「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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1951年(昭和26年)詩人・原民喜は、線路を枕にして自ら命を絶った、希望を私たちに託して。『永遠のみどり』

2018-12-17 17:04:11 | 書評
 佐藤春夫氏は、原民喜の鉄道自殺を詠む。


 宵ノ間ハ酒場ニテ

 少女ラト笑ヒシガ

 土手ノカゲ

 線路ノ間二枕シテ

 十一時三十一分

 頭蓋骨後頭部割レ

 片脚切レテ

 人在リヌ

 詰襟ノ服ヲマトヒ

 ヨキ服ハ壁ニカケ

 友ノタメ残シ置キシハ

 ヌケガラニ似テ

 「崩れ墜つ 天地のまなか

 一輪の花の幻」思ヒツメ

 来世ハ雲雀ト念ジ

 人死ニヌ

 サリゲナク別レシ友二

 書キ置キハ多カリキ

(佐藤春夫「三月十三日夜ノ事」)



 この自死の直前に、原民喜から「中国新聞」に送られた詩は、『永遠のみどり』。


 『永遠のみどり』

 ヒロシマのデルタに
 若葉 うづまけ

 死と焰の記憶に
 よき祈りよ こもれ

 とはのみどりを
 永遠のみどりを

 ヒロシマのデルタに
 青葉 したたれ


 現代において、自死は倫理的に許されないことであるし、小児科医としても徹底的に抗わねばならないものであるとしても、自身は死にゆくにも関わらずここまで希望に満ちた詩を私たちに残してくれたことに、ある意味大きな驚きと感銘を憶えます。

参考文献:『原民喜 死と愛と孤独の肖像』 著 梯久美子 岩波新書 2018年 
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