CLASS3103 三十三組

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【読書】日本精神史

2024-12-02 21:05:16 | 読書感想文とか読み物レビウー
日本精神史  著:長谷川宏

とんでもなく難しい本を読んでしまった
上下巻だったのだけども、はたしてちゃんと読み切れたかどうか
思いつつ、とりあえず読んだ証拠を残しておく次第

上巻にて、縄文時代から始まり、奈良、平安、鎌倉くらいまでといったところで
日本人の精神がどう変遷したか、その事象や証拠といえるような美意識、
哲学といったものを挙げて推察していく
土器のありかた、とりわけ、火焔型土器というものが、
一種の芸術作品として登場したことが、その精神性の向上の結果であると
まぁそういう感じの論調で、様々な歴史的なものを紐解いていくというわけで、
この先史といってもいいような時代においても、
そこに日本人というものがあったという考え方はかっこよくて
ステキだと読み進めたのであるが、
ちょうど、今の大河ドラマとリンクする平安時代の精神性において、
枕草子と源氏物語を取り上げたところがまたまた、大変よろしく
この本をこのタイミングで読めたのは僥倖であったと思うばかりであった

古事記や万葉集といったものの成り立ち、
そこに描かれているものが、日本の歴史でもあり、物語でもあり、
ある種のプロパガンダめいたものでもあるわけだが、
それに美意識と知性が強く押し出されていく様が、
精神の向上を示しているとみえて、万葉集における、万の文学、歌が
市井の声でもあり、歴史でもあり、地域性なども考慮されて
広く日本そのものであるというのは納得できるところ、
また、この歌というものについての芸術性の高さが
やがて、貴族の嗜みとして定着し、文学としての表現を一段高くして、
枕草子と源氏物語が現れるというのがとてもよかった

その途中、当然奈良時代のそれこれにおいて、
何よりも仏教の到着が大きな役目をはたしていて、
その教義理解と、そこに関わった僧のすごみというのが
半ば伝説的に記されているのもよいわけだが、
地獄極楽といった思想が根付いて、国家鎮護としての仏教というものが
天平文化をこしらえていく様というのがまたよろしく、
こういったものが、ゆくゆく、仏教美術という世界を作っていくのかと
骨董好きの端っこにいる身分としては感激して読んだのでありました

下巻では、鎌倉時代中期から江戸時代にかけて、
だんだんと広がりをみせていく日本の美術史をおいかけていくように話しが展開
平家物語を端緒に、寂しさを顕すものが日本史において
精神性とリンクした何かとして重宝というか、よく取り上げられるようになり、
これらが、能やわびさびの成立に繋がっていくようでもあり、
その途中、武士の生きざま、性格を定義づけたともいえる御成敗式目などによって
貴族文化の情緒から、武士による質実理知が含まれるようになったというのが
大変興味深いところでありました

話しとしては、絵画や浮世絵浄瑠璃といったものにも広がるのだが
やはり、わびさび茶の湯の話しが、個人的に興味深いところもあって
大変楽しく、利休のみならず、紹鴎と珠光からの成立を見るのも非常によかった
このあたりで、日本人の通底にある歪みやひずみといった
非対称を愛する文化の成熟がみてとれるわけだが、
それが、唐物思想への反目であったのかもしれないというのも
なんとなし腑に落ちるところで楽しかったのである
日本史をなぞるという意味でも
大変有意義な二冊だったわけだけども、
これらが続いている、関連性があると説明されての内容がまたまた面白くて、
日本人という精神性が構築されていく歴史を
文化文物によって解明、推測していくというのが非常に楽しい
とてもよい本であった

はたしてどこまで理解できたかといえば、さっぱりだし
読んだはたから忘れてしまうのだけども、
この年齢までに触れてきた、様々な日本史の物語ともリンクして
なんか、壮大な時代の蠢きを見たような
とても面白い体験となる読書であった
読んだ価値があったと、思うのである


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