
高校生の頃に学校図書館で読んで、自分でも購入して、本棚の奥に突っ込んであったのだけれど、ふと気になったことがあって引っ張り出してきました。
エスカレーターを使用するとき、止まっている人は片側に並び、急ぐ人は反対側を歩いていく。
事故があって「みんな止まれ」と管理者の責任回避の警告があたりまえとなりましたが、これはそんなに古い習慣ではなかったはず。子安美知子の『ミュンヘンの小学生』か『ミュンヘンの中学生』か『ミュンヘン往き来』か『日本(ヤーパン)の夏』の中で、ミュンヘンで見た(日本では見られない)ドイツ的合理精神の一例として、エスカレーターの使い分けが紹介されていたはず。
『ミュンヘンの中学生』かと思っていたけれど、違っていたので遡ってみたところ。これでもないなあ……。
教育学者である著者は1970年代、家族で西ドイツに留学したが、そこで迷った末に娘をシュタイナー学校に預けることに決めた。
シュタイナー学校は小中高一貫教育の学校であり、オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育思想を実践する学校なのだが……。
神秘思想家とされるシュタイナーは、その教育思想も独特なことから、一般にはバカな子の通う学校と見られることもあったようですが、大学進学に必要なアビトゥーア合格率は悪くはなく、最終的にはむしろ優秀なのだけれど、卒業後も型にはまったビジネスマンや役人などを指向するものはおらず、芸術家指向というか、1人1人がオンリイワンをめざす傾向があるようです。
そんなシュタイナー教育を中心に、当時のドイツ教育事情や生活の様子を描いたノンフィクション。
しかし、両親の仕事の都合とはいえ、世界各地を転校して回る小学生女子って、よく考えたらすごく不憫ですよね。
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