今一番リッチな国と言えば、やはり産油国ではないか。これだけ、原油の値段が上がれば、お金の使い道に困るほど富が集中するのは、自明の理。
そして、その殆どがイスラム教国であることを考えれば、イスラム金融の知識がなければ、そのお金の恩恵にあずかることは難しい。宗教と経済が一体の国々である。
ということで、2冊ほど関連本を読んでみた。
わかったのは、イスラム金融の歴史はまだ浅いことと(まだ始まってから30年ぐらいで、本格的な普及をしだしてからは、10年もたっていない)、いろんな工夫をして、イスラム教の教えに反しないように、でも我々が馴染んでいる金融とほぼ同じことができるように、発展が続いていることだ。
イスラム金融は、中東諸国とマレーシアで大きく発展した。これを金融のシルクロードと呼ぶらしい。確かに、シンガポール駐在時代、マレーシアやブルネイが中東金融に相当近いという話は、聞いた。
イスラム金融を論じるには、まずイスラムの根本をなすシャーリアを理解しなければならない。そしてシャーリアは、種々の禁止項目を設けている。
①金銭の使用に対しての利息(リバー)
②豚肉、酒類、武器などの特定禁制品を使用または、取引すること(ハラーム)
③契約中の不確実性(ガラール)
④投機行為(マイシール)
などだ。
それじゃ、金融などできないではないかと思うが、売買の形態をとったり、投信の形態をとったり、リース・レンタルの形態をとったりすることにより、イスラム教に反しない形で、お金の融通をつける手段はある。それが、ムダーラバ、ムシャラカ、ムラーバハ、イジャラなどだが、今は、イスラム債券であるスクークや、イスラム保険であるタカフルなどまでもが流通している。
最終的には、イスラムの基本原則シャーリアに反しないスキームかどうかを、イスラム法学者も含めた第三者チームのチェックを受けた上で、実際の取引をすることが重要になるらしい。そうしないと、実際の紛争になった際、我々の常識から考えると理不尽な理由で、敗訴する可能性が高い。
ところが、近時のイスラム金融の需要の増大に対し、このような判定をできる人材は限られており、なかなかメンバーを集めるのもたいへんなようだ。
宗教上の理由がきっかけではあったが、我々に馴染みのある世界とは全く別の金融市場が創設され、その世界が急拡大を続けているから、無関心を続けるわけにはいかない状況になっているということのようだ。