付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「クジラのソラ04」 瀬尾つかさ

2007-12-15 | VRMMO・ゲーム世界
 ワールドグランプリの本戦に臨む日本チーム。けれども、そこには誰も予期しなかった敵が待ちかまえていた。
 宇宙へ行ったチャンピオンは二度と地球へは戻れない。なら、この敵は誰!?
 そして虚空から襲い来る真なる驚異。圧倒的な恐怖を前に、冬湖は第2段階へと覚醒していく……。

「結果オーライなら、何をやっても許されるのよ」
 傲慢で自分勝手で殴ることしか考えない女、ゲームプレイヤー棧敷原雫。

「人が一生で本当に大切にするべき人間は、たった一人で充分だ。それ以上は手に余るよ」
 自分の妹のためだけに地球の存在そのものを掛け金にしてしまった究極のシスコン、アーサー・ヴァレンタイン。

「圧倒的な力でもって一方的に蹂躙するのは、それはゲームとはいわない。ゲームってのは、お互いに勝つ可能性があるから楽しいんだ」
 艦船設計の天才、殴られっぱなしの弱虫小僧、門倉聖一。

 『クジラのソラ』も4巻にて完結。よくぞ、この巻数で収めた!(編集者を誉めるべきなのかしら)
 なんかそのものズバリではないのだけれど、さまざまな過去のSF作品が読んだり見たりしたくなる読後感。たとえば『エンダーのゲーム』であり、『中継ステーション』であり、『ソラリスの陽のもとに』だったり、はたまた『機動武闘伝Gガンダム』とか『スター・ファイター』だったり『トップをねらえ2!』とか。そんなフレーバーをふりかけた上で萌が暴走してるというと語弊があるな……。

 他の人に、どんな話と説明すれば良いかとずうっと考え続けていての結論。「キャラクターが全部、島本和彦のキャラに差し変わったエンダーのゲーム」。 あ、そう思ったら脳内イラストがどんどん置換されていく……。
 つまり敵は圧倒的な超存在であったり、人類より先の段階に覚醒していたりするというのに、主人公の雫はゲームの達人ではあっても天才ではない。天才でも超存在でもない雫が、努力と気合いだけでどうやって対戦者を打ち破っていくのか……という物語。
 字数的にはハヤカワSFの厚めのヤツ2冊分くらいかな。実際、情景とか登場人物の心理描写とかさまざまな超科学の説明で幾らでも膨らむはずなんだけれど、そのあたりはスパッと切って、メインキャラの人間関係に絞って走りきった感じ。だからテンポがいいよね。
 でもって、言葉も良い。
 さっと流し読みしただけで、良いセリフが幾つも出てくる。こういう話は面白い本です。キャラクターが意志を持って生きていて、ストーリーに流されっぱなしで無い証拠です。

【クジラのソラ】【瀬尾つかさ】【コンピュータ・ボーイズ&ガールズ】【ソラリス】【エンダーのゲーム】
コメント
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