北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

プランド・ハップンスタンス理論

2009-06-20 23:42:36 | Weblog
 


 来年に向けた就職活動がさかんに行われています。私の娘も夏休みに上京して会社訪問をするのだそうですが、上手く行ってくれると良いなあ。

 さて、今の自分の立場を振り返ってみて、若かりし頃に予測出来た事ってあったでしょうか。

 「おれは絶対に社長になる!」と言って本当に社長になる強者もいることはいますがごく少数。それに比べると、「こんなはずじゃなかった」と臍をかんでいる人もいれば、逆に予想もしない生き方を選択した人も多いはず。

 自分の仕事や身分が人事異動や転職などで変化して、いろいろな経験を積んできた道筋を「キャリア・パス」と言います。

 何かの目標に向かって意図してキャリア・パスを形成して行くのと、出会いに身を任せるのとでは何が違うのでしょうか。


---------- 【以下引用】 ----------
「プランド・ハップンスタンス理論」とは
http://www.educate.co.jp/2008-10-05-11-32-19/64-2009-03-06-08-11-14.html


 1999年にスタンフォード大学のクランボルツ教授らはキャリア形成に関する斬新な研究を発表しました。数百人に及ぶ成功したビジネスパーソンのキャリアを分析したところ、そのうちの8割は「いまある自分のキャリアは予期せぬ偶然に因るものだ」と答えたというのです。そのデータをきっかけとして構成されたのが、プランド・ハップンスタンス(planned happenstance)理論です。「計画された偶然」「意図された偶然」などと訳されます。

 この理論が大きな話題を呼んだ背景には、従来のキャリア論(自分が積み上げる職歴を意図的に計画すること)の限界があります。「職業とそれに適した性格や能力」、「自分のやりたい事」、「自分の得意な事や苦手な事」、「両親をはじめとした周囲からの期待」、などなど。これらを合理的に分析してゆけば、どのようにキャリアを歩めば良いかの正解が得られるというのが従来の考え方でした。

 少しでも実際のキャリアを歩んでみた人は、上記のような考え方が有効では無い場面に多々出くわしているはずです。職業名から想像するステレオタイプと反対の人、例えば地味な商社マンや派手な銀行マンで成功している人は確かに存在します。「自分のやりたい事」が簡単にわかれば苦労はしません。自分が苦手だと思っていたこと、例えば人前でのプレゼンテーションが実は得意だと判明したりする経験は少なくないです。周囲から大反対された転職がきっかけで花開いた人も沢山います。

 となると自分のキャリアを真剣に考えることはムダなのでしょうか。あみだくじやサイコロで進む道を決めれば良いのでしょうか。それは極端すぎる立場と言えるでしょう。そしてこれら2つの立場の良いところを統合した新しい考え方が生まれたわけです。

 プランド・ハップンスタンス理論は以下の3つの骨子から構成されます。
【1】個人のキャリアは、予期しない偶然の出来事によってその8割が形成される
【2】その偶然の出来事を、当人の主体性や努力によって最大限に活用し、キャリアを歩む力に発展させることができる
【3】偶然の出来事をただ待つのではなく、それを意図的に生み出すように積極的に行動したり、自分の周りに起きていることに心を研ぎ澄ませることで自らのキャリアを創造する機会を増やすことができる

【2】での偶然が起きた後、そして【3】での偶然が起きる前について、「プランド」すなわち「計画された」というニュアンスが見て取れます。

 仮にA君という人がいたと仮定しましょう。彼は経理の仕事をしているのですが、セールス職への興味が最近増してきています。そこに【1】の偶然が起きました。ネット書店に経理の専門書を注文したのに、間違ってセールスのノウハウ本が配達されたのです。

 ここで【2】が出来る人とそうでない人の違いが生じます。【2】が出来ない人はネット書店にクレームを言い、本来注文した経理の書籍に取り替えてもらってそれで終わりです。【2】が出来る人は違います。この偶然は何かの必然であるととらえ、セールス本を熟読したり、さらにはその著者にメールを打って「経理出身でもセールスは出来ますか?」と質問したりもするのです。

 このようなキャリアを発展させるきっかけになる偶然は全員に同じ確率で起きるのではありません。それを語っているのが上記の箇条書きの【3】です。百歩譲って偶然が起きる確率が同じだとしても、意味のある偶然が起きたことに気付く感受性は人によって大きく異なります。好奇心を持つ、諦めずにやりぬく、楽観的に取り組む、リスクを取る、柔軟に対応する。これらの行動特性を持つ人は沢山の大事な偶然と出会うことが出来、それがキャリアを推進させる原動力となるのです。

 プランド・ハップンスタンス理論の斬新さは多くのビジネスパーソンを印象づけましたが、クランボルツ教授らの研究そのものには異論もあり得ます。まずは偶然というものの定義の問題です。当人が偶然だと認知した出来事でも、実は支援者が裏で手を回してくれたのかもしれません。あるいは、サバイバル・バイアスの問題もあります。成功のための手法を導き出す研究なのであれば、成功した人だけに聞くのではなく、成功しなかった人にも同様の調査を行わなければなりません。

 そう考えるとクランボルツ教授らの研究は純粋なサイエンスというよりも、「好奇心を持つ、諦めずにやりぬく、楽観的に取り組む、リスクを取る、柔軟に対応する」を心がけなさいという人生訓の要素が強いとも言えるでしょう。

 ちなみにプランド・ハップンスタンス理論と共通する思想を持つ小説、エッセイ、自己啓発書がいくつもあります。村上春樹氏の「遠い太鼓」、勝間和代氏の「起きていることはすべて正しい」などがあげられます。それらの中から1988年にパウロ・コエーリョによって書かれたベストセラー小説「アルケミスト」のフレーズを1つだけ紹介してこの用語集の結びに替えさせて頂きます。

「前兆に気が付くようになるのだよ。そして、それに従って行きなさい」



---------- 【引用ここまで】 ----------

 人生の生き方には二通りあると言われます。「山登り型」と「いかだ下り」です。

 山登り型は、頂上を目指して一合目、二合目…とじっくりと予定通りの道を歩んで行く生き方。一方のいかだ下り型は、流れに身を任せてあっちへ行きこっちへ行き…と必ずしも予定しない結果になることもしばしば。

 ここでいうプランド・ハップンスタンス理論というのはいかだ下り型の生き方に近いようですね。

 問題は、そこで出会う様々な人や事柄に半分運命を感じて、のめり込んで行くのかどうか、ということでしょう。

 掛川にいた時は、「なだれ込み」という言い方もしていました。何かに出会って、そこから先をどうしようかと悩んだ時はなだれ込むように、とりあえず運命に身を任せてみようという生き方。私は結構これで素敵な出会いに恵まれました。

 読書などもそうですね。日々出る書物の数を考えたら一生のうちにあと何冊本が読めるかと絶望的になりますが、そのなかから数少ない出会いを楽しむことになるのですから。

 まあ「こ、これが運命の出会いなのか?」などと悩むよりも、「あいつはどこへ行っても楽しそうだな」と思われるような生き方なら大丈夫かと思いますが。 

 
コメント
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