付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「突撃!かぶと虫部隊」 キース・ローマー

2009-08-12 | 宇宙・スペースオペラ
「外交官ってものは、少なくとも1回に3ゲーム遊ばなくては、1日を無駄にしたと考えるものだよ」
 地球大使館二等書記官兼領事ジェイム・レティーフの言葉。

 昆虫型生物が進化の頂点に立ったクォッブ星に派遣された二等書記官レティーフ。しかし、彼は地球外交団CDDの支援による文明化がいびつな方向に動いているのではないかとの疑念を抱く。
 車輪で移動するものから回転翼で飛行するものまで、大きさも形も異なる100種類以上の種族が共存していたのに、いつしか特定の種族が支配階級にのし上がろうとしていたのだ。
 レティーフは甲虫を模した着ぐるみを手に入れ、真相解明すべくクォッブの奥深くへと潜り込むのだが……。

 初めてこの本を読んだときはタイトルから、今でいうムシキングみたいな話かと思ったら大間違いでした。未知の世界を右往左往しつつ手八丁口八丁で内政に介入してしまう外交官の冒険談。外交官の仕事ってのは、潜入工作あり野戦の指揮あり恐喝ありと、たいへんなんだなあ……という話。
 シリーズものらしいですが、他に翻訳されたものを知りません。

【突撃!かぶと虫部隊】【キース・ローマー】【植民地支配】【蜂蜜】【害虫駆除雑誌】【プリンセス】
コメント (2)
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「サマーウォーズ」 岩井恭平

2009-08-12 | VRMMO・ゲーム世界
「勝ちそうだから戦うとか、負けそうだから戦わないとかじゃないんだよ。戦うべき時だからこそ戦うんだよ、ウチはな。それも毎回」
 内科医の陣内万作の言葉。負け戦であったかどうかは関係ない。バカな一族はあくまで誇り高い。「家族を守るためなら、いくらでも頑張れる」という人々なのだ。

 平成21年夏。ハッキングAI<ラブマシーン>によって世界10億人が公私を問わず活用している電子ネットワーク上の仮想世界が暴走した。<ラブマシーン>は手をゆるめることなく現実世界のインフラさえも浸食し、世界の破滅まで残すところ2時間と迫っていた。
 だが、色気に迷ってバイトを引き受けただけのはずの平凡な高校生・健二は、それでもなお諦めてはいなかった。まだ<ラブマシーン>に負けてはいない。必要なものは、女神のキスと一杯の紅茶。タイムリミットまで2時間なんて永遠に近い時間が残っているじゃないか。まだやれることはあるはずなのだ。あとは女神のキスだけだ……。

 世界の危機に挑んだ、普通の家族たちの物語。
 細田守監督の映画『サマーウォーズ』を、『ムシウタ』の岩井恭平がノベライズしたものですが、単なるノベライズではありません。映画通りの筋立てではありますが、膨らます箇所は膨らまし、削るところは削り、必要とあればセリフも変えて、きちんとした1編の小説としています(あのエピソードが小説版には無いよね?)。そして、小説として読むと、夏希がどれだけ曾祖母を慕っていてなおかつ追い詰められていたかとか、健二が常に周囲の物事を計算していたり大家族の中の居場所に安らぎを得ているかというあたりまで丹念に書き込まれていますので、映画では唐突に感じられたようなあれやこれやの展開もすとんと納得がいくようになります。

 けれども、これだけ続々と集まってくる大家族は、映画のように顔と声がついてこないと一度に覚えるのは無理です、思わず映画パンフレットの家系図を引きずり出しました。そして、これって平成21年の話なんですね。そりゃあ、そうしないと戦時中のエピソードとかがおかしくなるから……。

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