以前静岡県に出向していたことがある、という某省庁の官僚の方にお会いする機会がありました。
お互いに静岡のお茶の話で大いに盛り上がったのですが、友人のサトー君がプロデュースしている、ペットボトルの水に入れるお茶を見せたところ、話題は一気に静岡のお茶話になりました。
そしてその方は「静岡の人たちは自分たちのお茶へのプライドがあるのか、売り方が昔そのもので頑固でしたよ」と笑います。
「そんなに頑固でしたか?」
「ええ、一度県の仕事で、コンビニのセブンイレブンを訪ねて、『静岡茶をセブンイレブンでも使ってほしい』と売り込みに行ったことがありました」
「そうですか」
「そうして、静岡茶を売り込んだんですが、相手からはこんなことを言われました。曰く、『最近はワインでも、赤・白・ロゼという別があって、それぞれにフルボディ~ライトとか、甘い~辛いとかいった区別をつけて、お客様が選びやすいような工夫をしています。そう思うと、静岡茶にはどういう分類とかお客様のニーズを拾うような工夫をしてくれるでしょうか』と言うのです」
「なるほど、静岡の人たちは、掛川茶、川根茶、菊川茶といった産地の別は訴えるけれど、味の区別などはしない気がしますね。どこも深蒸し茶一本、みたいな(笑)」
「そうそう(笑)。そこを突かれて、やっぱり静岡ではそういう対応をしていませんでした。そのうえで、『静岡県さんには以前から、そういうニーズ対応が必要ですよ、と言っているのですが、なかなか対応していただけませんでした。そして、そういう対応をしてくれたのが鹿児島県だったので、今うちではもっぱら鹿児島茶を使っています』と言われたんですよ」
「あらら」
「静岡のお茶って、そういう無理をしなくても昔ながらの『やぶ北の深蒸し』というブランドで、ある程度はちゃんと売れるんでしょうね。だから世間のニーズが変化してもそれをつかもうとする気持ちってあまり高くないように思いました」
静岡県民のお茶に対する思いからすると、「さもありなん」と思うような指摘でした。
「それにね」
「まだありますか」
「あるある(笑)。静岡県にいた時に、今度は東南アジアでお茶の商談会みたいなイベントがあって、それに行ったことがあります。そこではライバルは、中国茶だったり、インドの紅茶だったり、国単位のお茶文化の戦いみたいな感じでした。日本からは、静岡茶に狭山茶、鹿児島茶なんかも参加して、『日本の緑茶・グリーンティー文化を売り込もう』と言っていたはずなのに、現地では『静岡茶のブースが欲しい』とか地域茶で売りたいという要望が出て来たんです。そんなのは世界の人には通じない、と思いましたが、(そんな場面でも地域ごとのライバル意識が強いんだなあ)と可笑しくなりました(笑)」
やっぱり外の人は不思議に感じることって多いようです。いろいろな付加価値とか、飲みたくなる、欲しくなるような仕掛けを用意するのが案外苦手だったのだと私も感じます。
そういう雰囲気が、茶商さんが代替わりして若い方が経営するようになって、少しずつ改善しているような話も聞こえるようになりましたが、まだまだやれることって多そうです。
「小松さん、"クイーン・オブ・ブルー"ってご存知ですか?」
「残念ながら知りません。それって何ですか?」
「お酒を飲めない人に、それ以上の価値を味わえるようなお茶で、ワインボトルに入っているんですよ。ネットで調べるとわかると思いますが、知恵とアイディア一つで、お茶の付加価値ってもっと出せるように思いますね」
その方とお別れしてから、"クイーン・オブ・ブルー"について調べてみましたが、なるほど、JALの国際線ファーストクラスで提供されている高級なお茶とわかりました。
やっぱりよそ者には色々感じるところが多かったようです。さあ、ガンバレ静岡茶!
【ワイン?いいえ、30万円のお茶です
~ボトル高級茶で世界に挑むベンチャー企業】 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140421/263215/