北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

創造的な家事

2007-12-21 23:26:18 | Weblog
 年末もいよいよあとは来週を残すのみ。

 今年は28日が御用納めですが、前日の27日の夜に帰省する予定。北海道はもう相当雪が積もっているようで、体がついて行くかどうか心配です。

    ※    ※    ※    ※

 職場に、来年の春に結婚を控えたなかなかチャーミングな女性がいて、「今週末は新婚の電化製品を買うんです」と嬉しそうな様子。

 聞けば、お互いに実家に住んでいるので使える独身電化製品がないのだとか。

「へえ、一番楽しいときですねえ。カタログを見て『どれにしようかなあ』なんて悩んでいるうちが一番楽しいよね」すると彼女は
「え?電気屋さんで決めようかと思ったんですけど…」とこともなげ。

「ええ?だって、欲しい機能と値段を相談して、メーカーの好みとかいろいろ決めかねるものじゃないですか」
「あ~、あまり考えていませんでした」

 呑気なものですねえ。まあ幸せなら良いか。

 聞けば彼女は私のブログを時々見ていて、料理のコーナーに興味津々のよう。料理はあまりしたことがないというので、私のレシピをもう少し詳しく書いて欲しいとか。

「なるほど。でも料理コンテンツはホームページが花盛りで、料理名で検索するとものすごい数のサイト紹介がでてくるはずですよ」と言うと、
「そんなに詳しくない方がいいんです」とのこと。必要に迫られればきっと上手になると思うけど。

    ※    ※    ※    ※
 
 料理と言えば、大学浪人をしていた頃の話を思い出しました。

 私は、同じ予備校に通う4人仲間で一軒の家を借りて、そこで共同自炊をして勉学に励んだのでした。

 4人いるので、最初は家事を四人で分担するのに、一人は掃除、一人は洗濯、一人は風呂掃除、一人は料理、と得意な作業で分けたのですが、一ヶ月もしないうちに料理担当から相談があって、「俺だけが創造的な家事なのでつらい」とのこと。

 なるほど、他は単純労働ですが、料理だけは毎日献立を考えるので大変だ、と改めて思い知って、それからは家事のローテーション表を作って日々家事を入れ替えて一年間を過ごしたのでした。

 「料理は創造的な家事だ」というのは名言。食べるのは数分でも、作るのには一時間くらいかかりますし、おまけに食材や栄養のバランスも大事。

 何事も面白がることができれば楽しくなりますし、楽しくなければ続かないというところでしょうか。

 最初の料理担当者は今では大学の医学部の教授になりました。やっぱり頭が良かったんだな。
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女性の社会進出

2007-12-20 23:44:28 | Weblog
 今日はちょっとした勉強会をしているメンバーでの忘年会。誰のストレスがどう溜まっているのか、夜遅くまで飲んでしまいました。

 今日だけ飛び入りで参加してくれた、ある建築会社の幹部の一言。

「外国へ行って交渉ごとや打ち合わせをすると、必ず向こうには幹部の中に女性がいるんです。ところがこっちはおじさんばっかり。女性の感性が反映されない国というのは遅れていると思われるんじゃないかなあ」

「なるほど、しかし最近は女性の方が成績が良いと聞きますけど」
「あ、それは絶対にそうだね。採用面接の時は、昔はなんとしても女性を取ろうと思って、女性にいわゆる『ゲタを履かせる』なんてことがありましたけど、今じゃあ男の方にゲタを履かせないとみんな女性ばっかりになっちゃうくらいですよ。しかしねえ…」

「しかし…、なんですか?」
「建築の設計なんてやっぱり労働集約型というか、今でも月に100時間以上残業なんてざらなんですよ。そうなると女性に無理はさせられない。採用の時は女性の方が成績が良いんだけど、残業に耐えて仕事をしてくれるのは、最後は男になっちゃうんだなあ」

「モノになる、というはどれくらいの比率ですか?」
「男性で3分の1で、女性は10分の1くらいですかねえ。おまけに女性は結婚して出産すると休暇にはいるでしょ?やっぱり会社としては雇用してもどれくらい貢献してくれるかというリスクがありますね。しかし、最初に云ったように、これからは女性の管理職クラスをどうやって育てて行くかが大事なことになりますよ」

 女性に社会の中でどう活躍してもらうかが大切なようです。

    ※    ※    ※    ※

「一人面白い採用担当者がいましたよ」と幹部の方。
「へえ、どういうことですか」

「そいつが『なんとしてもこの女性を採用してくれ』って云うんですよ。でも会社はリスクがあると渋っていたんです。そうしたら…」
「そうしたら…、どうなりました?」

「その採用担当者は『出産して子育て休暇に入る前に元は取るから!』って云いましたよ。面白い言いぐさだなと思いましたね。もちろん採用しましたよ、はっはっは!」

 女性が大いに力を発揮できる時代になりましたが、男の方もそれをしっかりとサポートするような、良い関係を構築する努力が必要なようですよ。

 
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『リスク』を考える

2007-12-19 23:17:41 | Weblog
 パソコン回りの年末バージョンアップシリーズの最後を飾るのは、大容量ハードディスクの購入です。年末セールは安い価格が張り出されるので魅力です。



 パソコンには、ソフトやデータを記憶しておくハードディスクという装置がありますが、高速で回転する金属の円盤に磁気でデータを記憶させるこの装置はしばしば壊れます。

 パソコンのハードディスクが壊れると、パソコンが起動しなくなり、中に記憶させてある、これまで作った文章やデジカメの映像なども取り出せなくなることになります。
 
 ハードディスクが壊れることを『クラッシュ』と呼びますが、かくいう私もこれまで3回、ハードディスククラッシュを経験しています。その瞬間は突然訪れて、我が身を絶望に陥れます。

 パソコンに詳しい人ならば、壊れたハードディスクから必要なデータを救出することができることもありますが、やはりできないことも多いのです。ディスクのクラッシュはパソコンの最大の脅威です。

 ディスククラッシュは必ず発生するリスクと考えれば、リスクが発生しても影響を最小限に食い止める方法を考えましょう。それがデータのバックアップという作戦です。

 本体に入っているデータをそっくりそのまま別なところに格納しておけば、本体が壊れたときには、格納庫から同じものを取り出して新しいディスクにもデータを復元できるでしょう。
 これならば、多少の時間はかかっても、以前と同様の状態まで戻すことが可能、極めて現実的な対処の仕方と言えます。

 そこで今日買い求めたのが、そのための大容量ハードディスク。本体の状態をそっくりそのままバックアップして、本体が壊れて起動しなくなったときにはこちらから立ち上げることだってできる優れものです。

 以前はただデータを保管するだけだったのですが、最近は保存先からも立ち上げることが可能になりました。技術の進歩はすごいなあ。

    ※    ※    ※    ※

 ところで、バックアップ用に買った大容量ハードディスクも、やはりハードディスクなので、壊れるリスクが無いとは言えません。
 本体とバックアップ用の両方が同時に壊れる確率は極めて低いと考えられますが、やはり道具ですから、こちらも壊れるリスクがあります。

 メーカー自体も一年間は機械の故障を保証してくれますが、それ以上の期間のリスク回避のためには、買ったお店の保証サービスを購入します。ポイントの5%を払うと保証期間が5年鑑に延長されるのです。

 これでまずは一安心。しかしこの保証書をなくすリスクはどうなるのか、とか、そもそも保証サービスを受けていることを忘れるリスクも存在しています。

 結局どこまで行ってもリスクはゼロにはなりません。こんな事ばかり考えていたら不安で夜も寝ていられません。
 しかし社会的に無視できる確率になれば良しとするというのが現実的なリスク管理の考え方です。

 北海道の熊は怖いけれど、熊に襲われて亡くなる人は数人。一方交通事故では年間に5千人以上が亡くなっています。熊よりも交通事故で死ぬリスクの方がの方が千倍も高いリスクがあるのです。

    ※    ※    ※    ※

 悲しむべき事に、長崎県佐世保市で猟銃による殺人事件が起きました。
 
 この世に銃がある限り、こうしたことが起きるリスクは絶対にゼロにはなりません。しかし我々の英知を結集して、こうしたことが発生するリスクを押さえ込まなくてはなりません。

 必要なことは感情に流されて、行き過ぎややりすぎな対応策を講じ、そのうえすぐに忘れてしまうことではなくて、何が現実的な対応なのかを熟慮して対処し、そうしていつまでも忘れないことだと思うのです。

 今日買ったハードディスクの保証書は絶対に忘れないところに入れておくことにしようっと。 
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忘年会は屋形船

2007-12-18 23:28:24 | Weblog
 今日は横浜の職場での忘年会。幹事さんがいろいろと工夫をして、今回は横浜港での屋形船の中での宴会を企画してくれました。

  

  

 屋形船って夏のものかと思っていましたが、窓を閉めて中でストーブを炊けば立派な宴会空間です。中は畳で天井の高さは170センチくらい。長身の人だとちょっとつらいくらいです。

  

 お料理は鍋に揚げたての天ぷらがついてきます。焼酎を割るのに「ハイピッチ」という怪しげな飲み物が出てきました。うーん、屋形船御用達なのかな、いかにもレトロなところが笑えます。

  

 船ははしけを離れるとややしばらくみなとみらい地区を眺められるところで止まると、ゆらゆらとそのまま漂っています。

 食事が一段落ついたあたりで湾の外へと動きだし、大観覧車やレインボーブリッジをくぐると急旋回して再び港の中へと戻ってきます。船酔いを心配しましたがそれほど揺れることもなく、冷たい風も心地よいほど。

  

  

 今年一年もいろいろありましたが、まあ無事で良かったといった話で盛り上がりました。

 幹事さん、いろいろと大変な企画をしてくれてありがとうございました。なかなか得難い体験でした。
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プリンターの進歩

2007-12-17 23:27:39 | Weblog
 昨日のプリンターの故障を受けて、早速新しいプリンター購入に走りました。善は急げ。どうせ買わなくちゃ行けないのだったら、躊躇している暇はありません。

 新宿西口の○ドバシカメラへ行くと、年末商戦で店内は大にぎわい。もちろんこの時期ですから、プリンターコーナーの販売にも熱が入っています。

 とりあえず印刷さえできればよいので、秋葉原へ行って中古の安いジャンク品ということを考えつつ、まずは新製品の現状をチェック。

「いらっしゃいませー。ご説明させてくださーい!」という若い店員さんも活気があります。

「最近の流行はどのあたりなの?」とまずは同行チェック。
「今は、紙の印刷はもちろん、スキャナ、コピー印刷、フォト印刷までもが一台でできるというマルチタイプが流行で、しかも先週末からどんどん値が下がっているんですよ」

「へー、どれくらい?」
「先週2万円だったのが週末に1万9千円になり、今は1万8千円になりました」

(もう少し待てばなお下がるのか?)などと思いつつも、スキャナーやコピー印刷機能もついているのは魅力です。

 もちろん、大きな紙を印刷できるような高級機種はもっとお高いのですが、それほどの使い方はしないので、売れ筋あたりが良さそうです。

 いろいろと悩んだ結果、この際だから、2~3千円を惜しむのはよそうと考えて、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、一番人気の機種を購入しました。 

 機能は毎年アップしてしかもお値段は毎年あまり変わらないということのよう。新しい機械を買うときはいつも、(これ以上どんな機能が必要なのかな?)と思うくらい機能が充実しているように感じるのですが、翌年は必ず前年よりも良い機種が登場するから不思議です。

 欲望こそが社会を進化させている現場は、電化製品の新機種をみれば一番分かりやすいかもしれません。

 さて、来年はどんなニュータイプが登場するんでしょう。今ついている機能だけでもう使い切れないんだけど…。
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この大事なときに…

2007-12-16 23:50:40 | Weblog
 年賀状の名簿の作成が終わりました。喪中葉書を整理してリストを一度印刷し、住所を再度確認して間違っているところを修正します。

 ここまでが作業の胸突き八丁で、ここを丁寧にやっておくと、その先の作業は手戻りがぐっと少なくなります。

 そのチェックを何とか終えて、いよいよ宛名の印刷です。いつものプリンターをセットして、印刷開始。ぐんぐん作業が進みます。

 さすがは印刷ロボット。真面目に一生懸命に働いてくれ…、ん、ん?おやー、調子が悪いなあ…。数枚印刷したところでやがて止まってしまいます。全部で400枚近い年賀状の半分くらいを印刷したところでどうにも動かなくなってしまいました。

    ※    ※    ※    ※

 私のプリンターは、調子が緑のランプがついているのですが、不調になるとそれがオレンジになって点滅します。何回点滅するかで不調の原因を知らせてくれる、というのもなかなかの優れもの。

 しかし点滅する回数からマニュアルを見ても対処ができません。どうやらプリンターヘッドという精密な部分が不調なようで、マニュアルには「お近くの販売店で修理が必要」という情けない回答。

 ネットで調べると、このプリンターはその手の故障が多いようで、対処の仕方を教えてくれるサイトもありました。しかしそこで紹介されている手法を使っても、自分で直すことができません。

 今から修理に出していたのでは、年末に間に合うはずもなく、どうやら新しいプリンターを購入しなくては駄目かも知れません。

 前回はせっかく褒めてあげたのになあ。一番大事なときに壊れるなんて、まさにマーフィーの法則。

 年末は出費がかさみます。トホホ

 
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カキフライの幸せ

2007-12-15 23:44:11 | Weblog
 夕方食材を仕入れに行くと、牡蛎(かき)が安かったので今日は牡蛎フライに決めました。

 今までは揚げ物をしなかったので、牡蛎フライが食べたくなったときはショッピングセンターの総菜コーナーのできあがったパック入りを買っていたのですが、やはり揚げたてというわけにはいきません。

 先日のパイナップルなしの酢豚以来、揚げ物料理の道具を揃えたので揚げ物も怖くはないのです。

 衣とパン粉をつけて揚げればよいだけ。ここでも中華鍋が大活躍でからっと揚がりました。

  

    ※    ※    ※    ※

 キャベツの千切りとあわせて、レモン汁とソースをかけると炊きたてご飯がたまりません。立派な牡蛎フライ定食のできあがりです。

  

 自分で揚げればまさに揚げたてが食べられる道理。うーん、もっと早く気付けば良かったなあ。

 ちなみにみそ汁はなめたけ汁。冬の味覚とあったかご飯を堪能して、日本人に生まれた幸せに浸りました。
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近世風俗史

2007-12-14 23:20:53 | Weblog
 久しぶりに家の近くの良書ばかり置いてある古本屋さんに立ち寄りました。いつもの親父さんがいましたが、客が本を選んでいるときに声をかけたりする野暮はありません。

こちらの目的は、単行本の古本が取り寄せできるのかどうか。すばらしい本にめぐり合ったのですが、全五巻のうち1巻だけが手に入った状態。残りの4冊が手に入るものかどうか・・・。

「あのう、こちらでは古本の取り寄せなんてできるのでしょうか」
「一応伺いはしますけどね」と古い大学ノートを取り出しました。

「それで、なんていう本ですか?」と親父さん。
こちらは(この親父さん、知っているかな?)と思いながら「え~、守貞謾稿(もりさだまんこう)って言うんですが」
「守貞謾稿!それはなかなか出てこないなあ・・・」この親父さん、この本を知ってる!

  

 この守貞謾稿というのは、喜田川守貞という天保時代の人が、江戸と京都、大阪の三都の風物がいろいろと違うことを面白く思い、当時の目に映るものをことごとく説明しようとした江戸時代後期の風俗百科事典のような本なのです。今日、岩波文庫の黄色い背表紙で「近世風俗史」という題名で全五巻が世に出されていますが、江戸時代の百科事典のようなもので、実に良い本です。

「一巻目はどちらで手に入れられましたか?」
「え・・・と、こちらじゃなかったでしたっけ?古本なんですが」

「いや、うちじゃないねえ」と、私の本を手に取ると背表紙をめくって「あ、神田ですね」
なるほど、神田の古書店のタグがついていました。

「守貞謾稿ねえ、これはいい本ですよ」
「僕も一巻だけ見て、いい本だなと思いました」

すると親父さんは、「こういう本はちゃんと読まなくちゃ。そこにありますよ、全五巻で」と本棚の一角を指差すと、ほ、本当だ、全五巻の大判でケースに入った古本がありました。
「えーとね、定価3万円が1万7千5百円。こういう本は単行本ではなくて、子供にも残してあげたいくらいですよ」

「いや、残念ながら僕の場合は取っておく様な本の読み方をしないので、この単行本ももう落書きだらけで・・・。本には申し訳ないけど。しかしここにあるのが分かりましたから、臨時収入でもあれば買いに来ますよ」
「分かりました。一応2巻め以降があるかどうかを探しては見ますよ。でもこういう本は出てこないから期待しないでください」
「はいはい」

やれやれ、本の題名だけでどこにあるかまで知っているとは!少し試して見ようなんて思うこちらが恥ずかしい。久しぶりに訪ねた古本屋さんでしたが、また親父さんの博識に脱帽です。

本への相通じる思いを感じて、ちょっと心が温かくなりました。



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母性社会と父性社会

2007-12-13 23:56:24 | Weblog
 つい先頃無くなった河合隼雄さんと言えば、先の文化庁長官として知られていますが、もともとはユング派の心理学者です。

 しかしその興味の対象は広く、心理学から派生して文化・社会に関しても多くの著作があります。

 『母性社会 日本の病理』は1976年に出された本を単行本化したもので、当時発表したいくつかの文章を合わせたものですが、その鋭い分析は今日なお切れの良い論調です。

  

 タイトルにも用いられた「母性社会」というのが日本の社会を一言で言い表すキーワード。もう30年も前に著者は当時の『日本社会の社会情勢の多くの混乱は、筆者の見解によれば、父性的な倫理観と母性的な倫理観の相克(そうこく)のなかで、一般の人々がそのいずれに準拠して良いか判断が下せぬこと、また、混乱の原因を他に求めるために問題の本質が見失われることによるところが大きいと考えられる』と看破しています。

 著者の河合さんは臨床心理学者として個人の心理療法に当たるうちに、その個人の心の中に彼を取り巻く社会や文化のあり方が反映されていると感じることが多く、そこに我が国の母性文化の特質が存在していることを痛感するようになった、と言います。

 母性の原理は、全てのものを良きにつけ悪しきにつけ包み込み、そこでは全てのものが絶対的な平等性をもつ、という面をもち、しかしながらその原理は同時に、自分が包み込んだはずのものが自分から離れることを許さないという側面も持ちます。

 そうして母性原理は肯定的に見ると生み育て慈しむものであり、否定的に見ると、飲み込みしがみつき、死に至らしめるという側面ももつものとして理解されます。

 これに対して父性原理は「切断する」機能にその特性を示します。全てのものを善と悪、上と下、認めるものと認めないもの、などなど。

 母性が子供を平等に可愛がるとしたら、父親は良い子と悪い子を分ける規範を持って子供を鍛えようとします。しかしながらこの父性もあまりに強すぎると、切断の力が強すぎて破壊にいたる面も持ちます。

 この二つの相反する原理は、もちろんどちらかだけを有するものではなく、両者の面を持ちながらそのどちらかが優勢に働く、という形で現れるのですが、我が国はどう考えても母性の強い社会であると認識されているようです。

     ※    ※    ※    ※

 河合さんの文章の中で面白かったのは、日本は元々母性社会が強かったので、それ一辺倒で行くのを避ける意味で社会の装置として家父長制という父性原理でその短所を補償してバランスを取る工夫をしていたのではないか、と言う下り。

 それが戦後、アメリカが平等意識を持ち込んで家父長制を破壊したところで、母性社会に歯止めをかける社会的機能が働かなくなったのではないか、と言うのです。

 しかしながらそのアメリカは、と言うと、強すぎる父性原理の社会であるが故にいかに母性を取り返すかということに腐心しているのだ、とも述べられていて、日本がいかに父性を取り戻すかに苦労していると言うことと対比されています。

    ※    ※    ※    ※

 この母性と父性は、平等主義か能力主義か、という事にもつながり、最近の日本が能力主義を取り入れようとやっきになっているのは、母性社会に父性社会を取り戻す動きの一環と読めないこともありません。

 しかしどうも日本人には、急激な変化の中でその肯定的な面についていけていないようにも見受けられます。世の中を動かして行くにはバランスとゆっくりとした時間をかける必要があるということです。

 自動車を運転していてハンドルを切るときは、ハンドルの【あそび】を使いながら少しずつカーブして行くものです。そうした時には少し戻すような操作をしながら目的の方向に舵を切って行く柔軟な操縦方法が必要なのです。

 さて、母性社会と父性社会のバランスをどう取って行きましょうか。
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世界が広がる

2007-12-12 23:43:40 | Weblog
 今の職場の、大学同窓生による忘年会が開かれました。上は13年先輩から下は20年後輩まで多士済々です。

 今まで何となく会釈だけで通り過ぎていた人が、実は同期生で何人か名前を挙げるとみんな知っていたり、大学の先生の名を挙げると「そいつとは教養時代からの同級生だったよ」などと言われて嬉しくなります。

 中には「あの方は高校が旭川だったはずですよ」と教えられて挨拶に行くとまさに高校の先輩で、「僕はこの職場に長いけど、高校の同窓生にあったのは初めてだよ」などと向こうも嬉しそうです。
 特徴のある先生の話題で大いに盛り上がりました。

    ※    ※    ※    ※

  私は今の職場ではよそ者なので、こういうちょっとしたつながりが実はものすごく強力な絆なのだということを改めて感じます。

 宴会の最後はもちろん寮歌。明治45年寮歌「都ぞ弥生」です。

 「我らが三年を契る絢爛の宴はげに過ぎやすし…」口上からはいるから立派。今は口上を言えない人が増えました。

 全員が肩を組んで「都ぞ弥生」を歌えば、先輩も後輩もなくてみんながそれぞれの青春の風景の中に戻っているようです。

    ※    ※    ※    ※

 今日は知らなかった20人と知り合いになれて、世界がまた広がりました。

 自分の今生の世界はこうやって広がって行くのです。

   
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