それは民間宇宙飛行会社アメリカ・スペース・アドベンチャーズ社(ASA)が主催する、地球を4周するたった6時間のフライトにすぎなかった。宇宙を漂う小さなゴミ、スペースデブリの1つが宇宙船を貫くまでは。
イントレピッド号を貫いたデブリはルート上にいたパイロットを即死させ、メインエンジンは動かなくなり、地上との通信も途絶した。生存者は宇宙飛行の無料招待枠に当選した44歳の製薬会社セールスマン、キップ・ドーソンただ1人だった。
だがASAの所有するもう1機の宇宙船は修理中で動かせず、予算削減が続いて組織の立て直しを求められているNASAには救助用シャトルを打ちあげる余裕はなかった。船内の空気は保っても5日分。宇宙空間に孤立したまま緩慢な死を迎えようとしているキップにできることは、ただ持ち込んだノートパソコンにその心境を、家族へのメッセージを入力することだけだった。
しかしキップは知らなかった。データ送信専用の回線がわずかに生きていて、彼の打ち込むキーの1つ1つを逐次地上に送信していることを……。
世界まるごとピーピングトム。
意識しないまま自分の妄想や赤裸々な回想を全世界に垂れ流し続けるなんて事態は本人にとっては悲劇だけれど、それを読むものにとっては死に直面した人間の生の言葉なだけにインパクトは絶大。そしてアメリカ大統領が、ロシアが、日本が、中国が、世界が彼を救うために動き出すけれど、家庭に問題を抱える、たった1人の中年男性もまた世界を変えていくという物語です。
「それがロシアだろうと、NASAだろうと、ASAのちっぽけな宇宙船だろうと、あるいは、中国であったとしてもかまわない。この件でわれわれの助力を欲する者は、それを全面的に得られる」
北米航空宇宙防衛司令官クリストファー・リズン。
どうにも救出方法が見つからなくて悶絶しているASA、民間企業への対抗心から対応が鈍るNASAに対し、前半は北米航空宇宙防衛司令部だけがやたらにカッコイイですね。わずかな観測データから状況を正確に推測し、見守りつつ、いざというときには切り札を持ち出して障害を排除していく姿に、NORADだけがこんなに立派でいいのか!?と思いました。文句はないけれど。
【軌道離脱】【ジョン・J・ナンス】【航空事故】【デブリ】【ピーピングトム】【DELL】
イントレピッド号を貫いたデブリはルート上にいたパイロットを即死させ、メインエンジンは動かなくなり、地上との通信も途絶した。生存者は宇宙飛行の無料招待枠に当選した44歳の製薬会社セールスマン、キップ・ドーソンただ1人だった。
だがASAの所有するもう1機の宇宙船は修理中で動かせず、予算削減が続いて組織の立て直しを求められているNASAには救助用シャトルを打ちあげる余裕はなかった。船内の空気は保っても5日分。宇宙空間に孤立したまま緩慢な死を迎えようとしているキップにできることは、ただ持ち込んだノートパソコンにその心境を、家族へのメッセージを入力することだけだった。
しかしキップは知らなかった。データ送信専用の回線がわずかに生きていて、彼の打ち込むキーの1つ1つを逐次地上に送信していることを……。
世界まるごとピーピングトム。
意識しないまま自分の妄想や赤裸々な回想を全世界に垂れ流し続けるなんて事態は本人にとっては悲劇だけれど、それを読むものにとっては死に直面した人間の生の言葉なだけにインパクトは絶大。そしてアメリカ大統領が、ロシアが、日本が、中国が、世界が彼を救うために動き出すけれど、家庭に問題を抱える、たった1人の中年男性もまた世界を変えていくという物語です。
「それがロシアだろうと、NASAだろうと、ASAのちっぽけな宇宙船だろうと、あるいは、中国であったとしてもかまわない。この件でわれわれの助力を欲する者は、それを全面的に得られる」
北米航空宇宙防衛司令官クリストファー・リズン。
どうにも救出方法が見つからなくて悶絶しているASA、民間企業への対抗心から対応が鈍るNASAに対し、前半は北米航空宇宙防衛司令部だけがやたらにカッコイイですね。わずかな観測データから状況を正確に推測し、見守りつつ、いざというときには切り札を持ち出して障害を排除していく姿に、NORADだけがこんなに立派でいいのか!?と思いました。文句はないけれど。
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