「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

日本国憲法9条及び日本国憲法前文の憲法学的な解釈のしかた。平和主義、国際協調主義

2014-06-29 23:00:00 | 戦争と平和

 以前、書いたブログから抜き出し、掲載します。
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/98ebbc20603d093623644c64acb5b933
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/971da48ecc09ee6fb477d8c30d41a436

 首相ふくめ、一部政治家が、日本国憲法をご理解なさっていないことが、とても残念です。そして、恥ずかしいです。
 だからこそ、私達、国民こそ、しっかりと、日本国憲法を知って、首相に守らせねばなりません。

 なお、ここでは詳細に触れませんが、「九条はマッカーサーの独創によるものかと言えば、必ずしもそうではなく、日本国民の平和への希求を背後に担った幣原首相の平和主義思想が、少なからぬ影響を及ぼしている。」とされています(『憲法学 Ⅰ憲法総論』芦部信喜著 有斐閣 253頁)。(幣原首相に関する他のブログ:http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/d7687e6f43b62b9370cba44a9b11bcd1 )

 
 まず、日本国憲法9条を、憲法学的に解釈します。

****日本国憲法 9条*****
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
*****************

 日本国憲法9条の通説的な解釈は、

1条において

 「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する戦争の放棄の動機の下に、

 「国際紛争を解決する手段として」、すなわち、国家の政策の手段として

 1、国権の発動たる戦争

 2、武力による威嚇

 3、武力の行使

 この3つを放棄する。

 ここで、侵略戦争は放棄することをまず掲げています。
 自衛戦争は、1条では放棄されていません。


2条において

 「前項の目的を達成するため」、すなわち、戦争を放棄するに至った動機である 「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する目的のため、

 「陸海空軍その他の戦力」の一切の戦力の保持を禁止、交戦権も否認します。
 このことより、自衛戦争も行うことは禁止されることになります。

 日本国は、平和主義を国の基本理念に掲げ、侵略戦争も自衛戦争も、一切の戦争を放棄しています

 
 ただし、「自衛権」は独立国家であれば当然有する権利であり、「個別的自衛権」として厳格な自衛権の発動要件のもとに認められています
 「集団的自衛権」は、他国に対する武力攻撃を、自国の実体的権利が侵されなくても、平和と安全に関する一般的利益に基づいて援助するために防衛行動をとる権利であり、日本国憲法の下では認められません。日米安保上条約の定める相互防衛の体制も、日本の個別的自衛権の範囲内のものとされています。


 <自衛権を発動するための3要件>

 1、防衛行動以外に手段がなく、そのような防衛行動をとることがやむをえないという必要性の要件

 2、外国から加えられた侵害が急迫不正であるという違法性の要件

 3、自衛権の発動としてとられた措置が加えられた侵害を排除するのに必要な限度のもので、つり合いがとれていなければならないという均衡性の要件


 「日本国憲法でも、このような自衛権まで放棄したわけではない。しかし、自衛権が認められているとしても、それにともなう自衛のための防衛力・自衛力の保持が認められるかどうかは、…重大な争いのあるところである。」(『憲法 第5版』岩波書店 芦部信喜 60ページ)


 そこで、政府は、自衛権を行使するための実力を保持することは憲法上許されるとしています
 「自衛のための必要最小限度の実力」(=「他国に侵略的な脅威を与えるような攻撃的武器は保持できない」)は、憲法で保持することを禁じられる「戦力」にあたらないと政府は説明をしています。

 自衛力・自衛権の限界については、学説上も、裁判所でも争われているところです。
 〇自衛力の限界は具体的にはどこにあるか

 〇自衛権がどこまで及ぶか

 〇自衛隊の海外出動
 ⇒「自衛隊の海外出動が合憲か否かは、武力行使の有無と深くかかわるが、それは自衛隊の憲法適合性という本質的な問題を措(お)いて論じることはできないであろう。いかに国際貢献という目的であっても、憲法9条の改正なくして、現状のまま自衛隊が部隊として(とくにPKFに)参加する出動を認めることは、法的にはきわめて難しい。」(『憲法 第5版』岩波書店 芦部信喜 65ページ)


 戦争を放棄する私たちの国は、自衛権の行使は、厳格な要件のもと許されています。
 このことを原点に、国際協調主義のもと、世界への人的、物的な支援等による「人間の安全保障」を積極的に生み出していくことこそが、今の日本には大切であると考えます。
 


 次に、日本国憲法前文です。


 日本国憲法は、日本国民を守ろうとする理念が、前文において、伝わってきます。

 では、どういう理念であるか、それがどこに入っているかを、日本国憲法前文を全文掲載し、見てみます。()内に赤字で理念を記します。

 もちろん、基本原理は、

 〇国民主権

 〇基本的人権の尊重

 〇平和主義

 〇国際協調主義


*****日本国憲法 前文******

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢人権尊重主義)を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意平和主義)し、ここに主権が国民に存することを宣言国民主権)し、この憲法を確定する民定憲法性)。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する(国民主権、代表民主制)。これは人類普遍の原理憲法改正の限界)であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する憲法改正の限界)。

 日本国民は、恒久の平和を念願平和主義)し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない国際協調主義)のであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ目的達成の誓約)。

********************

以上

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

戦後最大の危機。憲法学の理念さえ知らない首相・政権による、民意を無視した集団的自衛権容認

2014-06-29 12:41:15 | 国政レベルでなすべきこと
 戦後最大の危機だと思います。

 人災であるところの福島第一原発事故が最大の危機といままで思っていましたが、それを上回る危機が、来ました。

 心から残念でなりません。悔しいです。
 今までの、先人の努力はなんだったのでしょうか。


 早々に、真の政権交代をなしとげ、閣議決定(もし本当になされるのであれば)の撤回を目指しましょう。

 

 

***********************************************************
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014062990070852.html

地方190議会批判 集団的自衛権 広がる「反対」「慎重に」

2014年6月29日 07時08分



 安倍政権が目指す集団的自衛権行使容認の閣議決定に対し、地方議会で反対、慎重な対応を求める意見書を可決する動きが急速に広がっている。本紙の調べで、今月だけで少なくとも百二十超の議会に上り、これまでに可決済みは百九十(二十八日時点)となった。自民党会派の賛同も目立つ。閣議決定を急ぐ政府と、それを懸念する地方の溝はさらに広がった。 (関口克己)

 本紙の三月末時点での集計では、同様の意見書は約六十あった。だが、安倍晋三首相が五月十五日、行使容認を検討する意向を記者会見で表明すると、それに抗議する形で議決の動きが勢いを増した。

 都道府県レベルでは長野、岐阜両県議会がいずれも六月に慎重審議を求める意見書を可決。市町村議会では三十二都道府県の百八十八に増えた。最多は長野県で、県議会のほか四十五市町村となった。自民党県連が県内市町村に意見書提出要請をした岐阜県は、九市町村となっている。

 逆に、全国千七百八十八の自治体で政府方針を支持する意見書は一つもない。

 東日本大震災で被災した福島県南相馬市議会は十九日、自民系会派を含め全会一致で容認反対を議決。「震災と原子力災害で助けられた自衛隊員が海外に出て武力を行使することは容認できない」と訴えた。

 二十五日には、自民党の石破茂幹事長のお膝元となる鳥取県境港市議会も、行使容認反対の意見書を可決した。自民党の高村正彦副総裁は二十七日、相次ぐ意見書可決に「地方議会も日本人であれば、慎重に勉強してほしい」と反論したが、与党は協議開始から一カ月余りで結論を出そうとしている。

(東京新聞)


*****************************
http://www.asahi.com/articles/ASG6W5JDRG6WUTFK008.html

下村文科相「9条は無責任」 著書で批判、胃切除も告白

2014年6月27日18時00分


 下村博文・文部科学相が今月、著書を出版した。胃がんの宣告を受けていたことを初めて明らかにする一方、安倍晋三首相に近い保守派として、現憲法のあり方を厳しく批判している。

 著書「9歳で突然父を亡くし 新聞配達少年から文科大臣に」(海竜社)によると、第1次安倍政権で官房副長官を務めていた2007年に胃がんを宣告されたが、首相や秘書にも知らせないまま、胃の切除手術を受けた。また、第2次安倍政権で初入閣した際、当初安倍晋三首相から環境相を打診されたが断り続け、首相の4度目の提示で念願だった文科相ポストを勝ち取ったとも明かした。

 憲法については、特にその成立過程を「日本国の主権がなかった時代に無理やり押しつけられた」と断じ、9条2項を「極めて無責任で非現実的な条文」と批判している。


******毎日新聞*******
http://mainichi.jp/opinion/news/20140628k0000m070118000c.html

社説:閣議決定案 9条改憲にほかならぬ

毎日新聞 2014年06月28日 02時31分


 政府は与党協議で、集団的自衛権の行使容認を含む閣議決定の最終案を示した。公明党は受け入れる方向で、与党の正式合意を経て、7月1日に閣議決定される見通しだ。

 政府は憲法解釈変更について「解釈の再整理、一部変更」としている。だが内容は、解釈を抜本的に変更することによって憲法9条を改正するに等しい。政府に許される解釈の範囲を逸脱した解釈改憲だ。

 閣議決定案は、「我が国と密接な関係にある他国」への武力攻撃が発生し、国民の権利が根底から覆される「明白な危険」がある場合に、集団的自衛権の行使を認めている。

 他に適当な手段がないことや、必要最小限度の実力行使にとどまることと合わせて、新たに定めた「自衛の措置としての武力行使の3要件」が閣議決定案の中核だ。

 「密接な関係」や「明白な危険」という基準はあいまいだ。時の政権の判断次第で拡大解釈され、歯止めがきかなくなる恐れがある。

 政府が閣議決定について国会などで説明するため作成した想定問答集は、そうした懸念を裏付ける。

 例えば、どういう場合に集団的自衛権を行使できるのかについて、想定問答は、時の内閣が新3要件に該当するか否かなどを客観的、合理的、総合的に判断するとしている。

 与党協議で議論された機雷掃海などの8事例は、新3要件を満たせば集団的自衛権を行使できるとしている。国連の集団安全保障で武力行使を認めるか否かも、新3要件を満たせば許容されるとしている。

 いずれも協議では、公明党が反対し、答えが出なかった問題だ。結論ありきだったと言わざるを得ない。

 また閣議決定案は、集団的自衛権の行使容認について、国際法上の根拠と憲法解釈を区別している。国際法上は集団的自衛権でも、憲法解釈上は個別・集団を明確にせず「自衛の措置」とした。公明党への配慮だが、極めてわかりにくい。

 憲法解釈変更の根拠は、1972年の政府見解だ。見解の一部をつまみ食いして、集団的自衛権の行使についての結論だけを「許されない」から「許される」に逆転させた。政府の想定問答は「見解の基本的論理の枠内で導いた論理的帰結。解釈改憲ではない」としている。

 強引な理屈でも、いったん閣議決定してしまえば、あとはあいまいな基準のもと時の政権の判断次第で何でもできる。政府のそんな狙いが透けて見えるようだ。憲法と国民をあまりに軽んじている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする