
不老不死の超人とか吸血鬼が主人公でもいい加減に辛気くさくなりかねないのに、もともと普通の人間が死んでしまって、それでも成仏できなくて……という話は、最大限ハッピーエンドになったところでメインキャラクターがこの世から完全に消えてしまって終わりになるので、なかなか爽快な結末にはなりません。ラブストーリーでもまず結ばれることがないものね。死者と生者が結ばれて幸せな結婚生活に至るのはザンスくらいかな?
ダンテの『神曲』とかニーブン&パーネルの『インフェルノ』あたりだと、死後の世界からスタートするので、またちょっと違いますよね。
とりあえず気になったときの覚え書きと言うことで、実は登場人物は幽霊でした!というネタバレになるものを避けて、生者と死者の物語を幾つかピックアップしていきます。
『ボーナス・トラック』 越谷オサム
ひき逃げされて幽霊になってしまった大学生と、その幽霊に取り憑かれたハンバーガーショップの社員がひき逃げ犯を追い詰めるバディ小説。犯人を見つけたら成仏できるのか……という話。

川でおぼれ死んだプレイボーイの幽霊に取り憑かれた高校生が、心残りとなった最愛の女性たちとの約束を代理で果たしていく学園ミステリ。
きれいに昇華して大団円。
『七人ミサキも恋をする』 丸山英人
美少女7人の幽霊7人と同居することになった高校生の、ぬくぬくと現状維持のハーレム展開は誰のためにもならないよと警告されつつ、成仏させられるか、取り憑かれて殺されるか……という同居物語。
『霊能者は女子高生!』 メグ・キャボット
引っ越しした先の屋敷に着いている美形の幽霊と喧嘩したり助けられたりしながら怪事件を解決していく、拳で除霊する女子高生スザンナの物語。主人公が頑固者の脳キン娘なので、湿っぽくなる要素は今のところありません。進展もありませんが。

悪いことばかりしていた少女が、死ぬ直前に唯一おこなった善行によって生前の功罪のバランスがとれてしまい、天国にも地獄にも行けなくなって……という、老人と幽霊少女の道中記。無事に天国に行けるまでの試練と、それを妨害しようとする悪魔との戦い。
『これはゾンビですか?』 木村心一
いきなり連続殺人事件に巻き込まれて殺されてしまった少年が、ゾンビとして蘇らされ、さらには魔法少女に任命されてしまうドタバタコメディ。ここまで振り切ってしまえば、主人公の生き死になんか関係ありません。主人公は死んでいますが、それがどうしましたか?という感じ。

目の前で死んでしまった少女を救いたいと願ったばかりに、1つの身体を2人で使うことになり、1日おきに前の日の自分(に取り憑いた少女)が、どんなとんでもないことをしでかしたか後始末に奔走することになる高校生の物語。奇妙な同居ものの変形として面白く読めたけれど、最後の最後で話を終わらない方向へ投げた感じあり。
だいたい幽霊話の結末というのは、
1.成仏する
2.転生する
3.どちらつかずで終わらない
4.実は死んでいなかった(生き霊パターン)
5.新しい肉体に乗り移って実体化する
のパターン。
ファンタジー系の少女マンガだと、幽霊の男性が究極の“憧れの存在”として末永く見守るパターンもありで、これが3のバリエーション。 道原かつみのホラーマンガ『空白の悲鳴』なんかは5のバリエーションで歪んだハッピーエンド。
いろいろあるよね。これがうまくスコーンッとツボにはまると、すごく感動しちゃうけど、外すと一気に冷めちゃうんだよね。