付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ひとめあなたに」 新井素子

2009-08-16 | 破滅SF・侵略・新世界
「なんでも始まったものはおわるのよ。おわらないと次の始まりはこないの」 
 だからひとめあなたに会いに来たという山村圭子。

 1週間後に巨大な隕石が衝突して地球が滅びるという。
 パニックに陥り、すべての社会機能がマヒした街を圭子は歩く。江古田から鎌倉まで、地球が滅びる前に一目あなたに会いたくて……。

 避けられない滅亡に直面させられた平凡な人々の喜怒哀楽に彩られた人間模様を描いた終末小説の代表作で、新井素子が二十歳の時の作品だと思います。いつもと変わらぬ日々を送る人もあればすべてを放り出す人もいるし、精神がねじ曲がってしまう人もいる。そんな人たちの様子をかいま見ながら歩き続ける女子大生の旅のお話です。
 デビュー直後は軽妙な語り口のロマンチックSFと呼ばれる作品をジュニア小説として発表することの多かった新井素子のターニングポイントとなるべき作品なんだけれど、本質的な部分、「空から岩が落ちてきて何もかも押しつぶしてしまえば」という感覚はジュニア小説として書いていたものとぜんぜん変わってないですよね。
 しかし、このシュールな表紙はいかがなものかと思います。買うなら創元SF文庫版か角川文庫版の方が良いですねえ……。

【ひとめあなたに】【新井素子】【双葉ノベルズ】【角川文庫】【創元推理文庫SF】【人肉食】
コメント (3)
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「マリア様がみてる/未来の白地図」 今野緒雪 22

2009-08-16 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「何となくの中には、意外と大切なことが隠れていることがあるものだから」
 藤堂志摩子のつぶやき。

 祐麒が瞳子を連れて帰宅した。
 柏木さんからの電話では、両親と口論して家を飛び出したらしいのだが、祐巳の家族と談笑する瞳子の様子は平静そのものだった。
 そして終業式となり、菜々を誘うという由乃のために、祐巳も瞳子と可南子を山百合会のクリスマス会に招待するのだが……。

 学園祭以来、しっかり空気を読むようになった可南子が頼もしい。もっとも、蔦子さんはさらに頼りになるというか、意識してかしないでか期待された以上の仕事をしてくれるあたりが大人です。柏木さんも大人です。すべてを解った上で見守り続ける大人というスタンスが固まっているのですが、祐巳にとっては最初の出会いの時のギンナン王子のままというのも面白いというか気の毒に。女の子ってそんなものだよね、と元・男の子は思いました。
 まあ、人間関係は思うようにいかないものだけれど、そのあたり彼女たちも納得した上で立ち向かおうとしているようなので、読む方もあせらず追いかけるしかありません。

「なるようにしかならない、ってば。人間関係ってやつは。言い換えれば、なるようになるってことだよ」
 いつも「行け行け、GoGO!」な島津由乃の言葉。
 
【マリア様がみてる】【未来の白地図】【今野緒雪】【家出】【カレーライス】【百面相】【クリスマス会】【ツイスターゲーム】【集合写真】
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「地底世界のターザン」 エドガー・ライス・バロ-ズ

2009-08-16 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 『仮面ライダーディケイド』の24話と25話と『侍戦隊シンケンジャー』の第20幕と第21幕が見事にクロスオーバーしていまして、それぞれの個性を活かしながら同時進行で同じ瞬間に立ち会った2組のヒーローの相剋を描いておりました。
 それぞれの役割や個性が活きていなかったりオリジナルの設定を無視していると「なんでも一緒に出せば良いと思っているだろ!?」と言いたくなりますが、やはり物語の枠を超越したクロスオーバーというのはエンターテイメントの醍醐味です。デルザー軍団に対抗するため世界各地から集結してくる仮面ライダーたちとか、スーパーロボット大戦とか。
 真正面からがっぷり四つに組まなくても、ちらりと匂わすだけでも燃えたり笑えたりします。魔夜峰央の『パタリロ!』と『ラシャーヌ!』の作品を超えたかけ合いとか、和田慎二の『スケバン刑事』と美内すずえの『ガラスの仮面』とか……。

 地底世界ペルシダーの皇帝となった快男児デヴィッド・イネスだったが、『海賊の世界ペルシダー』のエピソードにおいてコルサールの海賊に捕らえられたままであった。この知らせをカリフォルニアの無電技師ジェイスン・グリドリーがたまたま無線装置で受信したことから、地上世界ではただちに皇帝イネス救出部隊が編成されることとなるが、その隊長として招聘されたのはグレイストーク卿、すなわちジャングルの王者ターザンであった!

 さあ、自作品同士のコラボが大好きなバロウズですよ?
 書店では創元版とハヤカワ版が競い合うようにバロウズの作品を平積みしていた時代でした。迷ったあげくペルシダーもターザンも読めるとハヤカワ版『地底世界のターザン』を買っちまいましたが、創元版の『ターザンの世界ペルシダー』でも良かったんだよなあ。あとは柳柊二と武部本一郎のどちらが好きかという踏み絵みたいなもんです。細かな訳の違いまでは店頭の立ち読みでは分かりませんから。
 
 そもそもバローズは『地底世界のターザン』に限らず自作品のクロスオーバーを派手にやってます。月世界シリーズの地球は火星のバルスームとの交流があるし、金星シリーズもバルスーム行きのロケットが金星に不時着したところから始まるし、どうもバローズ作品は基本的にどれもこれも同じ世界の話のようです。

【地底世界のターザン】【エドガー・ライス・バローズ】【柳柊二】【恐竜】【北極】【飛行船】【ゾラムの赤い花】
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