「えっ テレビに出たんですか」
「おー 偶然な」
手品師はもう次の準備をしている。あれをやるのだろう。しかもその気十分だ。
私の目の前に丸められた袋を置いた。冷凍にするための袋だった。手品師が担当君に言う「袋を選んで下さい」 えっ 選ぶことが出来るのか。丸まったままだぞ。
ところが担当君は素直なものだ。丸まった状態の袋を指差したのである。というよりは一番上のものしか指差すしかないのではないか。すかさず「これはあなたが選んだものですね」「よろしいですね」返事がない。担当君は声が出ないのではない。恐らく何がどうなっているかいまだに理解できないでいるのである。手品師はそこに追い討ちをかける。
「これはあなたが選びましたね そうですね」追い詰められた彼は「はい」と言わざるを得ない。
手品師は次に私に声をかけてきた
「何か入れるものはありませんか」
「おー 携帯 本があるぞ」
「あー それはやばいですよ」
「おー 消しゴム キャラメルがあるぞ」
「じゃあ キャラメルにしましょう」