水産物の仲買人をしている友達から「ちょっとわかれば教えてくれない?」と相談を持ち掛けられました。
「なに?どうしたの?」
「今度法律が変わって、水産品のアワビとかナマコを取り扱うのにパソコンでなにやら登録をしたうえで取引をしなくちゃいけないようになるらしいんだけど、なんだか難しくて」
聞けばその背景は、アワビやナマコの密猟を撲滅するために通称「水産流通適正化法」が今年の12月から適用になるということなのだそう。
アワビやナマコは密猟品が市場に流れ込んで、反社会的な組織の収入になっているという側面があり、漁師さんたちの生活が脅かされていることにもなります。
それを防ぐためには「警察や海保、農水省が頑張れ」という意見もありますが、とにかくそうした取り締まりのを潜り抜ける悪い人というのはいるものです。
こうした密漁や、ルールを無視して自分勝手に採取する悪辣なものは「IUU漁業」と呼ばれているそうで、今国際社会・水産業界が無くそうとする対象です。
それらは
①Illegal : つまり法律違反の違法な犯罪。
②Unreported : 何をどれだけ獲ったかを報告しないこと。
③Unregulated : ルールを決めずに規制なくいくらでも獲ってしまうこと。
…ということです。
特に魚などは海の中を国境を越えて移動するので、一つの国が頑張っても規制のない隣の国で獲られると捕まえられないなどの難しさがあります。
また水産物の中でも特に、アワビ・ナマコは価格が高く効率的に収入になるために違法な行為が目に付く魚種になっているとのこと。
そのためついに国も重い腰を上げて、アワビ・ナマコの密猟撲滅のための制度を作ったのです。
具体的には、
①採った人と取扱事業者の届出、
②採った人と取扱事業者間での漁獲番号等の情報を伝達すること、
③取引記録の作成・保存、輸出入に際し適法に採捕されたものである旨を証する書類の添付の義務付け等の措置を行う、とされています。講ずるものです。
そしてこれらに寄らない取引を行った場合は一定の罰が下されることになりました。
つまり、違法に採取するだけでなく、不適切な水産品という事が分かっていながら運んだり保管したり買ったりするようなことがあれば一定の懲役や罰金が下されることになりました。
しかしこの制度を精緻に運用しようとすると、取扱業者であることの証明や正しい水産品であることの証明、適切な取引記録の作成・保存などの事務手続きが新たに必要になります。
私もちょっと手伝うつもりで水産庁のホームページなどを見て見ましたが、いや、なかなかに大変です。
特に今日では、デジタル化社会の推進という観点で、これらの事業者登録、取り扱い時の情報管理、取引記録の作成・保存…などの多くの原則スマホやパソコンでデジタル情報としてやり取りすることが求められています。
法律が適用になる今年の12月までには事前手続きを済ませておく必要があり、制度を理解したりデジタルが苦手という人には難行・苦行ともいえるでしょう。
しかしそれでも水産を取り巻く関係者の皆さんにはその難しさと面倒くささを越えて、適正な水産物の流通が実現するように尽力していただきたいと思います。
世の中全てデジタル化の波がこんなところにまで押し寄せています。
現代人はありとあらゆる場面で、世の中の変化についてゆくための勉強がますます大変になる時代を生きているのだと実感します。
美味しい水産物を食べるために関係者がこんなに苦労しているという事は知っておくほうが良いと思います。