本書は、珍しく、新聞の広告で見つけ、本屋でゲット。
いろんな本で引用はされているが、きちんと読んだのは初めてだった。
面白いし、当時の状況を考えると、やはりかなり思い切った内容だったように思う。
発禁にはなったが、津田左右吉氏は、その後も研究を続けた。
それは、本書が天皇家を貶めようという意図ではなく、純粋に日本書記を解読していくと、その他の資料と照合することにより、事実はこうだという論理的な展開にのみ基づいて書かれているからであろう。
もちろんその後も様々な発見があり、その論理的な展開をするための材料が変わって来ているので、今は、100%正しいということにはならないが、その論理展開は、ひじょうに真摯だし、真正面から取り組む姿勢はただただ凄い。
本書で面白かったのは、古事記、日本書紀の前に存在したと思われる帝紀、旧辞が、どのように作られ、どのような内容であったのかという観点からの洞察から、古事記、日本書紀を理解しようとしていることと、古事記と日本書紀の関係をいろんな局面で、分析していることだ。
基本的には、古事記の内容の方が信用できる部分が多いと言いつつ、日本書紀独自の部分もあり、親子のような、姉妹のような、縁戚のような、不思議な関係にある。
ただ、その解釈により、少しづつではあるが、真実に近づくことは可能で、とみに近時その研究が進んで来ている。
古代史ファンなら、まず読むべき名著だと思う。
そして、今津田氏がご存命だったらどのような論理展開をされるのか、興味はつきない。