直り、すぐに△6二同金。私は▲4二竜と指す。
「そんな手がありましたか」
と加藤女流三段が絶句した。やはり見落としていたのだ。まあ▲6二銀成のところで気づいても、▲7二成銀が王手になるから、△6二同金▲4二竜は実現する。
ただこうなったらこうなったで、加藤女流三段は突撃してくるだろう。△5二桂なら被害は最少に抑えられるが、加藤女流三段がそんな愚手を指すはずがない。果たして加藤女流三段は、△6六桂ときた。
これには▲8八玉が読み筋だったが、▲6六同銀もあるか。だが△6六同馬▲6二竜△9九馬は下手が負けだろう。また▲6七玉は、△5八銀以下、相当怖い思いをする。
このわずかな逡巡に、加藤女流三段はあちらを向いた。3局目が終わり、Tok氏が勝ったようだ。
「だいぶ緩めてもらいましたか? なんか途中から、ずいぶん指し手がやさしくなった気がしたんですが……」
と謙遜している。加藤女流三段は笑って答えない。相当「天使モード」が入ったようだ。
W氏が、「残り時間5分です」と散文的に告げる。規定では、5分前に全対局終了だが、次はお昼休みということもあり、多少のアディショナルタイムは作ってくれるだろう。
私は予定通り▲8八玉と寄った。

第8図以下の指し手。△7八銀▲同金上△同桂成▲同玉△7七馬▲同玉(第9図)

まだ加藤女流三段の感想戦は続いている。私は前のめりになって考える。背後に大野八一雄七段の気配があったが、よく分からない。局面、ここで△5八銀がイヤなのだ。▲6二竜は△6九銀成で上手勝ち。下手は金を何枚持とうが、銀がなければ詰めろがかからない。
よって△5八銀には▲7九金と寄るが、△5九銀不成(参考A図)と突っ込まれてどうか。これは下手に勝ちがないように思われた。

加藤女流三段の指し手は△7八銀。これでも寄るのか?
▲同金上△同桂成▲同玉に、間髪入れず△7七馬! ここは△5八金(参考B図)もあるから意外だった。ああ、これは指導対局特有のやつだと思った。成算はないが時間もないので、結着をつけにきたのだ。ただしこれは下手にも勝機があり、正しく指せば下手が勝つ。実際私は渡部愛女流三段戦で、このパターンで緩めてもらったことがある。

私は▲7七同玉と取った。

第9図以下の指し手。△8七香成▲同玉△6八竜(第10図=仮想図)

ここで4局目の指導対局が終わり、やはり下手勝ち。それにしても、手練れの加藤女流三段に、こんなに下手が勝つものなのか? 何か忖度が入っているのだろうか。
局面、ここで△8七香成▲同玉△6八竜を仮想図として考える。ここで上手玉に即詰みがあれば話は早い。そして▲7一銀△同玉▲6二竜△同玉▲7四桂△同歩▲5一角△7一玉▲6二金△8二玉▲7二金△同玉▲6三馬△同玉▲6四香△5四玉▲4五銀打△4三玉▲3三金△5二玉▲4二金(参考C図)で詰め上げた。

だがよく見ると、▲7四桂捨てはいらない。それと、あまり綺麗な詰まし方に見えない。もう少しスッキリ詰む手順はないか?
加藤女流三段は向き直って、△8七香成。ここ△6一金打とする手は、指導対局ではない。
加藤女流三段は▲6七玉を読んでいたのか、▲同玉に一瞬手を止め、△6八竜と金を取った。

第10図以下の指し手。▲7一銀△同玉▲6二竜△同玉▲5一角△7一玉▲6二金△8二玉▲7二金△同玉▲6四桂△同歩▲6二角成(投了図)
まで、100手で一公の勝ち。

私は▲7一銀から、別手順で詰ました。▲6二角成に加藤女流三段が投了。
「綺麗な詰みですね」
「銀が入れば詰むと思ったんですが」
実際は角までいただいたのが大きかった。そして端歩の突きあいがなかったことが、私に幸いした。

「久しぶりに香落ちを指したから懐かしかった……。中盤までうまくいったと思ったんですけど……。△3六歩がよくなかった。▲3五飛で△3八竜が釘付けにされてしまって」
と加藤女流三段。
「まあ指導対局ですから」
「(序盤の)△7六銀のところ、角を上げるのかと思いました」
「? 角を(6六に)上がりましたが」
「イエ、角を差し上げる定跡があるんです」
「?」

第3図で私は▲6六角と上がったが、▲8六歩があるという。上手は△8七香だが、▲7七歩△8八香成▲同銀(参考D図)で、この後7六の銀を取れるという寸法だ。

「だからこの定跡をご存知なのかなと思って」
「イエイエ知りません。だけどこの香、こちらがくれてやった香ですよね。これを取り返したところで、角銀交換の駒損ですよね。これで下手がいいんでしょうか?」
調べてみると、以下の順は上手十分だった。
むろん本譜の順も下手が負けのはずで、一案で、第8図での△5八銀を聞いてみた。
「それは▲7九金で」
「私もそれは指すつもりでしたが、△5九銀不成とされて、指す手が分かりませんでした」
「ああ……」
もう時間も過ぎているので、感想戦はこれで終わりとなった。
無職はもう帰るのみ。大野七段に結果を聞かれ、「緩めてもらいました」と報告した。「でも香落ちでしたから」
「それでも大したもんですよ」
W氏とも軽く話をした。
「職業訓練所とか通ったらどう?」
「ありがとう。もう自分がアホすぎて、将棋を指す気力もないよ」
加藤女流三段はさすがに強く、羽生善治九段ではないが、私が勝ちと思ったのは、終盤加藤女流三段が△6八竜と指したときだった。いつも書いていることだが、上手は駒落ちの6面指しで、ほぼノータイム指し。それで下手を掌の上で転がすのだからさすがである。
今回は時間オーバーまで付き合ってくださった、加藤女流三段に感謝いたします。

帰宅後、参考A図を考える。△5九銀不成以下、▲6九金打△6八銀成▲同金直(参考E図)でどうか。ここで△5八金なら▲6二竜として、今度は持駒に銀があるから下手勝ち。

また参考B図の△5八金には、▲同金△同竜▲6八金で受かっているようだが、△8八金(参考F図)の鬼手があり、以下即詰み。▲6八金を▲6八銀打や▲6八桂に代えても、やはり△8八金から詰む。

ゆえに下手は△5八金のとき▲4四竜と馬を取り、これで逃げ切っていると思うが、精密な読みを要求される。私の棋力では勝てたかどうか。
あらためて、この将棋をよく勝ったと思った。
(おわり)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カトモモに教えていただく(中編)

2019-08-22 00:09:48 | 女流棋士の指導対局会

第2図以下の指し手。▲1四飛△4三銀▲4六歩△5四銀▲4七銀△6五銀▲5六銀△7六銀(第3図)

大野八一雄七段は、奥の和室で指導対局中だ。
第2図から▲1四飛。これも定跡の手だが、よく分からない。△2五桂ハネの際、あらかじめ桂の裏側に潜っておこうの意だろうか。△4三銀に▲4六歩。定跡通りだとは思うが、微妙に局面が違う気がする。
でもよく考えたら、加藤桃子女流三段は奨励会で、香落ちをいっぱい指してきたのだ。経験値は私よりはるかにあるわけで、もうこちらは上手の術中に陥っているのかもしれない。
△6五銀と進出され、銀の出足の速さに驚いた。大昔、知人との駒落ち戦で、上手の私が素早く銀を繰りだしたら、「なんで銀がそこにいる? 銀って、そんなに速かった!?」と驚かれたことがあったが、まさにそれを実感した。
▲5六銀に上手が交換に応じるはずもなく、加藤女流三段は△7六銀。あの銀が4連続着手で、自玉頭まで来てしまった。

第3図以下の指し手。▲6六角△4五歩▲8八銀△6六角▲同歩△3六飛▲7七歩(第4図)

第3図で上手の狙いは△8四香だ。この香は下手がくれたもので、なんでこの香に苦しめられなければならないのかと思う。
私は▲6六角と先逃げしたが、いかにも気が利かない。
加藤女流三段は△4五歩。上手はこれで角を捌けば言うことなしだ。
ここで▲3三角成△同飛▲4五銀は、△8七銀成▲同玉△3二角の王手飛車がある。
まあこうはならないが、8七の地点をケアするに越したことはなく、▲8八銀と上がった。
加藤女流三段は△6六角▲同歩△3六飛。ここで私は▲7七歩。以下△8五銀▲2四飛で下手も指せる……つもりが、加藤女流三段はそんな甘い手は指さなかった。

第4図以下の指し手。△3九飛成▲7六歩△2九竜▲1五飛△3八竜(第5図)

加藤女流三段は△7六銀に目もくれず、ノータイムで△3九飛成! これが鍛えの入った手で、本局一、驚いた。もう加藤女流三段レベルまで来ると、たんに逃げるだけの手は指さないのだ。これは先月の社団戦の△5五同飛~△5六桂に雰囲気は似ているが、△3九飛成のほうがはるかに洗練されている。
私は銀を取ったが、△2九竜で銀桂交換。しかも竜を作られ、何より▲2四飛を阻止されたのが痛い。加藤女流三段が飛車成を優先させたのも、これが目的だったのだ。とするならば、私の▲7六歩では、▲2四飛を先にすべきだった。
▲1五飛は、せめて飛車を働かせようという手。ここで意地悪く△2五歩と指されたら私は指し手に窮したが、加藤女流三段はじっと△3八竜。これはこれで、不気味な手である。

第5図以下の指し手。▲2三角△4六歩▲4八歩△3六歩▲3五飛△3七歩成▲4一角成△4七歩成▲同歩△4九角▲6八金寄△7六角成▲3一飛成△6二金寄(第6図)

このあたりでKur氏の将棋が終わった。この時間帯なので、上手の勝ち。まあそうであろう。
しばし感想戦をやったが、引き続き2局目となった。途中終了となる可能性大だが、客は1時間半みっちり指せるのである。ただこのシステムは個人的に反対で、これではいつまで経っても6面指しだから、進行がスピードアップしない。
ほかの進行は、まあまあ中盤から終盤にかかっているが、私のところがいちばん遅い。私も加藤女流三段が局面を見たら指すようにしているのだが、1回ごとの指し手が少ないのだ。もちろん私の責任である。
第5図でまったく指し手が分からなかった。▲4一角と迷ったが、何となく自陣に利かそうと▲2三角。これは▲4五角成や、▲1二角成~▲1三飛成も狙っている。ちょっと大山康晴十五世名人が指しそうな手にも見えるが、もちろん似て非なるものだ。
△4六歩に私は▲4五飛と回ったが、指を離した瞬間、△3六角があることに気付いた。加藤女流三段はあちらを向いていたので、私はこっそり待ったをする。ああもう、こんな有様なら投げちゃいたい。
▲4八歩の辛抱に△3六歩。今度はこの筋からと金作りか。こうなれば、上手は考える手間が要らない。これはマジで、投了しようかと思った。
まあ、▲3五飛。上手が△3七歩成~△4八とと来たとき、▲3八飛△同とで、一時的にと金をソッポにやれる。先月の社団戦の将棋の森戦で、相手が△3五飛と打ったのと同じ手筋だ。
だが、これで形勢が挽回できたとは露ほども感じない。
加藤女流三段は△4七歩成から△7六角成。今度は玉頭に馬がきてしまった。
私は▲3一飛成。もはや敗勢だが、大駒を2枚成って、多少なりとも見られる局面にはなった。

第6図以下の指し手。▲7七銀△4三馬▲7六歩△8二玉▲5一銀△8四香▲6五歩△4四馬▲6二銀成(第7図)

ここらあたりで、2人目の対局も終わった。今度は下手が勝ったようだ。
私は第6図で▲5一銀と掛けたいのだ。だが銀を渡すのは怖いし、現状でも△7六馬の存在は脅威だ。それで▲7七銀と壁銀を立て直した。飯野愛ちゃん戦でも指した手だ。
だがこちらを向いた加藤女流三段にヒョイと△4三馬と引かれ、またも私はクサッタ。馬の守りが鉄壁で、上手玉に寄り着けなくなってしまったからだ。なかんずく次は、△7四香がある。以下△7七香成▲同桂△7六桂となれば寄り筋だ。
それで▲7六歩と泣きの涙で辛抱をしたのだが、加藤女流三段は落ち着いて△8二玉。とうとう安全地帯に逃げ込まれてしまった。
せめて端歩の交換があれば▲9五歩と突くのだが、本局はダメだ。もうどうにでもせいと▲5一銀と掛けたが、いかにも証文の出し遅れだ。
そして△8四香にまたシビれた。次は△7五桂が必殺である。それを受けても△9五桂があるが、とりあえず▲6五歩と突いた。しかしこれも6六に空間ができ、すこぶる味が悪い。
加藤女流三段は△4四馬と指すだろう。あれっ? だがそれは、こちらにもチャンスがある?
果たして加藤女流三段は△4四馬と指した。ここで▲6二銀成△同金▲4二竜となれば、馬金両取りではないか。
私は▲6二銀成。加藤女流三段は再び感想戦を続けている。こっちを見たら、何も考えず△6二同金と取ってくれよ、と祈った。

(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする