付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「彷徨える艦隊3~巡航戦艦カレイジャス」 ジャック・キャンベル

2009-08-07 | ミリタリーSF・未来戦記
 タイトルからすると、表紙は<カレイジャス>のドゥエロス大佐かな。
 敗走した艦隊を率いて味方宙域への脱出に挑むギアリー大佐の逆境譚の第3弾。今回はやたらに「ご先祖様、お助けください」の声が多すぎますが、まだいいとこ全航程の1/3程度だそうです……。

 「敵の裏をかけ」大佐は勝ち誇ったように笑った。
 負けることのできない戦いに挑み続けるギアリー大佐だが、情報部からの報告でありえない事態が起こり始めたことに気づく……。

 いきなり伝説の英雄に祭り上げられ、失敗することの許されない大佐に向けられる敵意と過剰なまでの支持はますますエスカレートし、既に「艦隊が壊滅するか生還できるか」ではなく「大佐の心が折れるのが早いか艦隊が味方と合流できるのが早いか」という話になっている気がします。

「悪い政治家よりもひどい職業があります。(弁護士と)編集者もです。わたくしも編集者になっていたかもしれません」
 旗艦<ドーントレス>艦長ターニャ・デシャーニの言葉。なんなんだ……。

【彷徨える艦隊3】【巡航戦艦カレイジャス】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【漂流艦隊】【信仰】【ギアリー・コンプレックス】【スパイ】
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「おちゃらか駅前劇場」 阿智太郎

2009-08-07 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 『陰からマモル!』や『住めば都のコスモス荘』の阿智太郎の5作品を収録した初期短編集。ライトノベルはメディアミックスで利益を上げようとしている傾向があるので、シリーズ化していない短編がまとまることは珍しいと思います。そう言う意味で貴重な1冊。
 基本はボーイ・ミーツ・ガールで、それを素っ頓狂な設定とぬるいギャグで包んでいるという感じ。サンタクロースのバイトとか、先祖代々殺し屋の家系とか大泥棒とか。面白かったけれど、この作品はこのジャンルの傑作だとかシリーズ化したらぜひ続きを読みたいと言い切る決め手には欠いている気はします。
 ごろりと転がって、気楽に読む本ですね。

【おちゃらか駅前劇場】【阿智太郎】【ボーイ・ミーツ・ガール】【必殺】【ウルトラマン】【ゴジラ】
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「魔法医師ニコラ」 ガイ・ブースビー

2009-08-07 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 不死の秘密を手に入れようとする怪人ニコラと、彼に雇われたブルース青年が、中国人秘密結社と渡り合いながらチベットの奥地へと旅する物語。菊地秀行の新訳で小学館文庫から出版されたのを買って読んで、前にも読んだ気がすると思ったら、ハードカバーの「地球人ライブラリー」版も実はうちの書架に並んでいて、さらにいうなら小学生の頃にも読んでました……。

 小学館が1971年から76年にかけてワイドカラー版『少年少女世界の名作』というシリーズを全55巻で刊行していたのです。まだたいして景気の良くない頃でしたが、小学生だった私に親がこの全集を買い与えてくれまして、自分はこれと江戸川乱歩の少年探偵シリーズで育ったようなものです。
 今になって思えば、「小学館の暴挙!」「ご乱心!?」というようなシリーズでした。各巻ごとにアメリカ編とかフランス編などと別れており、その中に文学からノンフィクション、昔話までひととおり収録されているという行き届いた構成です。たとえば「フランス編7」なら、ジュール・ベルヌの『十五少年漂流記』、ジュール・ルナールの『にんじん』、アンリ・ファーブルの『科学物語「かみなり」』、『きつね物語』、『モーパッサン短編』、『キュリー夫人』といったように文学、冒険小説から科学読み物、伝記までフォローされています。
 それだけなら普通の「よくできた」文学全集なのですが、その収録範囲がやけに広いのですね。テア・フォン・ハルボウ の『メトロポリス』や海野十三の『海底大陸』のようなSFあり、スーベストル&アランの『怪盗ファントマ』や黒岩涙香の翻案小説『ゆうれい塔』のような怪奇とミステリーあり、高垣眸の時代活劇小説『怪傑黒頭巾』あり、エミリオ・サルガーリの海賊小説『黒い海賊』あり。こんなラインナップを武部本一郎や小松崎茂、柳柊二といったイラストで読んで育つとどうなるかというと、ヘロドトスもディケンズもシャミッソーもクストーもバローズもルー・ウォーレスもコナン・ドイルもトーマもベルヌもデュマも壺井栄もバイコフもルナールもロフティングも川端康成も酒井三郎もモンゴメリもチャペックも夏目漱石もルブランもハガードも海野十三も、みんな互角になってしまうのです。読まずギライにはなりません。ノンフィクションだろうと科学の啓蒙書だろうと「とりあえず読んでみよう」となります。

 ……で、大きく話がそれましたが、ブースビーの『魔法医師ニコラ』も、もともとはそこで読んでいたのですね。それを小学館が完訳で「地球人ライブラリー」の1冊とし、さらには菊地秀行の新訳で小学館文庫から出版し……って、日本ではさほどメジャーでもあるまいに、どれだけ『魔法医師ニコラ』が好きなんだ、小学館!?
 なんというか、普通の基準でいう「良い人」「正義の味方」が出てこないのが特色。秘密結社にしろ博士にしろ、目的のためには騙す・殺すは当たり前なので、一種のピカレスク・ロマンなのかも。

【魔法医師ニコラ】【ガイ・ブースビー】【菊地秀行】【チベット】
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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」 総監督:庵野秀明

2009-08-07 | 巨大ロボット
 大丈夫かなー?と少し怯えつつ夫婦で鑑賞。
 TV版をリアルタイムで見ていたし、あの最終回の顛末でパソコン通信上のBBSがどんな騒ぎになったかも見てきているから、本当に最後の最後まで安心して観ていられないのです。たとえるなら、とても美味しいフランス料理のコースを食べているのだけれど、もしかしたら最後の最後にカップラーメンが出てくるかもしれない、あるいは牛の丸焼きが出てくるかも知れないという疑念がぬぐえないのです。あのゼネプロ版『帰ってきたウルトラマン』みたいに最後の最後にどんなオチが来てもおかしくない。それはそれで美味しいかも知れないけれど、少なくとも自分たちが今まで喜んで食べてきたのはフランス料理なんで、他の料理は今回はちょっと勘弁してくれ……そんな気持ちなんですね。それにそもそも登場人物たちが逆境に追い込まれるばかりの話は勘弁して欲しいというのが正直なところです。

 でも、とりあえず面白かったので良し。
 あいかわらずシンちゃんが命がけでがんばっているのに報われないという話だけれど、今回は「碇くんのために」と頑張ってくれている人がいっぱいいるので救われていますよね。イメージ的には、スーパーロボット大戦の3周目。TV版が1周目、最初の劇場版でクライマックスが変わって2周目。PS版ゲームが『新世紀エヴァンゲリオン2』と銘打っていたし、育成計画もあるし、そう考えると何周目かわからないですけれどね。
 世界がループして同じ時間を繰り返しているのだけれど、今までさんざんバッドエンドばかりだったから「今度はうまくやるよ」「前回よりはマシな結末を向かえよう」という話だと理解した方が、単純なリメイクと考えるよりカヲルくんの言動に納得がいきます。シナリオの流れもだいたい把握しているし、分岐をうまく選択して、隠しキャラを最初から投入して、ユニットも追加して、パイロット交換もして……という感じかな。それでもバッドエンド一歩手前なので次作でうまく立て直して欲しい。
 流れ的にはいよいよ劇場版のストーリーに突入するので、DランクエンドもEランクエンドももういらないから!それだけ願ってます。Sとはいわないから、せめてめざせAランククリア。 ……とか、考えてしまっている時点で既に制作者の罠にはまってますね。

 長男と次男ももう1回観たいと言っているので、来週早々に連れて行ってやる予定。普通に何回も劇場で観たい出来ですわ。

【ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破】【庵野秀明】【摩砂雪】【鶴巻和哉】【ぽかぽか】
コメント (2)
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