岩を穿つための道具(鉄器等)が発達してくるとそれに伴った技術も発達してくる。しかし、なにか日本的ではないように見えるではないか。
キャラメルを手にして冷凍用の袋のジッパを開けた。さらに口で空気を入れ、袋を膨らませて見せた。半分程入ったかと思ったくらいで私の机を見た。ノートや本を置いているのでそれが邪魔らしくそれを除けろというように目配りしている。私が面倒くさそうにやっていると払い除ける様にして場所を開けてしまったのである。そうしておいて膨らませた袋を机の上に置いて空気の抜けないことを確認させるためにゆっくりと袋を叩いたのである。
「いいですね」なにがいいのかなと思っていると「空気は抜けませんね」と誰にともなく声を掛けているようであった。
そうして袋を左手に持ち替え顔の前に差し出し、右手にキャラメルを摘んでいる。いよいよ始まるな。
「いきますよ」彼はキャラメルを勢い良く袋めがけて投げつけたのである。
お見事。見事にキャラメルは袋の中に収まったのである。
担当君の歓声が上がる「おーすごい」 担当君は不思議がっている。
「おーやったやないか」 ここまで手品を見せたのではあるが「おー すごい」はこれが初めてだ。
私もこの成功には正直ほっと胸を撫で下ろしたい気持ちになってしまった。ところがだ。
「これよりあのペットボトルのほうがうけるのになー」 何を悔やんでいるのは判らぬがそれでも成功である。