民進党への各紙の期待を見てみます。
本日、朝刊社説より。
それぞれのポイントをひとことでいうと。
朝日新聞⇒教育、雇用、男女の三つの格差是正や立憲主義の堅持を打ち出すという方向は妥当である。
毎日新聞⇒自民党に対抗するためには、女性や若者らの共感を得られるかが鍵を握っている。
東京新聞⇒問題点の指摘や批判にとどまらず、どう転換するかの具体策の提示にも力を注いでほしい
日経新聞⇒政策決定過程を日本の政治に根付かせたい。
読売新聞⇒民進党が、政権を担える党として現実的で説得力ある政策を打ち出せるかどうかだ。
産経新聞⇒(本日の社説では、扱わず)
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朝日新聞
民進党発足 1強と対峙するには
2016年3月28日(月)付
新たな旗のもとに集った議員の熱気と、国民の冷めた空気。まずは、この差を埋める努力から始めるしかない。
民主党と維新の党などの議員が合流し、新しい民進党としてきのう党大会を開いた。
待機児童問題で安倍政権を追及する若手の山尾志桜里氏を政調会長に起用したが、岡田代表らほとんどの役員が民主党からの横滑り。党名以外にどこが変わったのかとの批判もある。
冷ややかな視線を浴びるのも無理はない。
自民党の長期政権に代わる新たな政治への期待を背負って09年に発足した民主党政権は、国民の思いを裏切り続けた。
実現できないマニフェスト、空回りした政治主導、そして消費増税をめぐる党の分裂。その時に出ていった議員の一部とよりを戻しただけだ、との印象はぬぐいようがない。
政権を失った民主党が立ちすくむうちに、安倍政権は、民主党の野田内閣による12年の衆院解散から3度続けて国政選挙に勝ち、「1強」の政治体制を築いてきた。
安倍首相は「民主党政権時代より、企業倒産件数は約3割減った」などと、政権交代で経済は上向いたと強調する。半面、格差の拡大や待機児童問題などへの国民の不満は根強い。
首相はまた、集団的自衛権の行使容認や安全保障法制に見られるように、憲法の枠組みを越えかねない危うい道を進む。その先に見すえるのは「変えること」を目的とした憲法改正だ。
安倍氏の政権運営に危うさは感じるが、ほかに選択肢が見あたらない――。こんなもどかしさを抱く有権者は多い。安倍政権のもとでの13年参院選と14年衆院選がいずれも52%台の低投票率だったことは、そのひとつの証左だろう。
岡田代表は党大会で、民主党政権時代に期待に応えられなかったことを「深く反省する」と語った。そのうえに、新たな一歩を踏み出すべきときだ。
衆参で156人の野党第1党となる民進党が、1強に対峙(たいじ)しうる存在になれるかどうか。それが、政治に緊張感を取り戻せるかどうかのカギを握る。
民進党は「自由、共生、未来への責任」を結党の理念とし、教育、雇用、男女の三つの格差是正や立憲主義の堅持を打ち出すという。方向は妥当である。
国民一人ひとりの思いをすくいあげ、具体的で説得力ある政策として政権にぶつけ続ける。
政党にしかできないこの地道な作業を通じてしか、信頼を取り戻すことはできない。
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毎日新聞
民進党発足 女性と若者引きつけよ
毎日新聞2016年3月28日 東京朝刊
民進党が発足した。民主党と維新の党などが合流し、衆参両院で150人を超す議員が参加した。
政治が緊張感を保つためには、政権の受け皿となる野党の存在が欠かせない。自民党の1強状態が強まる中、野党第1党として責任は重い。
小選挙区制度下で自民党に対抗する2大政党を目指す試みは新進党、民主党に続きこれで3度目だ。民主党が20年続いた党名の消滅を受け入れたことも、もう後がない危機感の表れだろう。
結党大会で岡田克也代表は「政権交代可能な政治を実現するためのラストチャンスだ」と強調した。
第2次安倍内閣の発足以来、野党は存在感を十分発揮できずにいる。国政選挙で低投票率下の与党圧勝が続いた背景には、政権批判票の行き場がない状況がある。
だが、民主、維新両党の単なる生き残り策の域を出ないような合流では、新党の前途は厳しい。
執行部は岡田代表、枝野幸男幹事長という民主党の体制を引き継ぎ、合流した維新の党の松野頼久前代表らも民主党出身だ。各種世論調査で新党への期待感が低いのも「民主党の衣替えに過ぎないのではないか」とみられがちなためだろう。
穏健な保守・中道勢力も含めた幅広い支持を得る勢力に再生するためには、民主党の失敗で得られた教訓を十分学ぶ必要がある。
とりわけ集団的自衛権行使への具体的対応など、安全保障に関する基本政策の集約を怠ってはならない。歳出を伴う格差是正策も、財源の裏付けが欠かせない。党綱領は立憲主義の尊重とともに「未来志向の憲法を構想する」と記した。具体像をより踏み込んで語るべきだ。
自民党に対抗するためには、女性や若者らの共感を得られるかが鍵を握っている。
毎日新聞の世論調査で安倍内閣の支持率は女性が男性をほぼ一貫して下回る。タカ派的な政権運営の影響だろう。一方で、かつての民主党も女性の支持を広げられなかった。山尾志桜里(しおり)衆院議員(41)の政調会長への抜てきを女性を重視した政策の実現につなげるべきだ。国政、地方選挙で女性公認候補の割合を義務づけるくらいの決意を示してほしい。
「18歳選挙権」は実現したが、若い世代の選挙離れは深刻だ。人口減少と超高齢化が進む中、20代の若者から支持を得られるような組織運営や政策の構築が求められよう。
参院選は民進党にとって、2大政党の足がかりを得られるかが早くも試される場となる。取りざたされる衆参同日選について岡田氏は「受けて立つ」と語った。野党第1党に値する公約を早急に示すべきだ。
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東京新聞
「民進党」結党 具体策掲げ政権に迫れ
2016年3月28日
民主党と維新の党が合流して「民進党」が船出した。総裁として自民党を率いる安倍晋三首相が一強支配を強める中、政権を託し得る政党として、再び民意の受け皿となれるのか。正念場である。
夏の参院選や、同日選の可能性も指摘される衆院選を控え、急造の感は否めないが、それだけ政治状況は逼迫(ひっぱく)しているのだろう。衆参合わせて百五十人を超える規模での始動だ。「安倍一強」を許してきた野党が、多弱からの脱却を目指して結集することを、まずは歓迎したい。
新代表に民主党の岡田克也代表、代表代行に同党の長妻昭、蓮舫両代表代行がそのまま就き、新たに江田憲司維新の党前代表も代表代行に就任した。
合流時の勢力からいっても、民主党による事実上の吸収合併であり、民主党色が色濃く残る。選挙に向けて政党名を変えただけだと有権者に否定的に受け止められれば、幅広い支持は得られまい。
まずは、あるべき社会の姿や、政治・経済、外交・安全保障の在り方などを明確に掲げ、それを政策として具体化し、どうやって実現するかの道筋をも、説得力ある形で国民に示してほしい。
政権交代を果たした民主党の二〇〇九年衆院選マニフェスト(政権公約)は、目指す方向性はおおむね評価できたが、実行力に乏しく、政権担当能力を疑われて有権者の信頼を失った。その反省を踏まえなければ、政党として生まれ変わったとは言えまい。
党人事で唯一注目すべきは、政調会長への山尾志桜里衆院議員の起用である。待機児童問題などをめぐり、首相らを厳しく追及した姿勢が評価されたのだろう。当選二回の若手議員起用で、党イメージ刷新の狙いもあるに違いない。
政策づくりは党内の意見集約はもちろん、党外との折衝など調整力が問われる仕事だ。特に、原発や安全保障をめぐり、党内には多様な意見が存在する。重要政策に曖昧さを残すようでは、政権交代可能な勢力と呼ぶには程遠い。
安保や経済など安倍政権には転換を要する政策が多々あるが、問題点の指摘や批判にとどまらず、どう転換するかの具体策の提示にも力を注いでほしい。
岡田代表は「政権交代可能な政治を実現するラストチャンス」と強調した。民進党が民意の受け皿とならなければ、安倍政権によって蝕(むしば)まれた立憲主義や民主主義を立て直す機会をも逸する。覚悟を持って政権と対峙(たいじ)すべきである。
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日経新聞
政策の競い合いで政治の活性化を
2016/3/28付
野党の民主党と維新の党がひとつになり、民進党を旗揚げした。自民党に対抗する勢力づくりとしては1994年の新進党、98年の民主党があるが、いずれも残念な結果に終わった。民進党は三度目の正直になれるかどうか。過去の失敗を糧にして、日本の政治の活性化に貢献してほしい。
戦後政治はその大半の時期を自民党が政権を担ってきた。高度経済成長などの成果は高く評価されるべきだが、長期政権がもたらす弊害も少なくなかった。競争なきところによどみが生じるのは経済も政治も同じである。
いまの安倍政権ができて3年3カ月たった。自民党の若手議員の放言からもうかがえるように、ゆるみは否定できない。「自民1強」に慢心し、好き勝手に振る舞っても政権を失うことはないとたかをくくっているのだろう。
94年にできた政治改革法の基本精神は、政権交代可能な二大政党制をつくり、政治に緊張感をもたらすことだ。選挙ごとに政権交代しなくても、それがいつでも起こり得る状況があれば与党もうかうかしていられなくなる。
大事なのは政策の競い合いだ。与野党の批判合戦は有権者の不満のガス抜きになるかもしれないが、結果として政治を停滞させる。
与野党がきちんと政策メニューを示し、有権者が見比べて是非を判断する。野党がよい政策を打ち出したときは与党も耳を傾ける。こうした政策決定過程を日本の政治に根付かせたい。
民進党の代表に就いた岡田克也氏は党の針路について「再分配を重視した経済成長を目指す」と語った。自民党を新自由主義と位置付け、対峙する狙いのようだが、具体像はまだ不明確なところがある。早急な肉付けが必要だ。
民主党政権は内紛続きで自滅した。岡田氏は「再びばらばらになることはない」と強調したが、維新からの参加者の半分近くはかつての離党組である。選挙互助会との批判を跳ね返す結束力を示せるかも課題である。
民進党への世論の関心は高くない。日本経済新聞とテレビ東京の最新世論調査で「期待する」は26%にとどまり、「期待しない」の66%を大きく下回った。
前途は多難だが、期待値が低いので「意外な成果」を生み出しやすいともいえる。すぐに政権交代をうかがう地力はあるまい。まずは地道な基盤づくりである。
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読売新聞
民進党結党大会 国民の不信感を払拭できるか
2016年03月28日 03時02分
民主党に対する国民の根強い不信感を払拭する契機にできるのか。
民主、維新の両党が合流した「民進党」の結党大会が開かれた。岡田代表は挨拶で、「日本に政権交代可能な政治を実現するためのラストチャンスという認識を共有しよう」と強調した。
改革結集の会だった4人が参加し、衆院議員は96人となった。参院では、無所属の1人が加わった民進党の60人と、維新からの5人が統一会派を近く結成する。
新しい党名は、「国民と共に進む」との意味を込めたという。
民主党が推した「立憲民主党」は世論調査で、維新が提案した「民進党」を下回った。結果的に、政権時代の負のイメージを引きずる「民主党」の名を捨て去ることができたとも言える。
党役員人事で、待機児童問題を巡って注目された若手の山尾志桜里衆院議員を政調会長に抜擢ばってきしたのは清新さを求めたのだろう。
肝心なのは、民進党が政権を担える党として現実的で説得力ある政策を打ち出せるかどうかだ。
連合の神津里季生会長は結党大会で、民進党の政策について「目先の人気取りで、魂まで失ってはならない」と指摘した。
その意味で、結党大会で決まった新綱領の内容は物足りない。
憲法改正については「未来志向の憲法を国民とともに構想する」との曖昧な文言にとどまった。維新は改正に前向きだが、民主党に慎重論が強かったためだ。
安全保障政策では、「専守防衛を前提に現実主義を貫く」と訴え、「日米同盟の深化」も掲げた。
しかし、民主、維新両党は、米国が高く評価する安保関連法について、廃止法案を共産党などと共同で国会に提出した。こうした言行不一致で、同盟をどう深化させるつもりなのだろうか。
原発政策は、「原発に頼らない社会」を目指すとした。当初案は「2030年代稼働ゼロ」だったが、電力系労組などの反対で、より現実的な表現に落ち着いた。
夏の参院選に向けて、共産党などとの選挙協力も課題となる。
共産党が1人区で独自候補を取り下げることで、野党候補の一本化は徐々に進んでいる。衆院選での協力も検討するという。
だが、そもそも共産党との間では、憲法や日米安保など政策面の隔たりが大きい。民進党内の保守系議員などには、「共産党にすり寄りすぎだ」との反発も高まっている。今のままでは、「野合批判」が一層強まろう。
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産経新聞
2016/03/28の社説には、取扱いなし。
本日、朝刊社説より。
それぞれのポイントをひとことでいうと。
朝日新聞⇒教育、雇用、男女の三つの格差是正や立憲主義の堅持を打ち出すという方向は妥当である。
毎日新聞⇒自民党に対抗するためには、女性や若者らの共感を得られるかが鍵を握っている。
東京新聞⇒問題点の指摘や批判にとどまらず、どう転換するかの具体策の提示にも力を注いでほしい
日経新聞⇒政策決定過程を日本の政治に根付かせたい。
読売新聞⇒民進党が、政権を担える党として現実的で説得力ある政策を打ち出せるかどうかだ。
産経新聞⇒(本日の社説では、扱わず)
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朝日新聞
民進党発足 1強と対峙するには
2016年3月28日(月)付
新たな旗のもとに集った議員の熱気と、国民の冷めた空気。まずは、この差を埋める努力から始めるしかない。
民主党と維新の党などの議員が合流し、新しい民進党としてきのう党大会を開いた。
待機児童問題で安倍政権を追及する若手の山尾志桜里氏を政調会長に起用したが、岡田代表らほとんどの役員が民主党からの横滑り。党名以外にどこが変わったのかとの批判もある。
冷ややかな視線を浴びるのも無理はない。
自民党の長期政権に代わる新たな政治への期待を背負って09年に発足した民主党政権は、国民の思いを裏切り続けた。
実現できないマニフェスト、空回りした政治主導、そして消費増税をめぐる党の分裂。その時に出ていった議員の一部とよりを戻しただけだ、との印象はぬぐいようがない。
政権を失った民主党が立ちすくむうちに、安倍政権は、民主党の野田内閣による12年の衆院解散から3度続けて国政選挙に勝ち、「1強」の政治体制を築いてきた。
安倍首相は「民主党政権時代より、企業倒産件数は約3割減った」などと、政権交代で経済は上向いたと強調する。半面、格差の拡大や待機児童問題などへの国民の不満は根強い。
首相はまた、集団的自衛権の行使容認や安全保障法制に見られるように、憲法の枠組みを越えかねない危うい道を進む。その先に見すえるのは「変えること」を目的とした憲法改正だ。
安倍氏の政権運営に危うさは感じるが、ほかに選択肢が見あたらない――。こんなもどかしさを抱く有権者は多い。安倍政権のもとでの13年参院選と14年衆院選がいずれも52%台の低投票率だったことは、そのひとつの証左だろう。
岡田代表は党大会で、民主党政権時代に期待に応えられなかったことを「深く反省する」と語った。そのうえに、新たな一歩を踏み出すべきときだ。
衆参で156人の野党第1党となる民進党が、1強に対峙(たいじ)しうる存在になれるかどうか。それが、政治に緊張感を取り戻せるかどうかのカギを握る。
民進党は「自由、共生、未来への責任」を結党の理念とし、教育、雇用、男女の三つの格差是正や立憲主義の堅持を打ち出すという。方向は妥当である。
国民一人ひとりの思いをすくいあげ、具体的で説得力ある政策として政権にぶつけ続ける。
政党にしかできないこの地道な作業を通じてしか、信頼を取り戻すことはできない。
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毎日新聞
民進党発足 女性と若者引きつけよ
毎日新聞2016年3月28日 東京朝刊
民進党が発足した。民主党と維新の党などが合流し、衆参両院で150人を超す議員が参加した。
政治が緊張感を保つためには、政権の受け皿となる野党の存在が欠かせない。自民党の1強状態が強まる中、野党第1党として責任は重い。
小選挙区制度下で自民党に対抗する2大政党を目指す試みは新進党、民主党に続きこれで3度目だ。民主党が20年続いた党名の消滅を受け入れたことも、もう後がない危機感の表れだろう。
結党大会で岡田克也代表は「政権交代可能な政治を実現するためのラストチャンスだ」と強調した。
第2次安倍内閣の発足以来、野党は存在感を十分発揮できずにいる。国政選挙で低投票率下の与党圧勝が続いた背景には、政権批判票の行き場がない状況がある。
だが、民主、維新両党の単なる生き残り策の域を出ないような合流では、新党の前途は厳しい。
執行部は岡田代表、枝野幸男幹事長という民主党の体制を引き継ぎ、合流した維新の党の松野頼久前代表らも民主党出身だ。各種世論調査で新党への期待感が低いのも「民主党の衣替えに過ぎないのではないか」とみられがちなためだろう。
穏健な保守・中道勢力も含めた幅広い支持を得る勢力に再生するためには、民主党の失敗で得られた教訓を十分学ぶ必要がある。
とりわけ集団的自衛権行使への具体的対応など、安全保障に関する基本政策の集約を怠ってはならない。歳出を伴う格差是正策も、財源の裏付けが欠かせない。党綱領は立憲主義の尊重とともに「未来志向の憲法を構想する」と記した。具体像をより踏み込んで語るべきだ。
自民党に対抗するためには、女性や若者らの共感を得られるかが鍵を握っている。
毎日新聞の世論調査で安倍内閣の支持率は女性が男性をほぼ一貫して下回る。タカ派的な政権運営の影響だろう。一方で、かつての民主党も女性の支持を広げられなかった。山尾志桜里(しおり)衆院議員(41)の政調会長への抜てきを女性を重視した政策の実現につなげるべきだ。国政、地方選挙で女性公認候補の割合を義務づけるくらいの決意を示してほしい。
「18歳選挙権」は実現したが、若い世代の選挙離れは深刻だ。人口減少と超高齢化が進む中、20代の若者から支持を得られるような組織運営や政策の構築が求められよう。
参院選は民進党にとって、2大政党の足がかりを得られるかが早くも試される場となる。取りざたされる衆参同日選について岡田氏は「受けて立つ」と語った。野党第1党に値する公約を早急に示すべきだ。
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東京新聞
「民進党」結党 具体策掲げ政権に迫れ
2016年3月28日
民主党と維新の党が合流して「民進党」が船出した。総裁として自民党を率いる安倍晋三首相が一強支配を強める中、政権を託し得る政党として、再び民意の受け皿となれるのか。正念場である。
夏の参院選や、同日選の可能性も指摘される衆院選を控え、急造の感は否めないが、それだけ政治状況は逼迫(ひっぱく)しているのだろう。衆参合わせて百五十人を超える規模での始動だ。「安倍一強」を許してきた野党が、多弱からの脱却を目指して結集することを、まずは歓迎したい。
新代表に民主党の岡田克也代表、代表代行に同党の長妻昭、蓮舫両代表代行がそのまま就き、新たに江田憲司維新の党前代表も代表代行に就任した。
合流時の勢力からいっても、民主党による事実上の吸収合併であり、民主党色が色濃く残る。選挙に向けて政党名を変えただけだと有権者に否定的に受け止められれば、幅広い支持は得られまい。
まずは、あるべき社会の姿や、政治・経済、外交・安全保障の在り方などを明確に掲げ、それを政策として具体化し、どうやって実現するかの道筋をも、説得力ある形で国民に示してほしい。
政権交代を果たした民主党の二〇〇九年衆院選マニフェスト(政権公約)は、目指す方向性はおおむね評価できたが、実行力に乏しく、政権担当能力を疑われて有権者の信頼を失った。その反省を踏まえなければ、政党として生まれ変わったとは言えまい。
党人事で唯一注目すべきは、政調会長への山尾志桜里衆院議員の起用である。待機児童問題などをめぐり、首相らを厳しく追及した姿勢が評価されたのだろう。当選二回の若手議員起用で、党イメージ刷新の狙いもあるに違いない。
政策づくりは党内の意見集約はもちろん、党外との折衝など調整力が問われる仕事だ。特に、原発や安全保障をめぐり、党内には多様な意見が存在する。重要政策に曖昧さを残すようでは、政権交代可能な勢力と呼ぶには程遠い。
安保や経済など安倍政権には転換を要する政策が多々あるが、問題点の指摘や批判にとどまらず、どう転換するかの具体策の提示にも力を注いでほしい。
岡田代表は「政権交代可能な政治を実現するラストチャンス」と強調した。民進党が民意の受け皿とならなければ、安倍政権によって蝕(むしば)まれた立憲主義や民主主義を立て直す機会をも逸する。覚悟を持って政権と対峙(たいじ)すべきである。
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日経新聞
政策の競い合いで政治の活性化を
2016/3/28付
野党の民主党と維新の党がひとつになり、民進党を旗揚げした。自民党に対抗する勢力づくりとしては1994年の新進党、98年の民主党があるが、いずれも残念な結果に終わった。民進党は三度目の正直になれるかどうか。過去の失敗を糧にして、日本の政治の活性化に貢献してほしい。
戦後政治はその大半の時期を自民党が政権を担ってきた。高度経済成長などの成果は高く評価されるべきだが、長期政権がもたらす弊害も少なくなかった。競争なきところによどみが生じるのは経済も政治も同じである。
いまの安倍政権ができて3年3カ月たった。自民党の若手議員の放言からもうかがえるように、ゆるみは否定できない。「自民1強」に慢心し、好き勝手に振る舞っても政権を失うことはないとたかをくくっているのだろう。
94年にできた政治改革法の基本精神は、政権交代可能な二大政党制をつくり、政治に緊張感をもたらすことだ。選挙ごとに政権交代しなくても、それがいつでも起こり得る状況があれば与党もうかうかしていられなくなる。
大事なのは政策の競い合いだ。与野党の批判合戦は有権者の不満のガス抜きになるかもしれないが、結果として政治を停滞させる。
与野党がきちんと政策メニューを示し、有権者が見比べて是非を判断する。野党がよい政策を打ち出したときは与党も耳を傾ける。こうした政策決定過程を日本の政治に根付かせたい。
民進党の代表に就いた岡田克也氏は党の針路について「再分配を重視した経済成長を目指す」と語った。自民党を新自由主義と位置付け、対峙する狙いのようだが、具体像はまだ不明確なところがある。早急な肉付けが必要だ。
民主党政権は内紛続きで自滅した。岡田氏は「再びばらばらになることはない」と強調したが、維新からの参加者の半分近くはかつての離党組である。選挙互助会との批判を跳ね返す結束力を示せるかも課題である。
民進党への世論の関心は高くない。日本経済新聞とテレビ東京の最新世論調査で「期待する」は26%にとどまり、「期待しない」の66%を大きく下回った。
前途は多難だが、期待値が低いので「意外な成果」を生み出しやすいともいえる。すぐに政権交代をうかがう地力はあるまい。まずは地道な基盤づくりである。
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読売新聞
民進党結党大会 国民の不信感を払拭できるか
2016年03月28日 03時02分
民主党に対する国民の根強い不信感を払拭する契機にできるのか。
民主、維新の両党が合流した「民進党」の結党大会が開かれた。岡田代表は挨拶で、「日本に政権交代可能な政治を実現するためのラストチャンスという認識を共有しよう」と強調した。
改革結集の会だった4人が参加し、衆院議員は96人となった。参院では、無所属の1人が加わった民進党の60人と、維新からの5人が統一会派を近く結成する。
新しい党名は、「国民と共に進む」との意味を込めたという。
民主党が推した「立憲民主党」は世論調査で、維新が提案した「民進党」を下回った。結果的に、政権時代の負のイメージを引きずる「民主党」の名を捨て去ることができたとも言える。
党役員人事で、待機児童問題を巡って注目された若手の山尾志桜里衆院議員を政調会長に抜擢ばってきしたのは清新さを求めたのだろう。
肝心なのは、民進党が政権を担える党として現実的で説得力ある政策を打ち出せるかどうかだ。
連合の神津里季生会長は結党大会で、民進党の政策について「目先の人気取りで、魂まで失ってはならない」と指摘した。
その意味で、結党大会で決まった新綱領の内容は物足りない。
憲法改正については「未来志向の憲法を国民とともに構想する」との曖昧な文言にとどまった。維新は改正に前向きだが、民主党に慎重論が強かったためだ。
安全保障政策では、「専守防衛を前提に現実主義を貫く」と訴え、「日米同盟の深化」も掲げた。
しかし、民主、維新両党は、米国が高く評価する安保関連法について、廃止法案を共産党などと共同で国会に提出した。こうした言行不一致で、同盟をどう深化させるつもりなのだろうか。
原発政策は、「原発に頼らない社会」を目指すとした。当初案は「2030年代稼働ゼロ」だったが、電力系労組などの反対で、より現実的な表現に落ち着いた。
夏の参院選に向けて、共産党などとの選挙協力も課題となる。
共産党が1人区で独自候補を取り下げることで、野党候補の一本化は徐々に進んでいる。衆院選での協力も検討するという。
だが、そもそも共産党との間では、憲法や日米安保など政策面の隔たりが大きい。民進党内の保守系議員などには、「共産党にすり寄りすぎだ」との反発も高まっている。今のままでは、「野合批判」が一層強まろう。
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産経新聞
2016/03/28の社説には、取扱いなし。