(第3稿2014年10月15日水曜日23:00)
刑法上の談合罪とまではいかなくても、受注調整行為に係る独禁法違反の問題。
第1、設問1
1、A,B,C,D,E及びFについて
(1)事業者について
独禁法(以下、「法」という。)2条1項でいう事業者とは、経済活動を反復継続するものをいう。
A,B,C,D,E及びFは、建設業者であり、下水道更正工事を反復継続して行い、利益を得ているのであるから、事業者に該当する。
(2)一定の取引分野(法2条6項)について
法2条6項にいう「一定の取引分野」とは、実質的に競争が制限される場を言い、商品・取引段階・地域ごとに成立する。
本件では、以下に検討する4社が、Y市の下水道更生工事での発注において、乙工法の入札において価格と入札業者等を申し合わせ、取引条件に実質的な制限を加えており、一定の取引分野は、Y市の発注の下水道更生工事全体であると考える。
なお、下水道更生工事には、甲工法及び乙工法があるが、工法については、甲工法、乙工法いずれでもよいため、Y市の発注の下水道更生工事全体として画定される。
2、4社による不当な取引制限(法2条6項)について
(1)4社の共同行為について
法2条6項に言う「共同して」とは、「意思の連絡」があったと認められることが必要である。すなわち、特定の事業者が、他の事業者との間で談合に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動にでたような場合には、「意思の連絡」があるものと推認される(東芝ケミカル事件 東京高裁判決平成7年9月25日)
本件では、4社は、平成21年2月1日、Aの会議室で開かれた会合(以下、「会合①」という。)で、3つの事項(1)(2)(3)の合意をし(以下、「基本合意」という。)、その合意通りの行為を行ったのであって、会合①で意思の連絡をし、基本合意に沿った行動に出たものといえ、共同行為に該当する。
(2)「競争を実質的に制限すること」について
以下、(1)(2)(3)の各合意の内容の行為をすることが、「競争を実質的に制限すること」に該当するかを検討する。
「競争を実質的に制限すること」とは、特定の事業者がその意思でる程度自由に価格・品質・数量等の競争条件を左右することによって市場を支配できる状態をいう。
ア、合意(1)について
同年4月1日以降入札が行われる下水道管更生工事について、あらかじめ4社の営業部長が話し合いにより各入札で指名された者の中から受注予定者を決定するというものである。
合意(1)が実施されると、一定の取引分野において、相手方であるY市の入札先が決定されることになり、事業者が取引条件を制限するもので、競争を実質的に制限することに該当する。
イ、合意(2)について
4社の間でその受注金額が出来る限り均等になるようにすることの合意は、受注価格を事業者が、自ら操作することで実現できるものであって、相手方の取引条件である受注価格を実質的に制限することを意味しており、一定の取引分野において競争を実質的に制限していることに該当する。
ウ、合意(3)について
①受注予定者の落札金額については、その者におおむね20%程度の粗利が確保できる水準とし、②受注予定者とrの協議により指名された者の入札額を決定し、事前にその額を当該入札参加者に連絡するという合意は、相手方の取引条件である受注価格を決定するとともに、その受注価格で入札が行われるように入札参加者の入札額をあらかじめ決定するというもので、一定の取引分野において競争を実質的に制限することに該当する。
エ、小結
4社は、会合①において、一定の取引分野における競争を実質的に制限することを行うべく合意(1)ないし(3)の基本合意をなしているといえる。
(2)4社の基本合意の相互拘束性について
Y市の下水道更生工事の入札は、平成21年4月1日から平成22年5月9日まで(以下、「本件実施期間」という。)に25件が行われ、rが合意の方法で受注調整を行った結果、B、C及びDがそれぞれ8件を落札したとある。
基本合意の相互拘束性は、あったと言える。
(3)4社の基本合意の公益性について
4社の基本合意は、専ら4社の利益を図るもので、公共性は見出し得ない。
(4)以上より、4社は、一定の取引分野において、相互に拘束性のある合意(1)ないし(3)の基本合意をし、取引条件である価格や取引の相手方などの取引条件を実質的に制限しており、法2条6項の不当な取引制限に該当し、法3条後段に反し違法であると考える。
3、A社が下請けであったことについて
A社は、平成21年3月1日から1年6ヶ月の間、Y市において指名停止の処分を受けている。
指名自体に実際に参加していないのであって、Y市と工事の契約も締結していないため、本件違法の主体となりえるのか問題である。
不当な取引制限となる事業者は、形式的に、相手方と契約する事業者だけをいうのではなく、その事業者の①不当な取引制限における役割、②取引における合意の内容、③利益獲得の割合等その関わりから、実質的に違反行為の参加の有無を判断すべきと考える。
A社は、労働災害を起こし、相手方から指名停止を受けたが、本来であれば、指名入札に参加する立場にあった。そして、指名入札に参加できない代わりに、平成21年3月5日に再度、BCDの営業部長とA社営業部長rが会合(以下、「会合②」という。)を開き、「BCDの受注する下水道厚生工事の半分についてAが下請けに回り、受注者からその利益の50%を受けることの合意(以下、「合意(4)」という。)を得ている。そして、実際に、本件実施期間において、Y市の下水道更生工事の入札25件中にBCD合わせて24件入札をしたが、そのうちの半分に当たる12件をAが下請けになっており、合意(4)は相互拘束性を持って、実行されたことがわかる。
以上から、A社は、本件不当な取引制限(法2条6項)において、実質的に参加したものと判断でき、従って、A社もまた、法3条後段の違法があると考える。
4、EとFについて
EFの担当者は、平成21年1月20日、Dの営業部長uと偶然に会った際に、uから、談合をおこなうべくrstと交渉中である旨を聞いている(以下、「本件会話」という。)。そして、EFの担当者は、近い将来、談合に参加させてもらえることを来し、自らは落札できない価格で入札をしてきた。本件でのABCDの不正な取引制限に該当するか問題である。
特に、相互拘束性のもと共同行為がなされたかどうかが問題であり、以下、検討する。
法2条6項に言う「共同して」とは、上述の通り、「意思の連絡」があったと認められることが必要である。すなわち、特定の事業者が、他の事業者との間で談合に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動にでたような場合には、「意思の連絡」があるものと推認される(東芝ケミカル事件 東京高裁判決平成7年9月25日)
本件会話は、前述の会合①②のような会議室を用いた会議の形を用いたものではないが、談合が交渉中であるという本来であれば、秘密にすべき事がらを、uから伝えられている。
本件では、談合が交渉中であるということを聞いたEFは、談合に協力しておけば、その後は、談合に参加させてもらい談合により落札できるようになると考えて、自らは落札できないと考える価格で入札をした。ABCDの談合に歩調をそろえる意思で、落札できない価格で入札しており、あたかも本件会話に拘束性があるとして、EFは行動している。
しかし、EFが不当な取引制限の相互拘束性にあたる意思の連絡というためには、EFが、ABCD間の合意を認識して一方的に協力・協調することだけでなく、ABCDもEFが協調していることを認識している必要があるが、EFとの間では相互拘束に該当する意思の連絡は存在していない。
従って、EFは、相互拘束のある共同行為をなしていないため、不当な取引制限にあたる行為をしたとはいえない。
5、結論
ABCDの行為は、法2条6項に該当し、法3条後段の違法があると考える。
EFに独禁法上の違法はない。
第2 設問2について
仮に、平成21年3月15日に公正取引委員会(以下、「公取委」という。)の立ち入り検査を受け、結果、本件期間において、1件も受注できなかったとした場合、会合①と②はすでになされており、合意(1)ないし(4)はあるが、実際の合意に基づく入札をしていない段階でABCDEFに違法性があるか、不当な取引制限の成立時期の問題である。
たとえ、不当な取引制限が行われていないとしても、拘束力のある合意があるのであれば、違法性はあると考える(石油価格カルテル刑事事件最高裁判決昭和59年2月24日)。なぜならば、その時点において、法益侵害の危険性は具体的にあったと考えられるからである。
1、ABCDについて
本件では公取委の立ち入り検査の前に合意(1)ないし(4)がなされ、合意内容から具体的に入札価格を連絡する方法や、指名停止を受けたA社を下請けとするなどの具体的配慮がなされる合意内容からすると、合意には拘束性があったと判断しうる。
従って、ABCDは、通謀して、不当な取引制限に該当する合意(1)ないし(4)をなしている以上は、法2条6項に該当し、法3条後段の違法があると考える。
2、EFについて
EFは、当初から独禁法に抵触していない。
以上
**************司法試験平成22年(2010年)*******************************
〔第2問〕(配点:50)
Y市では,昭和30年代に下水道を整備したが,近時,下水道管が老朽化し水漏れ事故が急増し
ている。このような状況は各自治体で起きているが,多くの自治体では,下水道管の取替えよりも
大幅な経費の節約となることから,下水道管の内部を補修する下水道管更生工事を行うようになり,
その発注件数が増えている。下水道管更生工事には,甲工法及び乙工法の2つの工法がある。甲工
法が従来採用されていた工法であるが,この数年,甲工法より高い技術を求められるものの,甲工
法より約20%費用を節約できる乙工法が普及しつつあり,大規模及び中規模の建設会社は乙工法
を施工できるようになっている。Y市内には,甲工法を施工できる建設業者がA,B,C,D,E
及びFの6社あり,乙工法を施工できる建設業者は,そのうちのA,B,C及びD(以下「4社」
という。)である。Y市は,下水道管更生工事の契約者を市内業者の中から指名競争入札の方法によ
って決定しており,工法については甲工法又は乙工法のいずれを採用してもよいこととしている。
Aの営業部長rは,B,C及びDの営業部長s,t及びuに呼び掛けて交渉した結果,平成21
年2月1日,Aの会議室で開かれた会合において,これらの間で,⑴同年4月1日以降入札が行わ
れるY市発注に係る下水道管更生工事については,あらかじめr,s,t及びuの間で話合いによ
り4社のうち各入札で指名された者の中から受注予定者を決定すること,⑵4社の間でその受注金
額ができる限り均等になるようにすること,⑶受注予定者の落札金額については,その者におおむ
ね20%程度の粗利が確保できる水準とし,受注予定者とrの協議により受注予定者を含めた4社
のうち各入札で指名された者の入札金額を決定し,rにおいて事前にその金額を当該入札参加者に
連絡することを合意した。rが,E及びFの担当者に参加を呼び掛けなかったのは,E及びFの担
当者はそれらの従来の入札態度からいずれにせよ談合に協力すると予想されたし,協力しなくても
甲工法はコストが高いことから大部分の談合は成功すると考えたからである。
ところが,AがY市内において労働災害を起こしたことから,Y市は,平成21年3月1日から
1年6か月の間,Aを指名停止とした。そこで,rは,同月5日,Aの会議室においてs,t及び
uと再度会合を開き,B,C及びDの受注する下水道管更正工事の半分についてAが下請に回り,
受注者からその利益の50%を受け取るよう求めたところ,s,t及びuはこれに同意した。
Y市の下水道管更生工事の入札は,平成21年4月1日から平成22年5月9日まで25件が行
われ,rが上記の方法で受注調整を行った結果,B,C及びDがそれぞれ8件を落札し,そのうち
12件についてAは下請となった。
E及びFの担当者は,これに先立つ平成21年1月20日,Dの営業部長uと偶然会った際に,
uから,談合を行うべくr,s及びtと交渉中である旨を聞いた。E及びFの担当者は,それぞれ,
近い将来,自ら乙工法の技術を取得できる見込みであることから,談合に協力しておけば,その後
は談合に参加させてもらい談合により落札できるようになると考えて,自らは落札できないと考え
られる価格で入札してきた。しかし,1件については,Fが想定落札価格の計算を誤り,落札した。
公正取引委員会は,平成22年5月10日,関係各社に立入検査を行った。
〔設問1〕A,B,C,D,E及びFの行為は独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
〔設問2〕上記の事案で,仮に,平成21年3月15日に公正取引委員会が立入検査を行ったこ
とにより,同年4月1日からの入札につき1件も受注調整をすることができなかった場合,A,
B,C,D,E及びFの行為は独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
刑法上の談合罪とまではいかなくても、受注調整行為に係る独禁法違反の問題。
第1、設問1
1、A,B,C,D,E及びFについて
(1)事業者について
独禁法(以下、「法」という。)2条1項でいう事業者とは、経済活動を反復継続するものをいう。
A,B,C,D,E及びFは、建設業者であり、下水道更正工事を反復継続して行い、利益を得ているのであるから、事業者に該当する。
(2)一定の取引分野(法2条6項)について
法2条6項にいう「一定の取引分野」とは、実質的に競争が制限される場を言い、商品・取引段階・地域ごとに成立する。
本件では、以下に検討する4社が、Y市の下水道更生工事での発注において、乙工法の入札において価格と入札業者等を申し合わせ、取引条件に実質的な制限を加えており、一定の取引分野は、Y市の発注の下水道更生工事全体であると考える。
なお、下水道更生工事には、甲工法及び乙工法があるが、工法については、甲工法、乙工法いずれでもよいため、Y市の発注の下水道更生工事全体として画定される。
2、4社による不当な取引制限(法2条6項)について
(1)4社の共同行為について
法2条6項に言う「共同して」とは、「意思の連絡」があったと認められることが必要である。すなわち、特定の事業者が、他の事業者との間で談合に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動にでたような場合には、「意思の連絡」があるものと推認される(東芝ケミカル事件 東京高裁判決平成7年9月25日)
本件では、4社は、平成21年2月1日、Aの会議室で開かれた会合(以下、「会合①」という。)で、3つの事項(1)(2)(3)の合意をし(以下、「基本合意」という。)、その合意通りの行為を行ったのであって、会合①で意思の連絡をし、基本合意に沿った行動に出たものといえ、共同行為に該当する。
(2)「競争を実質的に制限すること」について
以下、(1)(2)(3)の各合意の内容の行為をすることが、「競争を実質的に制限すること」に該当するかを検討する。
「競争を実質的に制限すること」とは、特定の事業者がその意思でる程度自由に価格・品質・数量等の競争条件を左右することによって市場を支配できる状態をいう。
ア、合意(1)について
同年4月1日以降入札が行われる下水道管更生工事について、あらかじめ4社の営業部長が話し合いにより各入札で指名された者の中から受注予定者を決定するというものである。
合意(1)が実施されると、一定の取引分野において、相手方であるY市の入札先が決定されることになり、事業者が取引条件を制限するもので、競争を実質的に制限することに該当する。
イ、合意(2)について
4社の間でその受注金額が出来る限り均等になるようにすることの合意は、受注価格を事業者が、自ら操作することで実現できるものであって、相手方の取引条件である受注価格を実質的に制限することを意味しており、一定の取引分野において競争を実質的に制限していることに該当する。
ウ、合意(3)について
①受注予定者の落札金額については、その者におおむね20%程度の粗利が確保できる水準とし、②受注予定者とrの協議により指名された者の入札額を決定し、事前にその額を当該入札参加者に連絡するという合意は、相手方の取引条件である受注価格を決定するとともに、その受注価格で入札が行われるように入札参加者の入札額をあらかじめ決定するというもので、一定の取引分野において競争を実質的に制限することに該当する。
エ、小結
4社は、会合①において、一定の取引分野における競争を実質的に制限することを行うべく合意(1)ないし(3)の基本合意をなしているといえる。
(2)4社の基本合意の相互拘束性について
Y市の下水道更生工事の入札は、平成21年4月1日から平成22年5月9日まで(以下、「本件実施期間」という。)に25件が行われ、rが合意の方法で受注調整を行った結果、B、C及びDがそれぞれ8件を落札したとある。
基本合意の相互拘束性は、あったと言える。
(3)4社の基本合意の公益性について
4社の基本合意は、専ら4社の利益を図るもので、公共性は見出し得ない。
(4)以上より、4社は、一定の取引分野において、相互に拘束性のある合意(1)ないし(3)の基本合意をし、取引条件である価格や取引の相手方などの取引条件を実質的に制限しており、法2条6項の不当な取引制限に該当し、法3条後段に反し違法であると考える。
3、A社が下請けであったことについて
A社は、平成21年3月1日から1年6ヶ月の間、Y市において指名停止の処分を受けている。
指名自体に実際に参加していないのであって、Y市と工事の契約も締結していないため、本件違法の主体となりえるのか問題である。
不当な取引制限となる事業者は、形式的に、相手方と契約する事業者だけをいうのではなく、その事業者の①不当な取引制限における役割、②取引における合意の内容、③利益獲得の割合等その関わりから、実質的に違反行為の参加の有無を判断すべきと考える。
A社は、労働災害を起こし、相手方から指名停止を受けたが、本来であれば、指名入札に参加する立場にあった。そして、指名入札に参加できない代わりに、平成21年3月5日に再度、BCDの営業部長とA社営業部長rが会合(以下、「会合②」という。)を開き、「BCDの受注する下水道厚生工事の半分についてAが下請けに回り、受注者からその利益の50%を受けることの合意(以下、「合意(4)」という。)を得ている。そして、実際に、本件実施期間において、Y市の下水道更生工事の入札25件中にBCD合わせて24件入札をしたが、そのうちの半分に当たる12件をAが下請けになっており、合意(4)は相互拘束性を持って、実行されたことがわかる。
以上から、A社は、本件不当な取引制限(法2条6項)において、実質的に参加したものと判断でき、従って、A社もまた、法3条後段の違法があると考える。
4、EとFについて
EFの担当者は、平成21年1月20日、Dの営業部長uと偶然に会った際に、uから、談合をおこなうべくrstと交渉中である旨を聞いている(以下、「本件会話」という。)。そして、EFの担当者は、近い将来、談合に参加させてもらえることを来し、自らは落札できない価格で入札をしてきた。本件でのABCDの不正な取引制限に該当するか問題である。
特に、相互拘束性のもと共同行為がなされたかどうかが問題であり、以下、検討する。
法2条6項に言う「共同して」とは、上述の通り、「意思の連絡」があったと認められることが必要である。すなわち、特定の事業者が、他の事業者との間で談合に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動にでたような場合には、「意思の連絡」があるものと推認される(東芝ケミカル事件 東京高裁判決平成7年9月25日)
本件会話は、前述の会合①②のような会議室を用いた会議の形を用いたものではないが、談合が交渉中であるという本来であれば、秘密にすべき事がらを、uから伝えられている。
本件では、談合が交渉中であるということを聞いたEFは、談合に協力しておけば、その後は、談合に参加させてもらい談合により落札できるようになると考えて、自らは落札できないと考える価格で入札をした。ABCDの談合に歩調をそろえる意思で、落札できない価格で入札しており、あたかも本件会話に拘束性があるとして、EFは行動している。
しかし、EFが不当な取引制限の相互拘束性にあたる意思の連絡というためには、EFが、ABCD間の合意を認識して一方的に協力・協調することだけでなく、ABCDもEFが協調していることを認識している必要があるが、EFとの間では相互拘束に該当する意思の連絡は存在していない。
従って、EFは、相互拘束のある共同行為をなしていないため、不当な取引制限にあたる行為をしたとはいえない。
5、結論
ABCDの行為は、法2条6項に該当し、法3条後段の違法があると考える。
EFに独禁法上の違法はない。
第2 設問2について
仮に、平成21年3月15日に公正取引委員会(以下、「公取委」という。)の立ち入り検査を受け、結果、本件期間において、1件も受注できなかったとした場合、会合①と②はすでになされており、合意(1)ないし(4)はあるが、実際の合意に基づく入札をしていない段階でABCDEFに違法性があるか、不当な取引制限の成立時期の問題である。
たとえ、不当な取引制限が行われていないとしても、拘束力のある合意があるのであれば、違法性はあると考える(石油価格カルテル刑事事件最高裁判決昭和59年2月24日)。なぜならば、その時点において、法益侵害の危険性は具体的にあったと考えられるからである。
1、ABCDについて
本件では公取委の立ち入り検査の前に合意(1)ないし(4)がなされ、合意内容から具体的に入札価格を連絡する方法や、指名停止を受けたA社を下請けとするなどの具体的配慮がなされる合意内容からすると、合意には拘束性があったと判断しうる。
従って、ABCDは、通謀して、不当な取引制限に該当する合意(1)ないし(4)をなしている以上は、法2条6項に該当し、法3条後段の違法があると考える。
2、EFについて
EFは、当初から独禁法に抵触していない。
以上
**************司法試験平成22年(2010年)*******************************
〔第2問〕(配点:50)
Y市では,昭和30年代に下水道を整備したが,近時,下水道管が老朽化し水漏れ事故が急増し
ている。このような状況は各自治体で起きているが,多くの自治体では,下水道管の取替えよりも
大幅な経費の節約となることから,下水道管の内部を補修する下水道管更生工事を行うようになり,
その発注件数が増えている。下水道管更生工事には,甲工法及び乙工法の2つの工法がある。甲工
法が従来採用されていた工法であるが,この数年,甲工法より高い技術を求められるものの,甲工
法より約20%費用を節約できる乙工法が普及しつつあり,大規模及び中規模の建設会社は乙工法
を施工できるようになっている。Y市内には,甲工法を施工できる建設業者がA,B,C,D,E
及びFの6社あり,乙工法を施工できる建設業者は,そのうちのA,B,C及びD(以下「4社」
という。)である。Y市は,下水道管更生工事の契約者を市内業者の中から指名競争入札の方法によ
って決定しており,工法については甲工法又は乙工法のいずれを採用してもよいこととしている。
Aの営業部長rは,B,C及びDの営業部長s,t及びuに呼び掛けて交渉した結果,平成21
年2月1日,Aの会議室で開かれた会合において,これらの間で,⑴同年4月1日以降入札が行わ
れるY市発注に係る下水道管更生工事については,あらかじめr,s,t及びuの間で話合いによ
り4社のうち各入札で指名された者の中から受注予定者を決定すること,⑵4社の間でその受注金
額ができる限り均等になるようにすること,⑶受注予定者の落札金額については,その者におおむ
ね20%程度の粗利が確保できる水準とし,受注予定者とrの協議により受注予定者を含めた4社
のうち各入札で指名された者の入札金額を決定し,rにおいて事前にその金額を当該入札参加者に
連絡することを合意した。rが,E及びFの担当者に参加を呼び掛けなかったのは,E及びFの担
当者はそれらの従来の入札態度からいずれにせよ談合に協力すると予想されたし,協力しなくても
甲工法はコストが高いことから大部分の談合は成功すると考えたからである。
ところが,AがY市内において労働災害を起こしたことから,Y市は,平成21年3月1日から
1年6か月の間,Aを指名停止とした。そこで,rは,同月5日,Aの会議室においてs,t及び
uと再度会合を開き,B,C及びDの受注する下水道管更正工事の半分についてAが下請に回り,
受注者からその利益の50%を受け取るよう求めたところ,s,t及びuはこれに同意した。
Y市の下水道管更生工事の入札は,平成21年4月1日から平成22年5月9日まで25件が行
われ,rが上記の方法で受注調整を行った結果,B,C及びDがそれぞれ8件を落札し,そのうち
12件についてAは下請となった。
E及びFの担当者は,これに先立つ平成21年1月20日,Dの営業部長uと偶然会った際に,
uから,談合を行うべくr,s及びtと交渉中である旨を聞いた。E及びFの担当者は,それぞれ,
近い将来,自ら乙工法の技術を取得できる見込みであることから,談合に協力しておけば,その後
は談合に参加させてもらい談合により落札できるようになると考えて,自らは落札できないと考え
られる価格で入札してきた。しかし,1件については,Fが想定落札価格の計算を誤り,落札した。
公正取引委員会は,平成22年5月10日,関係各社に立入検査を行った。
〔設問1〕A,B,C,D,E及びFの行為は独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
〔設問2〕上記の事案で,仮に,平成21年3月15日に公正取引委員会が立入検査を行ったこ
とにより,同年4月1日からの入札につき1件も受注調整をすることができなかった場合,A,
B,C,D,E及びFの行為は独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
所沢市の公共事業の落札率は95%以上が多く、99.9%という公共事業もあるようです(※1)。
一般的に、95%以上を「談合の疑いが極めて強い」、落札率 90%~95%を「 談合の疑いがある」とされています(※2、※3)。
つまり、所沢市の公共事業は「 談合 」と判断される水準でしょう。
所沢市の工事請負業者等指名委員会は「 所沢市の部長職 」によって構成されています(※4)。
もし、所沢市の幹部職員が落札者に対して、請負業者という弱味につけこみ、高い落札率を条件とした幹部職員への天下りの斡旋やなんらかの利益供与を要求しているのならば、市幹部という立場を悪用した市民に対する「 背任 」になりますよね。
実際、市幹部職員が雪見障子やガラスを業者から受け取っていたとして議会で問題提起されたことがあります(※5)。
所沢市の高い落札率をみると、このような腐敗が所沢市で常態化していると考えてしまいますね。
blog: 官製談合? 所沢市 総合福祉センター建設工事 落札率99.9%
http://blog.livedoor.jp/tokorozawalivedor/
※1
所沢市公共事業: 質疑が足りなかったのではないか ~ 高い落札率(落札率99.9%)
総合福祉センター建設(建築)工事
入札は一般入札であるが、応募は「平岩・本橋特定建設工事共同企業体」1社のみである。
また入札額は第1回、第2回とも予定価格をオーバー、(一般的には2回の入札で落札されない場合、入札は不調)備考欄に第1回見積合わせで落札と記載あり。
数量を指定した電子入札であると思われるのに、「何の見積合わせ」を「何の為に行ったのか」疑問が残る。
そして落札率99.9%。
また総合福祉センターの建築、電気、機械設備の合計落札額は26億820万円,予算は26億2,608万円で全体の落札率は99.31%である。
余りに落札率が高くはないか。
また総合福祉センターは延床面積が6,158.6㎡、この落札金額では423,505円/㎡である。
因みに2007年の東京都内のRCマンションは230,000円/㎡(総合研究所、工事費)。
福祉センターの建設事例として広島県安佐南区地域福祉センターは(平成18年)工事費17億5,732万円、305,460円/㎡である。
同区内の他の5施設の工事費を比較検討し建設工事費を㎡単価で26%削減したと公表している。
また、富岡公民館空調設備改修工事の入札には、入札者14社、落札率は95.48%。
何故同時期に入札をおこなった総合福祉センターの(機械設備)落札率が98.57%で富岡公民館の空調は95.48%なのか。
95.48%で総合福祉センターの(機械設備)が落札されれば1,400万円程度が節約でき、建設・電気設備をあわせた全体がこの比率で落札されればおよそ1億円が節約できていた。
「傍聴席」 所沢の民主主義をサポートするささやかなメディア…
http://blogs.yahoo.co.jp/tokocitizen_c14/41550658.html
※2
各工事の落札率が 95%以上を「談合の疑いが極めて強い」、落札率 90%~95%を「 談合の疑い. がある」とされている。
http://www.ombudsman.jp/taikai/6-rakusatsu.pdf#search='%E8%AB%87%E5%90%88++%E8%90%BD%E6%9C%AD%E7%8E%87++95%25'
http://www.ombudsman.jp/taikai/6-rakusatsu.pdf
※3
落札率
予定価格に対する落札額の割合。
100%に近いほど落札業者の利益が大きく、談合によって落札率が上がれば、それだけ税金が無駄遣いされることになる。
全国市民オンブズマン連絡会議などは「90%以上は談合の疑いがあり、95%はその疑いが極めて強い」と指摘している。
(2011-10-16 朝日新聞 朝刊 茨城 1地方)
https://kotobank.jp/word/%E8%90%BD%E6%9C%AD%E7%8E%87-885812
※4
所沢市工事請負業者等指名委員会規程
http://www1.g-reiki.net/tokorozawa/reiki_honbun/e309RG00000203.html#e000000048
※5
所沢市 官製談合 疑惑
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%3A%E6%89%80%E6%B2%A2%E5%B8%82
そして、所沢市の債務残高も問題でしょう。
< 所沢市の財政 >
所沢市の債務残高は1,033億円あります。
市民が34万人なので一人当たりに換算すると約30万円になります。
所沢市は2011年度予算で約80億円の歳出超過となり、税収不足を謳ってるにもかかわらず、市職員の高額給与・退職金などの無駄使いを改めていません。
それでは、以下に所沢市を放漫財政にしたであろう、役職に就いた市職員の名前を挙げようと思います。
平成12年
細井義公 企画部長 小澤 孝 総務部長
村上逸郎 再開発事務所長 志村勝美 下水道部長
志村 弘 財政部長 松山雅臣 市民部長
岩渕淑子 保健福祉部長 栗原功道 保健福祉部次長
中澤貴生 環境部長 並木幸雄 清掃部長
山下正之 経済部長 小峰 威 道路部長
大塚哲史 都市計画部長 高橋晴夫 都市整備部長
平成13年
星野協治 道路部長 岩渕淑子 保健福祉部長
小澤 孝 総務部長 細井義公 企画部長
並木幸雄 清掃部長 志村勝美 下水道部長
山下正之 経済部長 中澤貴生 環境部長
大塚哲史 都市計画部長 高橋晴夫 都市整備部長
志村 弘 財政部長 松山雅臣 市民部長
栗原功道 保健福祉担当理事
平成14年
小桧山正幸 水道部長 星野協治 教育総務部長
小澤 孝 総合政策部長 細井義公 財務部長
栗原功道 保健福祉担当 西久保正一 環境クリーン部長
高橋晴夫 まちづくり計画部長 小峰 威 中心市街地
志村勝美 道路公園部長 中澤貴生 下水道部長
川原賢三郎 市民経済部長 岩渕淑子 保健福祉部長
平成15年
再開発担当理事 星野協治 教育総務部長
中澤貴生 下水道部長 柳下昌夫 水道部長
小澤 孝 総合政策部長 二見 孝 財務部長
川原賢三郎 市民経済部長 小桧山正幸 保健福祉部長
西久保正一 環境クリーン部長 高橋晴夫 まちづくり計画部長
中村光夫 中心市街地 志村勝美 道路公園部長
平成16年
西久保正一 総合政策部長 二見 孝 財務部長
中村光夫 中心市街地整備担当理事 中澤貴生 下水道部長
澁谷好彦 市民経済部長 小桧山正幸 保健福祉部長
川原賢三郎 環境クリーン部長 高橋晴夫 まちづくり計画部長
小暮欽三 事務部長
平成17年
永田幸雄 中心市街地整備担当理事 高橋晴夫 道路公園部長
石井忠男 下水道部長 星野協治 水道部長
西久保正一 総合政策部長 澁谷好彦 財務部長
斉藤 清 市民経済部長 小桧山正幸 保健福祉部長
川原賢三郎 環境クリーン部長 中澤貴生 まちづくり計画部長
小暮欽三 事務部長
平成18年
石井忠男 下水道部長 星野協治 水道部長
西久保正一 総合政策部長 竹内利明 危機管理担当理事
澁谷好彦 財務部長 斉藤 清 市民経済部長
永田幸雄 中心市街地整備担当理事 高橋晴夫 道路公園部長
小野民夫 保健福祉部長 高麗 潔 環境クリーン部長
中澤貴生 まちづくり計画部長
平成19年
村山金悟 危機管理担当理事 澁谷好彦 財務部長
本間幹朗 市民経済部長 小野民夫 保健福祉部長
高麗 潔 環境クリーン部長 斉藤 清 まちづくり計画部長
永田幸雄 中心市街地整備担当理事 中 隆 道路公園部長
石井忠男 下水道部長 水道事業 富澤行雄 水道部長
平成20年
小野民夫 総合政策部長 村山金悟 危機管理
本間幹朗 財務部長 富澤行雄 市民経済部長
黒田信幸 保健福祉部長 高麗 潔 環境クリーン部長
中 隆 まちづくり計画部長 黒須 実 中心市街地整備担当理事
神田 博 道路公園部長 鈴木康夫 下水道部長
並木俊男 水道部長 笹原文男 センター事務部長
平成22年
仲 志津江 こども未来部長 並木俊男 環境クリーン部長
鈴木康夫 総合政策部 富澤行雄 財務部長
笹原文男 総合政策部長 青木直次 水道部
大舘 勉 市民経済部長 内藤隆行 保健福祉部長
新堀祐蔵 街づくり計画部長 黒須 実 中心市街地整備担当理事
木村一男 建設部長 藤巻和仁 下水道部長
澁谷好彦 水道事業管理者
平成23年
大舘 勉 総合政策部長 粕谷不二夫 下水道部長
仲 志津江 こども未来部長 中村俊明 環境クリーン部長
鈴木康夫 危機管理担当理事 桑野博司 財務部長
能登則之 市民経済部長 内藤隆行 保健福祉部長
新堀 祐蔵 街づくり計画部長 沖本 稔 建設部長
澁谷好彦 水道事業管理者 青木直次 水道部長
地方自治体の歳入に対しての人件費比率ランキングで、所沢市は29.74%であり、全国ワースト1位となっています。(2006年度予算ベース)
また、所沢市の債務残高は1,033億円という膨大な額であるにもかかわらず、現在もなお、歳出総額の約30%が市職員の人件費に使われています。
所沢市は約500億円の税収があり、補助金と借金(市債)などを加えた約800億円が所沢が1年間に使える金額です。
800億円のうちの30%、すなわち約240億円が人件費ですから、所沢市単体での税収500億円を分母として計算すると、約50%、すなわち半分が人件費に使われていることになります。
所沢市職員の平均給与が753万円であり、所沢市の財政状況には見合わない、非合理的な高額給与です。
主要先進国における公務員の平均給与は、
イギリス:410万円 ドイツ:355万円 アメリカ:340万円 カナダ:320万円 フランス:310万円 です。
この給与の額でも充分に公共サービスが行えるという合理的な数値です。
「 所沢市の債務残高は1,033億円あります 」
健全な財政状況ではありません。
市職員に支払われている給与・退職金を減額すると共に、共済年金の支給額も減額し、市の債務の減少にあてるべきです。
所沢市役所
〒359-8501 埼玉県所沢市並木一丁目1番地の1 電話(代表) :04-2998-1111
財政課 電話番号 04-2998-9030 メールアドレス a9030@city.tokorozawa.saitama.jp
引用:
「傍聴席」 所沢の民主主義をサポートするささやかなメディア…
所沢市の債務残高は1000億円
http://blogs.yahoo.co.jp/tokocitizen_c14/36348376.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tokocitizen_c14/37594680.html
http://www.t-kaze.jp/Q&A.html
http://www.t-kaze.jp/kouhou/kaze%20vol,6.pdf
http://www.t-kaze.jp/kouhou/kaze%20vol,5.pdf
http://blog.ishimotoryozo.com/?eid=1218728
http://blog.ishimotoryozo.com/?day=20070413
http://blog.ishimotoryozo.com/?day=20100307
http://gikaikaikaku.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-e656.html
http://blog.goo.ne.jp/tokorozawa-goo/e/68a02438bcaeb2abba9dd81a95e41782
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