【Ⅰ】婚姻予約(婚約)と内縁の相違
内縁と婚約は、両者、正式の婚姻ではない点で、共通します。
夫婦関係の実体があったかどうかで、両者は区別され、その違いは、破棄・解消に大きく表れます。
婚約の破棄・解消では、損害賠償請求のみです。
内縁の破棄・解消では、損害賠償請求に加え、財産分与を請求できます。
【Ⅱ】正式の婚姻と内縁の相違について、とくに財産関係において
正式の婚姻と内縁の相違として、破たんすると、正式の婚姻でも、内縁でも財産分与請求権が生じます。
一方、配偶者の死亡による解消においては、正式の婚姻では相続権がありますが、内縁では、原則、相続権が生じません。
例外として、借地借家法36条で、相続人がいない場合に、内縁の配偶者に、相続を認める特殊な場合があります。
*****借地借家法******
第三十六条 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
内縁の相続権がないことを判示した、有名判例(最高裁平成12年3月10日
主 文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理 由
抗告代理人城後慎也の抗告理由について
【要旨】内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫
婦の離婚に伴う財産分与に関する民法七六八条の規定を類推適用することはできな
いと解するのが相当である。民法は、法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係
の清算及び婚姻解消後の扶養については、離婚による解消と当事者の一方の死亡に
よる解消とを区別し、前者の場合には財産分与の方法を用意し、後者の場合には相
続により財産を承継させることでこれを処理するものとしている。このことにかん
がみると、内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規
定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を
承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財
産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に
異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。また、死亡した内縁
配偶者の扶養義務が遺産の負担となってその相続人に承継されると解する余地もな
い。したがって、生存内縁配偶者が死亡内縁配偶者の相続人に対して清算的要素及
び扶養的要素を含む財産分与請求権を有するものと解することはできないといわざ
るを得ない。
以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原決定に所論の
違法はなく、論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋
一友 裁判官 大出峻郎)
主 文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理 由
抗告代理人城後慎也の抗告理由について
【要旨】内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫
婦の離婚に伴う財産分与に関する民法七六八条の規定を類推適用することはできな
いと解するのが相当である。民法は、法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係
の清算及び婚姻解消後の扶養については、離婚による解消と当事者の一方の死亡に
よる解消とを区別し、前者の場合には財産分与の方法を用意し、後者の場合には相
続により財産を承継させることでこれを処理するものとしている。このことにかん
がみると、内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規
定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を
承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財
産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に
異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。また、死亡した内縁
配偶者の扶養義務が遺産の負担となってその相続人に承継されると解する余地もな
い。したがって、生存内縁配偶者が死亡内縁配偶者の相続人に対して清算的要素及
び扶養的要素を含む財産分与請求権を有するものと解することはできないといわざ
るを得ない。
以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原決定に所論の
違法はなく、論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋
一友 裁判官 大出峻郎)