付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「はいどうぞ!」 中山星香

2009-08-05 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「おたがい作家と編集にだけはなりたくないねーっ」
 エルフィン・マクレイルの感想。今週の『ばくまん』を読んで、なおさらにそう思いました。

 下宿人を募集したマクレイル一家にやってきたのは、直立猫族の作家フリードリッヒ・フォン・エクタクロームだった。
 魔法も使えるし妖精族や魔法使いの知り合いも多いエクタくんのペースに、マクレイル一家もいつしか乗せられて……。

 少女マンガの世界において異世界ファンタジー分野を切り開いた中山星香の初期代表作。少女マンガで先駆者ってことは、日本のマンガで先駆者というのとほぼ同義でないかな? わたしはこの作品でルーン文字を知りました。
 70年代の日本というと「トールキンなにそれ?」という時代なので、ショート・ホームコメディの中にいかにうまく「エルフ」とか「魔法使い」とか「ルーン文字」とかを取り入れられるかが鍵だったわけですが、ナンセンス・ギャグとかメルヘン・コミックで下地はあったので、読者的にはスムーズに受け入れることができました。
 その後も普通の少女マンガを描きつつ、コミックの隙間ページに正統派のファンタジーマンガを描きたい描きたいと書き続け、ファンタジー短編やラブコメ色の強い『花冠の竜の国』を経由して三剣物語『妖精国の騎士』に到達するわけです。
 その作品を追っていくと、本当に描きたい作品を描くために段取り踏んで実績を積み重ねているなあと感動しますが、個人的にはこのあたりの軽いタイプのコメディの方が好きなのです。申し訳ない。(2009.7.16)

 秋田書店の少女マンガ誌は息が長いですよねえ。
 なによりも連載が長い。月刊プリンセスなんて、もう何十年連載が続いてます?という作品がちらほら。なんといっても『王家の紋章』。1976年から連載開始のマンガで、ホント、昔の少女マンガ!という絵柄。現代のお金持ちのお嬢さまがタイムスリップで過去に飛ばされ、そこで出会った若き王と恋に落ちるが、国内の乱れや諸外国の介入もあってたびたび危機に陥るが、現代人の歴史の知恵でそれを乗り切っていく。どうしても乗り切れなさそうなときは、またまた突然のタイムスリップで現代に帰還して……を延々と繰り返すお話。これがいまだに「大人気 巻頭カラー」ですよ(月刊ペースの連載で単行本が52巻突破)。
 で、これに続くのが中山星香の『妖精国の騎士』と青池保子の『エロイカより愛をこめて』。
 中山星香という人は、昔から「指輪物語みたいな大河ファンタジィが描きたい!」と言い続け、ラブコメなどの合間に『はい どうぞ!』(1979)といったスラップスティック・コメディや、『花冠りの竜の国』(1983)みたいにラブストーリーの皮を被ったファンタジー作品を成功させて、本格的なファンタジー作品を描くための布石を打ち、満を持してアーサーとローゼリィの物語、『妖精国の騎士』(1987)をスタート。これが54巻にして2006年に完結!
 今、あちこちの雑誌であたりまえに剣と魔法の物語が描かれているのを見ると昔日の思い。ムアコックなどファンタジーの翻訳は本格的になっていましたけれど、中山星香以前には、コミック方面はな~んにもなかったジャンルですからねえ……(他には和田慎二の『ピグマリオン』(1978)くらいかな)。
 このあたりに来ると、単に作品としての評価とか好き嫌いだけではなく、歴史上の意義まで考慮しないといけない存在です。自分としては、「魔法使い」といえばまず「アーサー・ロビン」なのです。(2007.8.28)

【はいどうぞ!】【中山星香】【ネコノテ】【妖精の路】【リリエンタール】【アーサー・ロビン】
コメント (2)
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「なごやめし」 なごやめし研究会

2009-08-05 | 食・料理
 ハインラインは『月は無慈悲な夜の女王』の中でタンスターフル(「TANSTAAFL」=「There ain't no such thing as a free lunch.」)という言葉を使っているのですが、実際にアメリカには「フリーランチ」というサービスがあったのですね。何か飲み物を1杯頼むと軽食がサービスされるというシステムで……あー、これは名古屋のモーニングサービスと同じですね!
 名古屋を中心とした文化圏では、喫茶店の開店からランチの開始時間までは飲物代だけで軽食がついてくるのが普通なのです。飲み物にトーストなどがついてくるモーニングサービスは他の文化圏でもありますが、名古屋圏の場合はあくまで「原則無料」というのが特色。追加料金を払えばさらに豪華になることもあるし、内容がトーストだけのこともあればゆで卵にミニサラダとおにぎりがついてくるところもあります。
 モーニングサービスに限らず名古屋の飲食物というのは個性的らしく、他所でも独特の食べ物が名物として注目されることはあるのですが、名古屋の場合はいつの間にか「名古屋めし」と何かのブランドのようにひとくくりにされるようになりました。宇都宮が餃子が名物だからといっても、その他ひっくるめて「宇都宮めし」とはいわないものね。
 そんな名古屋めしをひっくるめて紹介したのがこの本で、まずはモーニングサービスを巻頭から紹介し、あんなサービスやこんなサービスとタンスターフルなんて知らないよ! 単なる採算度外視の意地だよ!というところを見せています。その他にも、あんかけスパゲティ、味噌カツ、手羽先、ひつまぶしといった好き嫌いはあっても普通に美味いものから、甘いスパゲティや山盛りのかき氷のようにネタで注文するだけのアイテムまで満遍なく掲載しています。
 まあ、これを読んだからといってわざわざ食べに行くわけでもない地元民ですが、やっぱり「どういう紹介のされ方をしているか」は気になるんです……。

【なごやめし】【なごやめし研究会】【喫茶店文化】【台湾ラーメン】【味噌煮込みうどん】【鉄板スパ】【鬼まんじゅう】【きしめん】【マウンテン】
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