「おたがい作家と編集にだけはなりたくないねーっ」
エルフィン・マクレイルの感想。今週の『ばくまん』を読んで、なおさらにそう思いました。
下宿人を募集したマクレイル一家にやってきたのは、直立猫族の作家フリードリッヒ・フォン・エクタクロームだった。
魔法も使えるし妖精族や魔法使いの知り合いも多いエクタくんのペースに、マクレイル一家もいつしか乗せられて……。
少女マンガの世界において異世界ファンタジー分野を切り開いた中山星香の初期代表作。少女マンガで先駆者ってことは、日本のマンガで先駆者というのとほぼ同義でないかな? わたしはこの作品でルーン文字を知りました。
70年代の日本というと「トールキンなにそれ?」という時代なので、ショート・ホームコメディの中にいかにうまく「エルフ」とか「魔法使い」とか「ルーン文字」とかを取り入れられるかが鍵だったわけですが、ナンセンス・ギャグとかメルヘン・コミックで下地はあったので、読者的にはスムーズに受け入れることができました。
その後も普通の少女マンガを描きつつ、コミックの隙間ページに正統派のファンタジーマンガを描きたい描きたいと書き続け、ファンタジー短編やラブコメ色の強い『花冠の竜の国』を経由して三剣物語『妖精国の騎士』に到達するわけです。
その作品を追っていくと、本当に描きたい作品を描くために段取り踏んで実績を積み重ねているなあと感動しますが、個人的にはこのあたりの軽いタイプのコメディの方が好きなのです。申し訳ない。(2009.7.16)
秋田書店の少女マンガ誌は息が長いですよねえ。
なによりも連載が長い。月刊プリンセスなんて、もう何十年連載が続いてます?という作品がちらほら。なんといっても『王家の紋章』。1976年から連載開始のマンガで、ホント、昔の少女マンガ!という絵柄。現代のお金持ちのお嬢さまがタイムスリップで過去に飛ばされ、そこで出会った若き王と恋に落ちるが、国内の乱れや諸外国の介入もあってたびたび危機に陥るが、現代人の歴史の知恵でそれを乗り切っていく。どうしても乗り切れなさそうなときは、またまた突然のタイムスリップで現代に帰還して……を延々と繰り返すお話。これがいまだに「大人気 巻頭カラー」ですよ(月刊ペースの連載で単行本が52巻突破)。
で、これに続くのが中山星香の『妖精国の騎士』と青池保子の『エロイカより愛をこめて』。
中山星香という人は、昔から「指輪物語みたいな大河ファンタジィが描きたい!」と言い続け、ラブコメなどの合間に『はい どうぞ!』(1979)といったスラップスティック・コメディや、『花冠りの竜の国』(1983)みたいにラブストーリーの皮を被ったファンタジー作品を成功させて、本格的なファンタジー作品を描くための布石を打ち、満を持してアーサーとローゼリィの物語、『妖精国の騎士』(1987)をスタート。これが54巻にして2006年に完結!
今、あちこちの雑誌であたりまえに剣と魔法の物語が描かれているのを見ると昔日の思い。ムアコックなどファンタジーの翻訳は本格的になっていましたけれど、中山星香以前には、コミック方面はな~んにもなかったジャンルですからねえ……(他には和田慎二の『ピグマリオン』(1978)くらいかな)。
このあたりに来ると、単に作品としての評価とか好き嫌いだけではなく、歴史上の意義まで考慮しないといけない存在です。自分としては、「魔法使い」といえばまず「アーサー・ロビン」なのです。(2007.8.28)
【はいどうぞ!】【中山星香】【ネコノテ】【妖精の路】【リリエンタール】【アーサー・ロビン】
エルフィン・マクレイルの感想。今週の『ばくまん』を読んで、なおさらにそう思いました。
下宿人を募集したマクレイル一家にやってきたのは、直立猫族の作家フリードリッヒ・フォン・エクタクロームだった。
魔法も使えるし妖精族や魔法使いの知り合いも多いエクタくんのペースに、マクレイル一家もいつしか乗せられて……。
少女マンガの世界において異世界ファンタジー分野を切り開いた中山星香の初期代表作。少女マンガで先駆者ってことは、日本のマンガで先駆者というのとほぼ同義でないかな? わたしはこの作品でルーン文字を知りました。
70年代の日本というと「トールキンなにそれ?」という時代なので、ショート・ホームコメディの中にいかにうまく「エルフ」とか「魔法使い」とか「ルーン文字」とかを取り入れられるかが鍵だったわけですが、ナンセンス・ギャグとかメルヘン・コミックで下地はあったので、読者的にはスムーズに受け入れることができました。
その後も普通の少女マンガを描きつつ、コミックの隙間ページに正統派のファンタジーマンガを描きたい描きたいと書き続け、ファンタジー短編やラブコメ色の強い『花冠の竜の国』を経由して三剣物語『妖精国の騎士』に到達するわけです。
その作品を追っていくと、本当に描きたい作品を描くために段取り踏んで実績を積み重ねているなあと感動しますが、個人的にはこのあたりの軽いタイプのコメディの方が好きなのです。申し訳ない。(2009.7.16)
秋田書店の少女マンガ誌は息が長いですよねえ。
なによりも連載が長い。月刊プリンセスなんて、もう何十年連載が続いてます?という作品がちらほら。なんといっても『王家の紋章』。1976年から連載開始のマンガで、ホント、昔の少女マンガ!という絵柄。現代のお金持ちのお嬢さまがタイムスリップで過去に飛ばされ、そこで出会った若き王と恋に落ちるが、国内の乱れや諸外国の介入もあってたびたび危機に陥るが、現代人の歴史の知恵でそれを乗り切っていく。どうしても乗り切れなさそうなときは、またまた突然のタイムスリップで現代に帰還して……を延々と繰り返すお話。これがいまだに「大人気 巻頭カラー」ですよ(月刊ペースの連載で単行本が52巻突破)。
で、これに続くのが中山星香の『妖精国の騎士』と青池保子の『エロイカより愛をこめて』。
中山星香という人は、昔から「指輪物語みたいな大河ファンタジィが描きたい!」と言い続け、ラブコメなどの合間に『はい どうぞ!』(1979)といったスラップスティック・コメディや、『花冠りの竜の国』(1983)みたいにラブストーリーの皮を被ったファンタジー作品を成功させて、本格的なファンタジー作品を描くための布石を打ち、満を持してアーサーとローゼリィの物語、『妖精国の騎士』(1987)をスタート。これが54巻にして2006年に完結!
今、あちこちの雑誌であたりまえに剣と魔法の物語が描かれているのを見ると昔日の思い。ムアコックなどファンタジーの翻訳は本格的になっていましたけれど、中山星香以前には、コミック方面はな~んにもなかったジャンルですからねえ……(他には和田慎二の『ピグマリオン』(1978)くらいかな)。
このあたりに来ると、単に作品としての評価とか好き嫌いだけではなく、歴史上の意義まで考慮しないといけない存在です。自分としては、「魔法使い」といえばまず「アーサー・ロビン」なのです。(2007.8.28)
【はいどうぞ!】【中山星香】【ネコノテ】【妖精の路】【リリエンタール】【アーサー・ロビン】