「鋼の錬金術師 (15)」 荒川弘

「理想とか綺麗事と言うが、それを成しとげた時、それはただの“可能な事”に成り下がる。理想を語れよ、ヒューズ。理想を語れなくなったら人間の進化は止まるぞ」
　ネズミの天辺をめざす焔の錬金術師、ロイ・マスタング少佐の言葉。

【鋼の錬金術師】【荒川弘】【イシュヴァール殲滅戦】

「マリア様がみてる／クリスクロス」 今野緒雪 26

「友達だからね。言いたくないことだって、言わなくちゃならないのよ」
　乃梨子の言葉。

　バレンタインデーでの人間模様あれこれとお宝探し大会で終了時間までに何が起きたかの顛末を語った「クリスクロス」とその準備段階で何を考えて宝を隠していったのかを描いた「地図散歩」の２編収録。

　まずは２連覇おめでとう！の事実上、バレンタインデーの１日の物語。イベントは起きてもストーリーはあまり動かないなあと思いつつ、じわれじわりと動きだし、ついには地崩れのように一気呵成のクライマックスへ！……というと、なんのスペクタクル小説かと思われるかも知れませんが、これまでじわりじわりと張り巡らせていた人と人との関わり、伏線が堰を切ったように動き出すのは壮観。やはりきっかけは「友達」の乃梨子であり、「祐巳の姉」の祥子でした。
　デレデレでちょっぴり妹優位の紅薔薇姉妹、意外にあっさり淡泊な白薔薇姉妹、怒りの黄薔薇姉妹と三者三様だけれど、真美さんとこや蔦子さんところも個性的で愉しいね。
　「お茶！　お茶っすねっ！」と元気の良い乃梨子ちゃんですが、表面的には自分も志摩子とのギャップがありすぎという点をもっと自覚した方が良いです。よくできた３世代だと思いますよ？　似たもの同士で固まってしまった聖と志摩子。聖は自分にない部分を祐巳で埋めたけれど、志摩子は乃梨子で埋めたわけです。

【マリア様がみてる】【クリスクロス】【今野緒雪】【図書室】【チャレンジャー】