検事の虚偽捜査報告書の作成問題で、小川敏夫前法相は検事総長への指揮権発動を考えたと公言。
検察のありかたに関わる重要な問題提起だと思います。
東京新聞も社説を書かれており、見ておきます。
*****検察庁法14条*****
第十四条 法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。
第四条 検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。
第六条 検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。
○2 検察官と他の法令により捜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる。
************東京新聞2012/06/06*******
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012060602000130.html
【社説】
指揮権発言 軽視せずに公正捜査を
2012年6月6日
検事の虚偽捜査報告書の作成問題で、小川敏夫前法相は検事総長への指揮権発動を考えたと公言した。検察は「身内に甘い」との指摘もあり、発言は軽視できない。公正な徹底捜査に務めるべきだ。
検察庁法一四条に定めた法相の指揮権は、検察を民主的に統制する手段である。検察が独断に走り、ファッショ化した場合、それを止めることができない。そのため、国民に選ばれ、信任された内閣の法相にチェックする機能を持たせていると解釈されている。
指揮権は検事総長に対してのみ発動されるが、その法相判断は正当でなければならず、国民が支持しない場合、内閣は命取りになる。実際に指揮権が振るわれたのは、一九五四年の造船疑獄のときだけとされ、内閣は総辞職に追い込まれた。
小川氏が法相退任の会見で問題にしたのは、検事が作成した陸山会事件の虚偽捜査報告書だ。「適当に幕引きすれば、国民の信頼を得られないのではないかと心配した」「指揮権発動を考えたが、野田佳彦首相の了承を得られず、残念だ」などと述べた。
検察捜査は公平公正で、政治に左右されてはならないのは当然だ。法相が捜査の現場を直接指揮できない仕組みになっているのは、政治の側からの不当な圧力を排除するためだ。
それゆえ、法相の指揮権発動は軽々しいものであってはならない。今回、捜査の報告も受けておらず、証拠を見たわけでもない小川氏が、「指揮権」を口にしたのは不適当といえる。不当な圧力に当たりかねないからだ。
ただし、このケースは、虚偽の捜査報告書を作成した検事の刑事処分について、検察当局が捜査中の事件である。身内が身内を調べている。「検察が内部のことについて消極的な場合に、積極的にさせるのは法務大臣の本来の姿ではないか」という小川氏の言葉は、検察組織に対する不信感を表している。自分の発言が、国民の支持を得られるとの政治的発言だろう。検察は常に公正でないと、政治からの介入の口実を与えてしまう。
裁判官や検察官、弁護士の経験を持つ人物の計算した発言としても、検察当局は自らへの戒めとすべきだ。検事や幹部らへの徹底捜査は当然のことだ。「処分が身内に甘い」と国民が受け止めれば、検察審査会で厳しい判定が下されるシステムにもなっている。
**************************************
他関連情報:
http://togetter.com/li/316561
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32737
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090616/197741/
****法務省ホームページより*****
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00297.html
法務大臣臨時閣議後記者会見の概要
平成24年6月4日(月)
本日11時半からの閣議で全国務大臣が辞表を書いて参りまして,私も書いて参りました。昨日の午後,野田総理から直接電話をいただきまして,これまでの職務や国会対応をお褒めいただきましたが,事情により交代していただきたいということでありました。それ以上の詳しい理由はありません。私の方も,任命権者からのお話でありますので,それをそのまま受け入れまして特に理由等も聞いておりません。あまり長くない間ではございましたが皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。
これまでの大臣の職務等に関する質疑について
【記者】
在任中で最も印象に残っている出来事や職務は何でしょうか。理由も併せてお答えください。
【大臣】
やはり法曹養成制度,それから検察への信頼回復ということが大きなテーマであるというふうに関心を持っていた点であります。そのほかにも人権とかハーグとかいろいろありましたけど,主たるのはその2つですが,特に急を要するのは検察の信頼の回復という点であります。郵便不正の村木さんの事件に続いて,内容虚偽の捜査報告書が作成されたということによって検察に対する国民の信頼が大変大きく傷ついております。この点につきまして,国民の信頼を取り戻して検察が本来の職責を果たすということのためには,この虚偽捜査報告書の問題についてもこれまでお話してきたとおり,国民の理解を得られる対応が必要であると考えておりましたが,この点についてこれがまだ具体的な決着を見ないままということは大変残念に思っております。
【記者】
総理から特に再任しないことについての理由はなかったとおっしゃいましたが新内閣で再任されなかった理由についてどのように受け止められていらっしゃいますか。
【大臣】
任命権者・人事権者である総理のお考えですので,私の方はそれについてそれ以上はお尋ねしませんでしたし,特に具体的に職務上思い当たる節はありませんが,任命権者からの話ですので,そのまま受け入れました。
【記者】
先ほど虚偽の捜査報告書のお話がございましたが,そのほかにその問題も含めて任期中に取り組みたかったけれどもできなかった,やり残した課題等があればお聞かせいただきますか。
【大臣】
案件は多かったですね。これはまだ国会が続いていますからでありますけれども,法曹養成制度は短兵急にという問題ではありませんが,やはり人権委員会の設置,ハーグ条約の関連法案の成立,そうした面があったと思いますが,やはり一番は検察の信頼回復が強いと思います。やはり村木さんの事件と虚偽の捜査報告書の事件が立て続いて起きて,本当に国民の検察に対する信頼が損なわれているときに検察が身内に甘いと,あるいは適当な形で幕引きしてしまうということがあれば,国民の信頼の回復は得られないのではないかということを非常に心配しました。そうした中で,私自身は指揮権の発動ということを決意したのでありますが,総理の了承も得られなかったので大変残念に思っております。
指揮権の発動に関する質疑について
【記者】
今おっしゃったことですが,小川大臣は指揮権の発動を考えられて総理に御相談されたのでしょうか。
【大臣】
そうです。
【記者】
それはいつ頃どのように相談されたんでしょうか。
【大臣】
具体的な詳細は内部のやりとりですのであれですが,5月の下旬ですね。
【記者】
捜査について指揮権を発動したいということだったんでしょうか。田代検事の。
【大臣】
捜査でないことについてはそもそも人事上のことについては法務大臣の権限ですので,指揮権はあくまでも捜査に関してです。
【記者】
それに対して野田総理はどのようにお答えになったのでしょうか。
【大臣】
了承していただけなかったということです。
【記者】
それは現行の田代検事に対する捜査について前大臣として不満だったということですか。
【大臣】
不満ということではなくて国民の理解を得られる対応をしなくては国民からの信頼回復ということは得られないだろうというふうに考えたわけでございますので,そうした国民の理解を得られる対応をするべきだろうという観点でございます。
【記者】
大臣は総理に対してどのような言葉でお伝えしたのでしょうか。
【大臣】
詳細は内部のやりとりですので,差し控えさせてください。
【記者】
今回再任されなかった理由にそのことが関係しているという可能性はどのような御認識でしょうか。
【大臣】
私自身は再任されなかった理由は知りません。任命権者のお考えですので,それをそのまま受け入れたということでございます。
【記者】
その指揮権発動について御相談されたことがもしかしたら引き金になったかもしれないということはありませんか。
【大臣】
具体的な根拠はありませんから,想像や推測で物事を言っても始まりませんし,そうだということの具体的なことは何もありません。
【記者】
大臣はかねてから虚偽の捜査報告書問題について重大な関心を持っているという点を繰り返されてきましたが,指揮権発動を総理に申し上げられたときにはどういう問題意識からだったのでしょうか。
【大臣】
きちんとした形で対応しなければ国民の信頼は回復できないと,いい加減な形で幕引きすることがある,あるいはそのように国民から受け止められてしまえば,国民からの信頼回復というものは遠のいてしまうと,そういう意味で私は検察の信頼回復を何としても実現したいとそういう思いでありました。
【記者】
大臣のお考えでは,指揮権を発動した場合は具体的にどのような指揮をされる御予定だったのでしょうか。
【大臣】
それは具体的にしないで終わったことですから,それ以上の詳細の説明は差し控えさせてください。
【記者】
御相談をされた時点では既に報道各紙で不起訴の方針というのは出ていた後ということでよろしいのでしょうか。
【大臣】
報道関係は随分早かったですよね。5月の始めぐらいからいろいろな報道が出ていましたね。
【記者】
その報道内容を受けてそういうお気持ちになったということはあるのでしょうか。
【大臣】
報道内容そのものが具体的に事実関係を反映しているかということもありますので,報道されているということはそれは一つの資料としてその報道について担当部署に確認することはありました。
【記者】
どういう方針なのかを確認したということでしょうか。
【大臣】
はい。
【記者】
それを踏まえて相談に行かれたということですか。
【大臣】
はい。
【記者】
確認ですがそういう指揮権について考えるまでの捜査の経過というのを大臣は踏まえた上で不十分だという考えからですか。
【大臣】
捜査の内容そのものが具体的に法務大臣は中身には入りませんので,ですから捜査の内容そのものについて全部把握しているわけではありません。
【記者】
大臣としての指揮権についての思いというのは,次の滝さんにはお伝えはされたり相談されたりとかはするのでしょうか。
【大臣】
指揮権は別にして捜査報告書のことについて国民の信頼が得られる対応が必要であるという総論部分について政務三役会議で認識は共有していました。
【記者】
滝さんも納得はされているということですか。
【大臣】
それは指揮権の問題ですか。
【記者】
はい。
【大臣】
指揮権の問題は法務大臣の専権ですので,特に政務三役で相談し,協議して決定したことではありません。
【記者】
指揮権の発動について具体的にどういうふうに指揮をしようとお考えであったのでしょうか。
【大臣】
それは,しなかったことですから,退任した今は具体的にいうことは差し控えさせてください。
【記者】
不起訴という報道が各紙に出ました。これに対する大臣のお考えはいかがでしょうか。
【大臣】
これは客観的な資料を見れば分かることですが,捜査報告書の中身や捜査状況の録音というものを詳細に見てみれば,記憶違いではないと誰しも思うのではないかと思います。ですから,捜査報告書と録音を,インターネットで流出しているようですから,それを見れば判断できると思います。
【記者】
大臣御自身も見てチェックしたということでしょか。
【大臣】
はい。捜査資料ということは捜査に干渉するので,入手しませんでしたが,流出した資料がありましたので,それを元に比較対照すれば,そういう結論になりますね。
【記者】
それを受けて指揮権の発動をお考えになったのでしょうか。
【大臣】
それも含めて総合的な判断です。
【記者】
捜査に関しての報道が出たときに,検察に直接・間接に確認したということでしょうか。
【大臣】
検察庁に確認したというわけではありませんから,直接ではなく間接です。法務省内です。ですから,捜査の具体的な情報そのものを検察庁から直接聞いたことはございません。
【記者】
総理に打診されて,総理はどういう言葉で断ったのでしょうか。
【大臣】
そこは,中でのやり取りですので,具体的なやり取りについては差し控えさせてください。ただ了承を得られなかったということは結論になります。
【記者】
5月の何日かというのをお教えいただけますか。
【大臣】
官邸に行ったのは5月は一回しかないので,戻れば分かります。
【記者】
指揮権の発動について,これまでは政治の介入という意味で慎重に扱われていたと思うのですが,指揮権の発動の在り方についてはどのようにお考えでしょうか。
【大臣】
50年前に国民から不評をかう指揮権が発動されて以来,指揮権というものがかなり抑制的になっていたと思いますが,私自身は今回のように検察部内の案件について,検察が消極的であるということのような場合,今回のケースは逆にいえば,指揮権を発動するという一般論として典型的なケースではないかと思いますが。
【記者】
典型的なケースというのはもう少し具体的にいうと,どういうことでしょうか。
【大臣】
検察が検察内部について消極的であるという場合に,これを積極的にならしめるということについては,国民から選ばれた,法務大臣の本来の姿ではないかと思います。そうした意味で,指揮権の発動というのは,非常にふさわしいケースであったと思います。
【記者】
5月初めの段階で,不起訴の方針というのは報道されていました。今の御発言で,検察が消極的であった場合,積極的にならしめるのは,本来の姿であるということは,不起訴はおかしい。これは起訴すべき案件であるとお考えであったわけでしょうか。
【大臣】
起訴するかどうかは,捜査を行った上での判断ですから。捜査そのものについて,十分限定した,徹底した厳正な捜査を行ってなおかつ,公判請求できないのであればこれは仕方がないと思います。
【記者】
捜査そのものに不十分な点があるとお考えでしょうか。
【大臣】
まだ,終わったわけではございませんから,まだ係属中の状況において,それを更にということでございます。
【記者】
総理とのやり取りというのは,完全に密室の中でお二人だけで行われたのでしょうか。
【大臣】
内部の状況についての話は御容赦ください。
【記者】
説明していただけないということでしょうか。
【大臣】
私と総理がいたということは間違いないのですが,他に誰がいたかということは御容赦ください。
【記者】
官邸に大臣が行かれてということでよろしいのでしょうか。
【大臣】
はい。そういうことです。
【記者】
法務省内でどなたと相談して検討したのでしょうか。
【大臣】
相談ということがふさわしいのかどうかは分かりませんが,全くそれに関する情報がない中で,私が抜き打ちで話したということではないです。
【記者】
総理に1回話されて,総理にそういうふうに駄目だといわれてそれで大臣としては仕方がないから諦めたということでしょうか。
【大臣】
別に諦めておりません。また,それは状況によって再度御説明に上がるということも考えておりました。
(小坂補足、以下、別の話題)
弁護士報酬及び競馬サイト閲覧の問題に関する質疑について
【記者】
国会で弁護士報酬の話題でとか,競馬サイトの話題で,かなり野党から追及されましたけれども,それに対する大臣の見解と,今回再任されなかった理由とをどのように関係するか御自身でお考えでしょうか。
【大臣】
弁護士報酬の問題は完全に正当でありまして,不当といわれる筋合いはございません。要するに私自身は訴訟代理人として仕事をしたわけですから,仕事について,依頼者との間で協議して報酬を合意したわけであります。そして,合意した報酬金額も弁護士の報酬標準に従った金額であります。これがなぜ虚偽であるとか架空であるということになるのでしょうか。これが,仕事をしていないのにもし仕事をしたことにして報酬をもらえば,それは虚偽・架空ということなのでしょうけれども。具体的に実体関係が伴って,相手の依頼者との間で何の異存もなく決めたことで,しかも金額も報酬標準ということで,不正とか虚偽であるとかといわれる筋合いの全くないことであると思っています。これを最初に報じたのは確か週刊文春でしたか。法務大臣をやっている間は忙しいから,法務大臣を務め上げた後,時間ができたら,名誉毀損の訴訟を起こすと以前にお話ししましたが,時間ができましたので,近日中に名誉毀損の損害賠償請求と記事の取消しの訴訟を起こすことにいたします。競馬サイトを見ていたのは委員会の中で委員会が始まる前のことですから,委員会中ということもないでしょうし,競馬で遊んでいたわけではなくて,自分が持っている馬の調教の確認をしただけですので,決してそのことが,重大な倫理に反したあるいは,常識に反した行為であるとは思っていません。私の認識としては弁護士報酬,携帯電話の競馬サイトことが,いわゆる法務大臣を再任されないということの理由であるとは思っておりませんが,私自身のことではなくて,周りがどう思っているかは周りの皆さんのお考えでしょうと思います。
死刑の執行方法についての検討に関する質疑について
【記者】
大臣は,政務三役会議で死刑の執行方法についての御検討を始めたところであったと思うのですが,これの結論を出す前に大臣を退かれるということで,御所見をお願いします。
【大臣】
先ほど,その問題について触れずに申し訳ございませんでした。中途半端になってしまったので,大変残念に思っておりますけれども,ただ,私一人で決めたことではなくて,政務三役で協議して決めた内容でありますので,そこのところは,また,後任の政務三役で適切な対応をしていただければと思います。
【記者】
大臣個人としては,こうすべきであるというお考えはお持ちなのでしょうか。
【大臣】
それなりに考えはありますが,その考えをこれまでの政務三役会議等で披瀝したことはありませんから,それを披瀝することも今後の議論があるのでしょうから,差し控えさせていただきたいと思います。
(以上)
読み終わったら削除願います