以前、書いたブログから抜き出し、掲載します。
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/98ebbc20603d093623644c64acb5b933
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/971da48ecc09ee6fb477d8c30d41a436
首相ふくめ、一部政治家が、日本国憲法をご理解なさっていないことが、とても残念です。そして、恥ずかしいです。
だからこそ、私達、国民こそ、しっかりと、日本国憲法を知って、首相に守らせねばなりません。
なお、ここでは詳細に触れませんが、「九条はマッカーサーの独創によるものかと言えば、必ずしもそうではなく、日本国民の平和への希求を背後に担った幣原首相の平和主義思想が、少なからぬ影響を及ぼしている。」とされています(『憲法学 Ⅰ憲法総論』芦部信喜著 有斐閣 253頁)。(幣原首相に関する他のブログ:http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/d7687e6f43b62b9370cba44a9b11bcd1 )
まず、日本国憲法9条を、憲法学的に解釈します。
****日本国憲法 9条*****
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
*****************
日本国憲法9条の通説的な解釈は、
1条において
「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する戦争の放棄の動機の下に、
「国際紛争を解決する手段として」、すなわち、国家の政策の手段として
1、国権の発動たる戦争
2、武力による威嚇
3、武力の行使
この3つを放棄する。
ここで、侵略戦争は放棄することをまず掲げています。
自衛戦争は、1条では放棄されていません。
2条において
「前項の目的を達成するため」、すなわち、戦争を放棄するに至った動機である 「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する目的のため、
「陸海空軍その他の戦力」の一切の戦力の保持を禁止、交戦権も否認します。
このことより、自衛戦争も行うことは禁止されることになります。
日本国は、平和主義を国の基本理念に掲げ、侵略戦争も自衛戦争も、一切の戦争を放棄しています。
ただし、「自衛権」は独立国家であれば当然有する権利であり、「個別的自衛権」として厳格な自衛権の発動要件のもとに認められています。
「集団的自衛権」は、他国に対する武力攻撃を、自国の実体的権利が侵されなくても、平和と安全に関する一般的利益に基づいて援助するために防衛行動をとる権利であり、日本国憲法の下では認められません。日米安保上条約の定める相互防衛の体制も、日本の個別的自衛権の範囲内のものとされています。
<自衛権を発動するための3要件>
1、防衛行動以外に手段がなく、そのような防衛行動をとることがやむをえないという必要性の要件
2、外国から加えられた侵害が急迫不正であるという違法性の要件
3、自衛権の発動としてとられた措置が加えられた侵害を排除するのに必要な限度のもので、つり合いがとれていなければならないという均衡性の要件
「日本国憲法でも、このような自衛権まで放棄したわけではない。しかし、自衛権が認められているとしても、それにともなう自衛のための防衛力・自衛力の保持が認められるかどうかは、…重大な争いのあるところである。」(『憲法 第5版』岩波書店 芦部信喜 60ページ)
そこで、政府は、自衛権を行使するための実力を保持することは憲法上許されるとしています。
「自衛のための必要最小限度の実力」(=「他国に侵略的な脅威を与えるような攻撃的武器は保持できない」)は、憲法で保持することを禁じられる「戦力」にあたらないと政府は説明をしています。
自衛力・自衛権の限界については、学説上も、裁判所でも争われているところです。
〇自衛力の限界は具体的にはどこにあるか
〇自衛権がどこまで及ぶか
〇自衛隊の海外出動
⇒「自衛隊の海外出動が合憲か否かは、武力行使の有無と深くかかわるが、それは自衛隊の憲法適合性という本質的な問題を措(お)いて論じることはできないであろう。いかに国際貢献という目的であっても、憲法9条の改正なくして、現状のまま自衛隊が部隊として(とくにPKFに)参加する出動を認めることは、法的にはきわめて難しい。」(『憲法 第5版』岩波書店 芦部信喜 65ページ)
戦争を放棄する私たちの国は、自衛権の行使は、厳格な要件のもと許されています。
このことを原点に、国際協調主義のもと、世界への人的、物的な支援等による「人間の安全保障」を積極的に生み出していくことこそが、今の日本には大切であると考えます。
次に、日本国憲法前文です。
日本国憲法は、日本国民を守ろうとする理念が、前文において、伝わってきます。
では、どういう理念であるか、それがどこに入っているかを、日本国憲法前文を全文掲載し、見てみます。()内に赤字で理念を記します。
もちろん、基本原理は、
〇国民主権
〇基本的人権の尊重
〇平和主義
〇国際協調主義
*****日本国憲法 前文******
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢(人権尊重主義)を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意(平和主義)し、ここに主権が国民に存することを宣言(国民主権)し、この憲法を確定する(民定憲法性)。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する(国民主権、代表民主制)。これは人類普遍の原理(憲法改正の限界)であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する(憲法改正の限界)。
日本国民は、恒久の平和を念願(平和主義)し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない(国際協調主義)のであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ(目的達成の誓約)。
********************
以上