付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「鵺姫真話」 岩本隆雄

2009-03-16 | 時間SF・次元・平行宇宙
「未来のことなんて。もう忘れちゃった」

 地球環境の悪化により生物の滅亡がすぐそこに見えてきている近未来。近未来というよりは「明後日くらい」といった方が良いくらい、すぐそこの時代。環境破壊の元凶たる人類を宇宙に進出させることで地球環境の負担を軽減させようという進化計画がスタートしたが、川崎純はその本格的な始動に沸き返る洋上都市を後にしていた。少女の視力が急激に悪化したことから、宇宙飛行士への道が断たれてしまったのだ。
 夢破れて故郷へ戻った純は、剣道の奉納試合を引き受けることになるのだが、それが外山大という男との出会いだった……。

 『イーシャの舟』で和美に見出されて進化計画に加わり、『星虫』事件でちらりと登場した川崎純の物語。映画化されたら絶対に「時間と空間を超えた愛の奇跡」などと陳腐なキャッチコピーがつきそうだけれど、実際、そういう話には違いないので仕方がありません。
 宇宙開発の拠点となる未来都市から一転して昭和の香り漂う故郷の町、さらには時間を跳躍して戦国時代に放り込まれるという二転三転。読了後、あらためて時間移動の関係を紙に書き出そうとしたらぐちゃぐちゃになってしまいましたが、一度これをやらないと人間関係がすっきりしないですよね。人物関係図=謎解きみたいな話ですから。
 過去へタイムスリップした人間が未来の知識で活躍し、それゆえ畏れられたりあがめ奉られたりするというのも時間SFの定番。さらには「実は誰それの正体は何某であった」と明かされる意外な正体というのは物語の王道のカタルシス。それは水戸黄門でも遠山の金さんみたいに「他人は正体を知らない」というのでもありだし、逆に本人が自分のすごさを認識していなくてというのもあり。そういう展開は『星虫』でもあったけれど、今回はさらにてんこ盛り。
 つまり、純とはエリオット=グローヴナーだったわけですよ。

【鵺姫真話】【岩本隆雄】【タイムトラベル】【進化計画】【洋上都市】【一子相伝】【PS】【メガネっ子】【ボーイ・ミーツ・ガール】
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「女悪魔の任務~魔法の国ザンスXIX」 ピアズ・アンソニイ

2009-03-15 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「恋というやつはいつもうまく成就するわけではないが、友情はちがう」
 女悪魔メトリアの言葉。

 3つの人格が入れ替わり立ち替わりしている女悪魔メトリアが魔法使いハンフリーから与えられた課題は、鳥の王シムルグが開く裁判のための証人やら判事やら検事やら弁護士やら陪審員やらを世界中から呼び集めろというものだった。
 しかし、被告となるロク鳥のロクサーヌはもう何百年と天空の名なき城に籠もって卵を温めている真面目な鳥。それがなぜ裁判の被告になったのだろうか……。

 『魔法の国ザンス』ももう……えっと、このローマ数字は何と読むんだっけ……19か……。19冊目です。長いなー。
 今回は、女悪魔がザンスからマンダニアを飛び回り、あれこれキャラクターを総ざらえしようという巻ですが、もともと全体の半分が英語のダジャレネタでできているような話で、ボキャブラリーは豊富だけれど言い間違いやど忘れの多いキャラクターがメインなので大変なことになっております。
 また、女悪魔が主役なので色っぽいシーンが多い巻でもありますが、大人の秘密ってやつで、まったくきわどくないってあたりもザンスっぽいですね。

【女悪魔の任務】【魔法の国ザンス】【ピアズ・アンソニイ】【裁判】【不妊】【パンティ】【ベッドの上の幸福】
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「三匹のおっさん」 有川浩

2009-03-14 | その他フィクション
 還暦を迎えて暇をもてあました3人のおっさんが始めたのは、地域限定の正義の味方だった!

「ガキが間違うのは当たり前だ、ガキが間違ったら親はガキがションベンちびるほどガッツリ怒って、ああ、こりゃあ悪いことだと教えてやらなきゃ駄目なんだよ」
 立花重雄の言葉。

 須藤真澄のイラストを見た瞬間、「編集さん、グッジョブ!」と親指立てたけれど、あとがきを読んだら「じーばー物だったら須藤さんしかない!」という作者のご指名だったそうで、Good job!と夫婦そろって万歳した次第。
 ゲーセンに再就職した剣道の達人キヨさん、居酒屋を二代目に引き継いだ柔道家のシゲさん、そしていちばん小柄で非力だけれど実はいちばん危険なノリさん。老人というと袋だたきにされること間違いなしの、おっさん3人組が痴漢や強請たかりや詐欺などに立ち向かいます。
 もちろん現実というのは重くて、ただのおっさん3人にはどうにもできないことは多いけれど、やれるだけのことはするさと居酒屋で作戦会議しつつ頑張る3人組に元気をもらえる話です。で、嬉し恥ずかし恋愛話は、彼らの身内である高校生男女が担当することで、世代を超えて楽しめる作品に……。

 でも、やっぱりノリさんまずいよ。
 いくら銃刀法は関係ないって、いつか捕まるよ?

【三匹のおっさん】【有川浩】【須藤真澄】【ボーイ・ミーツ・ガール】
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「夜明けのフロスト」 編:木村仁良

2009-03-13 | ミステリー・推理小説
 クリスマスの季節に発生した事件を題材にしたアンソロジー集。表題作は、もちろん「もう少し身綺麗にしないとホームレスにもみえない」というフロスト警部ものだけれど、実は読むのは初めて。評判の作品でも未読が多いけれど、最近読書量が減ってきているので追いつけません。そういう意味で、こういうアンソロジーはいろいろつまみ食いできるのでありがたいですね。
 短編集の感想は何を書いてもネタバレっぽくなるので困りますが、そういうわけで以下ネタバレっぽい感想あります。

「厚い雲がたれこめている日に太陽を見ようとは思わん。しかし、きらめく日射しがすこしでも目にはいったら、もうじきいつか太陽が照るという希望が芽生える」
 ハリー・S・トルーマンの言葉。

 クリスマスの朝の大騒動の顛末を描いた『夜明けのフロスト』は定評どおりの面白さ。家族のために働いて殺された男の残したプレゼントに泣いた後で、盗品の電子レンジに苦笑い。そうオチをつけますか。
 父親のわからない青年が巻き込まれた悲劇『あの子は誰なの?』は余韻があって良い終わり方。話そのものは救いがないけれど。
 『Dr.カウチ、大統領を救う』はぜんぜんミステリじゃない気もするけれど、面白いからいいや。好々爺のドクターが孫娘に本当か嘘かわからない思い出話を語る一篇。

【ジャーロ傑作短編アンソロジー】【クリスマス】【クリスマスツリー殺人事件】【エドワード・D・ホック】【Dr.カウチ、大統領を救う】【ナンシー・ピカード】【あの子は誰なの?】【ダグ・アリン】【お宝の猿】【レジナルド・ヒル】【わかちあう季節】【マラー&プロンジーニ】【殺しのくちづけ】【ピーター・ラヴゼイ】【夜明けのフロスト】【R・D・ウィングフィールド】
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「珍獣ハンター イモトの動物図鑑」 日本テレビ

2009-03-12 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 世界中に出かけていろんなことをしようというテレビ番組「地球の果てまでイッテQ」から、珍獣ハンター篇をまとめたもの。コモドドラゴンと追いかけっこしたり、ワニと綱引きしたりとなかなか本編を映像で観ると愉しいけれど、動物図鑑の方は今ひとつかなあ。なんとなく怪獣図鑑っぽい解説には笑ったけれど、「地球5周分の旅日記」というには物足りなかったですね。図版としても文章としても。
 まあ。ポイントで買ったからいいや。
 なんというか、テレビの企画本というのは番組の人気があるうちに出版してしまえとばかり勢いで作るのか、いつまでも書架に置いておけるタイプは少ないですね。むしろ放映終了後何年も経ってからじっくり編集されるものに面白いものが多い気がします……というか、最近買ったり読んだりしたものの傾向なんですが。

【珍獣ハンター イモトの動物図鑑】【日本テレビ】【地球5周分の旅日記】
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「マリア様がみてる/いとしき歳月(前編)」 今野緒雪 07

2009-03-11 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 世の中は卒業式も一段落し、公立高校の受験本番で周囲も新聞も慌ただしいこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
 自分の頃を思い起こせば、ただただこれからの新生活への期待と不安に翻弄され、あまり友人たちとの名残を惜しむ余裕もなかった気がしますが、こちらの小説の方も卒業式シーズンに突入したところです。

 黄薔薇さまこと鳥居江利子に援助交際疑惑がわき起こり、生活指導室で前代未聞のクライマックスを迎える「黄薔薇まっしぐら」。その事件を江利子視点で再話した「一寸一服」。そして、卒業生を送るためのイベントに奔走する日々の物語が、薔薇の館での抱腹絶倒のクライマックスに集約する「いと忙し日々」の3本立て。

「本人が思うよりずっと、治癒力ってあるもので、友達ってやつもね、かなり有効な薬なんだって」
 佐藤聖の言葉。

 公式サイトのあおり文句「下級生たちの愛憎のドラマはクライマックスを迎える」に異議を唱えて、どこに「憎」があるか小一時間問い詰めたいところですが、それはさておき3年生の薔薇さまたちにもやっと馴染みができ、キャラクターにも愛着が湧いたところでの退場劇。もったいない気もしますが、少し物足りないくらいがちょうどいいのかもしれません。
 メインとなる登場人物たちもキャラクターが立ち、美術部とか新聞部とか山百合会メンバー以外の一般生徒への言及も増えてきますので、群像劇として追いかけるのも楽しくなってきました。

【マリア様がみてる】【いとしき歳月】【今野緒雪】【お別れ会】【がってん承知の助】【百面相】
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「天ぷらにソースをかけますか? ニッポン食文化の境界線」 野瀬泰申

2009-03-10 | 食・料理
「職場の先輩がキノコ狩りに行って遭難しました。捜索隊を見かけたらしいのですが、いま見つかるとせっかくの舞茸の穴場が知られてしまうと、捜索隊から隠れたそうです……」

 「天ぷらにソースをかけるか否か」とか「おしるこかぜんざいか」とか「なめこの味噌汁を飲むかどうか」など、食に関わるテーマについてインターネットで投票やアンケートで情報を集め分析した結果を集めた1冊。いろいろお国柄とか歴史とか文化とかが地域ごとにくっきり浮かび上がる結果が愉しいね。そして、やはり名古屋圏が東西文化の境界といった感じに。
 いやあ、なんといっても濃い口醤油の関東圏と薄口醤油の関西圏の間に、溜まり醤油と豆味噌の中京圏が鎮座ましましているのですから。
 日本経済新聞のホームページ上のコーナー内容をまとめたものに、実際に東海道を歩いて見聞きした記録もついてますが、以前に同じくコーナーをまとめて出版された『全日本「食の方言」地図』とは追加や手直しがあって大きく変わっているそうです。
 でも、「あんかけスパ」はかたくりでとろみをつけてるわけじゃないと思うよ?

【天ぷらにソースをかけますか?】【ニッポン食文化の境界線】【野瀬泰申】【味仙】【寿がきや】【モーニング】
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「マリア様がみてる/ウァレンティーヌスの贈り物(後編)」 今野緒雪 06

2009-03-09 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「身体に悪い物は溜め込んじゃだめよ。吐き出したら、もう二度と吸わないように向いている方向を変えないとね」
 島津由乃の言葉。

 バレンタイン・イベントの副賞となったデートイベントの顛末を描いた「ファースト デート トライアングル」、バレンタインデーの宝探しイベントの顛末を1人の少女の視点から語った「紅いカード」、そしてイベント当日の様子を今度は紅薔薇さまの視点で描いた「紅薔薇さま、人生最良の日」の3本立て。

 今回は前編で語られた話を、さらに2人別々の角度で語っているところが好き。こういう、あのとき実は・・・・という話は、やっぱ興味深いよね。「米粒食べたい」という意見にも同感。
 この巻あたりから祐巳さんがしっかりしてくるという意味で好きな巻です。やはり登場人物が、人間として好ましいかどうかってのは重要な要因だと思います。最後の喫茶店でのお茶会シーンを読み返していてそう思いました。

【マリア様がみてる】【ウァレンティーヌスの贈り物】 【今野緒雪】【温室】【デート】【トイレ】【桃太郎】
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「星虫年代記1」 岩本隆雄

2009-03-08 | ファーストコンタクト
「ちゃんとした家庭がなかったら、ちゃんとした世界なんかできるはずがないんや」

 世界中に流星雨が降りそそいだ日から世界は一変した。
 人々の額にぴたりと張りついた宝石のようなカケラ、星虫と呼ばれるようになったそれは、人間の知覚能力を飛躍的に上昇させたのである。視力聴力を向上させ、ラジオテレビの電波さえできるようになるそれを当初は宇宙からの恩恵と受け止めていた人々だったが、それが次第に成長して虫の姿を明らかにしていくにしたがい態度を変えていき……。

 新潮文庫のファンタジーノベル・シリーズから刊行されて、やがてソノラマ文庫へと移籍したジュブナイルSFの傑作、『星虫』と『イーシャの舟』が2作品をつなぐ後日談ともいうべき短編『バレンタイン・デイツ』を加えた合本で朝日ノベルズで再登場! ええ、買ってしまいましたよ。5冊目を! だいたい合本ってのは分厚くて読みにくくてキライなんだよ……。
 道原かつみ、山田ミネコ、鈴木雅久、草琢仁といったSF&ファンタジー好きの琴線をくすぐるイラストレイター(マンガ家)に続く5人目は新人えむかみ。構図や色づかいにかなり期待できるけれど、まだまだ……かな。
 このあとには『鵺姫真話』『鵺姫異聞』の合本も予定されているということで……これも買ってしまうだろうな……。いや、なにがなんでも買うから、とにかく新作を読みたい!とそれだけは言わせてもらいます。
 滅びつつある地球と人間と星虫の物語と、天邪鬼に取り憑かれた気の良い男の物語『イーシャの舟』は同じテーマで描いた別の話だと思って読んでいたら、実は同じ世界の物語だったと気がついたのはもう随分と前のこと。さらに『鵺姫真話』『鵺姫異聞』という話がまたジグゾーパズルのようにかみ合って1つの話になるもんだから、こんな書き方していたら量産はできないわなあ……。

 そういえば、「星虫」アニメ化の話はどうなったんだろう?

【星虫年代記】【岩本隆雄】【イーシャの舟】【バレンタイン・デイツ】【地球】【環境問題】【発掘された宇宙船】【ボーイ・ミーツ・ガール】
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「マリア様がみてる/ウァレンティーヌスの贈り物(前編)」 今野緒雪 05

2009-03-07 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「リリアンには素敵な女性がたくさんいるわ。それを一人に絞るなんてできると思う?」
 盗撮ギリギリの行為を繰り返す写真部のエース、武嶋蔦子さんの言葉。この頃は、まだこういうキャラでした。

 2月14日は、お菓子に自分の気持ちを込めて相手に贈る日。しかし、人それぞれに悩みがあって……というバレンタインデーの一幕に、バレンタインデーの特別企画として新聞部が考えついた宝探し大会(薔薇のつぼみとの半日デートの副賞付き)の顛末「びっくりチョコレート」と、黄薔薇ファミリーのバレンタインのケーキを巡る小編「黄薔薇交錯」を収録。

 この巻でまかれた伏線が約30巻後にきちんと回収されたときには小さく拍手しました。うん。言わぬが花という言葉もあるように、わざわざいちいち説明してオチをつけるのも野暮ってもんですが、小粋に抑えるのも大事です。
 さて、この巻はまだ、登場人物たちが互いに試行錯誤しながら立ち位置を決めている感じで、今あらためて読みかえすとなかなか初々しいですね。メインの紅薔薇のつぼみ姉妹が何度も行き違い、崩壊しそうになる寸前ですくい上げるのがいちばんちゃらんぽらんそうに見える白薔薇さまなわけで、こういう関係が読んでいて心地よいと思えるのは少しずつでも彼女たちがより良い方向へ変化していっているのが実感できるから。
 失敗するのは仕方がないけれど、そこから学んで変わっていかないといけません。

【マリア様がみてる】【ウァレンティーヌスの贈り物】 【今野緒雪】【バレンタインデー】【温室】
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「天翔の矢~ヴァルデマールの使者3」 マーセデス・ラッキー

2009-03-06 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 果たすべき義務がある。
 個人的な感情に浸っている余裕はない。すべてが落ちついたら、悲しめばいい。
 今は行動するのみだ。


 タリアは首都ヘイヴンへと帰還し、正式な<女王補佐>となったが、前後して、王女にして<使者>見習いでもあるエルスペスと敵対中の隣国カース国のアンカー王子との間に縁談がわき起こる。
 国内的には時期尚早と収めたものの、相手の真意とアンカー王子の人となりを見極めんものと、タリアはクリスと共に正式な使節として国境を越えるのだが……。

 <女王補佐タリア>を主役としたヴァルデマールの使者篇も3冊で完結。この先が創元版に続くわけですねえ。あれこれと読んでいく内に全貌が判明してくるという展開はこういう大河シリーズの楽しみでもあるけれど、特定の版元だけ追いかけていては見逃す作品が出てくるというのは、なかなかたいへんかも。特に最近は新書サイズを置く本屋が減っているからねえ……。
 実際、このシリーズもたまたま手にとって「どこかで聞いたことのある作者だなあ」と思ったら創元でおなじみのヴァルデマール年代記だったわけで、この3冊いずれも発売されたのを知って買いに行ったことはないもの。けっこう運頼みでそろえたシリーズでした。

【天翔の矢】【ヴァルデマールの使者】【マーセデス・ラッキー】【鳥子】【C.NOVELSファンタジア】
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「マリア様がみてる/ロサ・カニーナ」 今野緒雪 04

2009-03-05 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 薔薇のつぼみで安泰と思われていた次期山百合会(生徒会)の役員選挙に対抗馬が出現して波乱含みの選挙戦が始まる。突如立候補した合唱部の歌姫の真意はどこに?

 生徒会選挙にライバル出現という巻ですが、薔薇の花満開の表紙で成人男性には買いにくい本だよねえ。よく買ったなあ、おれ。まあ、高校時代から柴田昌弘や和田慎二を買ってますから、それに比べれば……。
 それで、生徒会選挙に打って出た蟹名静さまの活躍を描いた「ロサ・カニーナ」と、お正月の初詣とドタバタ合宿の顛末を描いた「長き夜の」の2編収録ですが、生徒会選挙が1月末だから、時系列的には「長き夜の」「ロサ・カニーナ」の順か。

「恐ろしいわよ。人生は。でも、そこが面白い」
 自分がそこにいる。ただそれだけで人生が変わる人もいるだろうと語る蔦子さん。アガサ・クリスティの場合は、だから自殺するということは神に与えられた舞台における自分の役割を放棄することになるのだと神への畏敬を込めて説きますが、蔦子さんのように「面白い」と言い放たれるとこちらにも元気が涌いてきますね。
 同じくポジティブに人生を生きてみることにしたロサ・カニーナ。
 やはり、何度も読み返してしまう本は、元気がもらえる本のようです。

【マリア様がみてる】【ロサ・カニーナ】【今野緒雪】【生徒会選挙】【初詣】【黒薔薇】【大嘘つき】【妹は支え】
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「惑星アイリータ調査隊~恐竜惑星1」 アン・マキャフリー

2009-03-04 | 怪獣小説・怪獣映画
 文庫の帯には「三部作開幕」とあるけれど、2冊目が89年に出たままお蔵入りの恐竜惑星シリーズの1冊目。

 鉱物資源調査のため惑星アイリータに送り込まれた調査船ARCT-10。だが、そこは太古の地球に生息していた恐竜が跋扈する世界であり、予想された鉱物資源はろくに発見できない。母船との連絡も取れなくなり……。

 孤立する調査隊、恐竜の謎、反乱の危機、そしてこの惑星の調査記録はなぜ消えていたのかと、謎と危険が満載なのだけれど、あくまで文明的な調査隊の話なので、そんなに激しい展開だというイメージはないよねえ。ジュラシック・パークみたいな恐竜パニックにはなりませんでした。残念。

【惑星アイリータ調査隊】【恐竜惑星】【アン・マキャフリー】【知的惑星連合】
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「マリア様がみてる/いばらの森」 今野緒雪 03

2009-03-03 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 傷は癒える。
 未来は過去を清算する。


 コスモス文庫の最新刊は2人の少女の禁断の恋を描いた作品で、もしかしたらモデルは白薔薇さまだという噂が学園に蔓延。本人は他人事のような態度だけれど、ここは白黒はっきりさせたいと由乃と祐巳は黄薔薇のつぼみを引っ張り出して真相究明に挑むが……という「いばらの森」と、その白薔薇さまの過去を綴った「白き花びら」の中編2本収録。


 今さらながら、順番にメモしてたりしてというか、詳しい考察はもっと熱心なファンがやっているだろうし上っ面を撫でるだけですが、愉しかった記憶は残しておきたいと思います。そもそも、最近ひたすらこればかり読み直ししていて新刊にほとんど手をつけてないのですね。なんとなく心が疲れているときに読みたいものは、胸躍る冒険の世界でも背筋凍る恐怖話でもないのです。
 さて、今回は白薔薇さまこと佐藤聖さんの過去話の回というより、妹にしたい1年生ナンバー1だった島津由乃さんの内弁慶の化けの皮が完全にはがれ、先手必勝の暴走キャラへの第一歩となった巻。いや、既に前巻でそうだったかもしれないけれど、ほら、前巻はまだ病み上がりだったし……。

【マリア様がみてる】【3】 【いばらの森】【今野緒雪】【百面相】【覆面作家】【タイムマシーン】【クリスマスイブ】【終業式】【黒いリボン】
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「かの悪名高き 十九世紀パリ怪人伝」 鹿島茂

2009-03-02 | 伝記・ノンフィクション
 専業作家を世に送り出し経営危機のオペラ座を救った怪人タコ博士から反骨の新聞人まで、19世紀パリにおいて「黒い獣」(憎まれっ子)と忌み嫌われた、節操のないジャーナリズムの成功者たちの人生を抜き書きした列伝。
 中でも紙幅の半分を費やしているのが、大衆娯楽紙フィガロの創始者であるジャン=イポリット・ド・ヴィルメサン。

「面白ければ、すべてよし」
 フィガロの編集方針。

 職を転々としたあげくパリに出てきたヴィルメサンは、「およそ仕事というものを何ひとつ知らないので、いかなる先入観にも惑わされることがない」と楽天的にかまえ、思いつきからファッション・モード紙を創設。香水メーカー・ゲランを取り込み、でっち上げの広告記事で売上を伸ばしていきます。彼には文才はないけれど、クライアントの要望を的確に反映させる広告マンであり、顧客心理を巧みについた営業マンだったののです。
 そして、彼は自紙の批評欄に論争を巻き起こします。彼は文芸や演劇の批評に手心を加えないばかりでなく、フィガロ紙そのものへの批判すら受け止めました。でも、それは客観性とか公正さにこだわったからではなく、単に「読者がその方が喜ぶから」だったのです。

【十九世紀パリ怪人伝】【鹿島茂】【ヴェロン】【ミヨー】【アヴァス】【フィリポン】【ヴィルメサン】
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