付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「電脳コイル」 NHK教育

2007-12-08 | VRMMO・ゲーム世界
 今よりも少し未来の、たぶん日本。電脳インフラが行き渡り、誰もが自覚することなく電脳を使っている世界。子供たちは電脳メガネと呼ばれるウェアラブルコンピューターを使ってインターネットに常時接続し、現実の街並とバーチャルな街並を重な合わせた世界でペットを飼ったり、ゲームをしたりしていた。
 父親の転勤で金沢から大黒市に引っ越してきた小学6年生、小此木優子は電脳ペットのデンスケが謎の電脳生物と共に壁の中へと消えていくのを目撃し、それを追ううちにコイル探偵局員と名乗る小学生フミエと知り合う。
 彼女らの前に現れ消えるのは黒い電脳生物イリーガル、そしてイリーガルの秘密について何か知っているらしい、もう1人の転校生天沢勇子だった……。


 少年ドラマシリーズの流れを汲む、視聴者である子供が見知った世界からちょっと外れたところで発生する事件を描く物語。
 『攻殻機動隊』のように「電脳空間の利用が日常茶飯事/生活の一部となった世界」で生きる少年少女を主人公に、「電脳空間の宝捜し」「廃棄データからの情報抽出」「違法改造ツール」「ハッキングによる情報戦」「闇マーケット」「記憶の植え付け」「電脳生命体」「管理者と非管理者の対立」「現実空間と電脳空間のギャップ」といった、サイバーパンクSFとかで登場したようなイベントやアイテムを一通り、「日本の子供の世界」と解釈して取り込んだ上で、「ボーイ・ミーツ・ガール」「信頼していた者の裏切り」「対立していた者たちの呉越同舟/協力体制の構築」から「さらなる真の敵の出現」と物語の王道を突き進んでいきます。もう、草薙素子が出てこないのが不思議なくらい。

 第1話から夫婦でワクワクしながら見守っていたけれど、仲間うちで一気に人気沸騰したのは第12話『ダイチ、発毛ス』、通称“ヒゲの回”から。「ヒゲ達のウワサによると紀元5550分、ヤサコ様が約束の地にお導きくださるそうです」の優子の語りから始まるこの回だけが特別にすごいわけではないのだけれど、1話完結の番外編的な作りで、しかもスラップスティック的な展開に勧めやすかったからです。
 本年度のSF映像作品としては『天元突破グレンラガン』とタメを張りますね。どっちが上になるのか。グレンラガンは決着したので、あとは電脳コイルのたたみ方を見守るだけです。(19.10/22)



 電脳コイルも終了。
 怒濤の展開で盛り上げ、キレイにすとんと落としましたね。さまざまな人やモノやシステムが内包していた問題が一気に噴出して、助けようとする者、すべて消し去り無かったことにしようとする者、問題を拡大させて破滅させようという者、さまざまな勢力のぶつかり合いの中、イサコを救おうとヤサコは崩壊しつつある電脳空間に飛び込みます。
 そしてコイルの本当の意味が明らかになり、父親は正体を明かし、ヤサコとイサコそれぞれの記憶の中に封印されていた真実が明らかになります。
 うん。やっぱりNHKのジュブナイルSFってスゴイわ。


【日常からの不思議】【電脳空間】【サイバー戦】【ヒゲ】【記憶】
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「銀河市民」 ロバート・A・ハインライン

2007-12-08 | 宇宙・スペースオペラ
 惑星サーゴンの奴隷市場で痩せこけた少年ソービーを買いとったのは年老いた乞食バスリムだった。
 バスリムに買われたソービーが気づいたのは、老人が優れた人格と知性を持ち、そしてときおり奇妙な行動を見せること。彼はいったい何者なのだろうか。そして自らの出自を探るべく、人類発祥の星である地球へと向かうのだが、そこには大きな陰謀が隠されていた……。


 この本は旧版(写真左)を持っていたのだけれど、ワールドコン2007に出かけた際に同行させた長男が「読む本が無くなった」というのでハインライン・コーナーで急遽買い与えたもの(写真右)。
 どちらも「タイトなスーツをまとった主人公の若者」「金髪の美少女」「宇宙船」とモチーフは同じなのに、刊行された時代というものを色濃く反映させている表紙だと思うね。どちらもハヤカワ文庫SF版でございます。

【銀河市民】【ロバート・A・ハインライン】【地球人】
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「バットマン~デッドホワイト」 ジョン・シャーリー

2007-12-08 | その他フィクション
 DCコミック最強のキャラクター、バットマンを主人公にした犯罪小説。暗闇の騎士バットマンにふさわしく、本のすべてが真っ黒な装幀に、ページを開いて思わずホッとした。まだ本文は白っぽい。黒をデザイン基調とした本は他にもあるけれど(新刊書棚でも1冊似たのが並んでいたけど)小さな「DeadWhite」の文字以外真っ黒なのはこれだけです☆

 大富豪ブルース・ウェインが正体を隠し、バットマンとしてゴッサムシティの悪党狩りを初めてまだ1年と少し。彼自身も承知していることだけれど、仮面のヒーローによる悪人退治は自警団による単なるリンチと変わりない。バットマン自身、警察に捕まる危険性があるのだ。
 けれども、それをしなければ仕方がないほど、ゴッサムシティは退廃していた。ギャングが横行し、人種差別主義者が武装闘争を始め、警察官は犯罪者と癒着していない者を探す方が困難だった。
 だからバットマンは戦う。しかし彼には犯罪者を逮捕することも殺すこともできないから、ただ戦い続けるしかなかった。夜の闇の中から犯罪者を静かに見つめているのだ。いつでも、いつまでも……。


 考えてみれば、スーパーマンみたいに銃弾を弾いて空を飛ぶわけでもなく、スパイダーマンみたいに蜘蛛の糸でビルの谷間を闊歩するわけでもなく、ただ車を走らせ自分の足で走り、敵を殴り倒して縛り上げる……という地味な話なんだけれどねえ。これぞ、ヒーローの原点って感じですね。

【バットマン】【人種差別主義者】
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