一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

カトモモに教えていただく(中編)

2019-08-22 00:09:48 | 女流棋士の指導対局会

第2図以下の指し手。▲1四飛△4三銀▲4六歩△5四銀▲4七銀△6五銀▲5六銀△7六銀(第3図)

大野八一雄七段は、奥の和室で指導対局中だ。
第2図から▲1四飛。これも定跡の手だが、よく分からない。△2五桂ハネの際、あらかじめ桂の裏側に潜っておこうの意だろうか。△4三銀に▲4六歩。定跡通りだとは思うが、微妙に局面が違う気がする。
でもよく考えたら、加藤桃子女流三段は奨励会で、香落ちをいっぱい指してきたのだ。経験値は私よりはるかにあるわけで、もうこちらは上手の術中に陥っているのかもしれない。
△6五銀と進出され、銀の出足の速さに驚いた。大昔、知人との駒落ち戦で、上手の私が素早く銀を繰りだしたら、「なんで銀がそこにいる? 銀って、そんなに速かった!?」と驚かれたことがあったが、まさにそれを実感した。
▲5六銀に上手が交換に応じるはずもなく、加藤女流三段は△7六銀。あの銀が4連続着手で、自玉頭まで来てしまった。

第3図以下の指し手。▲6六角△4五歩▲8八銀△6六角▲同歩△3六飛▲7七歩(第4図)

第3図で上手の狙いは△8四香だ。この香は下手がくれたもので、なんでこの香に苦しめられなければならないのかと思う。
私は▲6六角と先逃げしたが、いかにも気が利かない。
加藤女流三段は△4五歩。上手はこれで角を捌けば言うことなしだ。
ここで▲3三角成△同飛▲4五銀は、△8七銀成▲同玉△3二角の王手飛車がある。
まあこうはならないが、8七の地点をケアするに越したことはなく、▲8八銀と上がった。
加藤女流三段は△6六角▲同歩△3六飛。ここで私は▲7七歩。以下△8五銀▲2四飛で下手も指せる……つもりが、加藤女流三段はそんな甘い手は指さなかった。

第4図以下の指し手。△3九飛成▲7六歩△2九竜▲1五飛△3八竜(第5図)

加藤女流三段は△7六銀に目もくれず、ノータイムで△3九飛成! これが鍛えの入った手で、本局一、驚いた。もう加藤女流三段レベルまで来ると、たんに逃げるだけの手は指さないのだ。これは先月の社団戦の△5五同飛~△5六桂に雰囲気は似ているが、△3九飛成のほうがはるかに洗練されている。
私は銀を取ったが、△2九竜で銀桂交換。しかも竜を作られ、何より▲2四飛を阻止されたのが痛い。加藤女流三段が飛車成を優先させたのも、これが目的だったのだ。とするならば、私の▲7六歩では、▲2四飛を先にすべきだった。
▲1五飛は、せめて飛車を働かせようという手。ここで意地悪く△2五歩と指されたら私は指し手に窮したが、加藤女流三段はじっと△3八竜。これはこれで、不気味な手である。

第5図以下の指し手。▲2三角△4六歩▲4八歩△3六歩▲3五飛△3七歩成▲4一角成△4七歩成▲同歩△4九角▲6八金寄△7六角成▲3一飛成△6二金寄(第6図)

このあたりでKur氏の将棋が終わった。この時間帯なので、上手の勝ち。まあそうであろう。
しばし感想戦をやったが、引き続き2局目となった。途中終了となる可能性大だが、客は1時間半みっちり指せるのである。ただこのシステムは個人的に反対で、これではいつまで経っても6面指しだから、進行がスピードアップしない。
ほかの進行は、まあまあ中盤から終盤にかかっているが、私のところがいちばん遅い。私も加藤女流三段が局面を見たら指すようにしているのだが、1回ごとの指し手が少ないのだ。もちろん私の責任である。
第5図でまったく指し手が分からなかった。▲4一角と迷ったが、何となく自陣に利かそうと▲2三角。これは▲4五角成や、▲1二角成~▲1三飛成も狙っている。ちょっと大山康晴十五世名人が指しそうな手にも見えるが、もちろん似て非なるものだ。
△4六歩に私は▲4五飛と回ったが、指を離した瞬間、△3六角があることに気付いた。加藤女流三段はあちらを向いていたので、私はこっそり待ったをする。ああもう、こんな有様なら投げちゃいたい。
▲4八歩の辛抱に△3六歩。今度はこの筋からと金作りか。こうなれば、上手は考える手間が要らない。これはマジで、投了しようかと思った。
まあ、▲3五飛。上手が△3七歩成~△4八とと来たとき、▲3八飛△同とで、一時的にと金をソッポにやれる。先月の社団戦の将棋の森戦で、相手が△3五飛と打ったのと同じ手筋だ。
だが、これで形勢が挽回できたとは露ほども感じない。
加藤女流三段は△4七歩成から△7六角成。今度は玉頭に馬がきてしまった。
私は▲3一飛成。もはや敗勢だが、大駒を2枚成って、多少なりとも見られる局面にはなった。

第6図以下の指し手。▲7七銀△4三馬▲7六歩△8二玉▲5一銀△8四香▲6五歩△4四馬▲6二銀成(第7図)

ここらあたりで、2人目の対局も終わった。今度は下手が勝ったようだ。
私は第6図で▲5一銀と掛けたいのだ。だが銀を渡すのは怖いし、現状でも△7六馬の存在は脅威だ。それで▲7七銀と壁銀を立て直した。飯野愛ちゃん戦でも指した手だ。
だがこちらを向いた加藤女流三段にヒョイと△4三馬と引かれ、またも私はクサッタ。馬の守りが鉄壁で、上手玉に寄り着けなくなってしまったからだ。なかんずく次は、△7四香がある。以下△7七香成▲同桂△7六桂となれば寄り筋だ。
それで▲7六歩と泣きの涙で辛抱をしたのだが、加藤女流三段は落ち着いて△8二玉。とうとう安全地帯に逃げ込まれてしまった。
せめて端歩の交換があれば▲9五歩と突くのだが、本局はダメだ。もうどうにでもせいと▲5一銀と掛けたが、いかにも証文の出し遅れだ。
そして△8四香にまたシビれた。次は△7五桂が必殺である。それを受けても△9五桂があるが、とりあえず▲6五歩と突いた。しかしこれも6六に空間ができ、すこぶる味が悪い。
加藤女流三段は△4四馬と指すだろう。あれっ? だがそれは、こちらにもチャンスがある?
果たして加藤女流三段は△4四馬と指した。ここで▲6二銀成△同金▲4二竜となれば、馬金両取りではないか。
私は▲6二銀成。加藤女流三段は再び感想戦を続けている。こっちを見たら、何も考えず△6二同金と取ってくれよ、と祈った。

(つづく)
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