いよいよ伊豆天城での富士会議の始まり。(提供は「世界に価値あるイノベーション」を提供する●BM社)
この会は、全国から50数名の50歳以下のメンバーが集まって、一つのテーマで意見交換をするというもので、普段は会えない各界の有志の話が聞けるのですばらしいのです。今回のテーマは「変える勇気、守る勇気」と題して、やや閉塞感漂う日本社会の有り様を考えるということになりました。
最初にプレゼンターとして毎回いろいろな方に講演をお願いしているのですが、今回は前東大総長にして「知の構造化」などの提言をし、現在は三菱総研理事長となられた小宮山宏さん。会の慣例により、敢えて『先生』とはお呼びしないことにします。
※ ※ ※ ※
小宮山さんの講演のテーマは「課題先進国」ということで、社会の変化をどう認識して、それに対応した社会にどのように変化して行くべきか、というお話でした。
「最初に、いつも言い続けている言葉を贈ります。それは『本質を捕らえる知』、『先頭を走る勇気』、『他者を感じる力』ということの三つで、これらを行うためには勇気が必要だろうということです」
「今日はビジョンについて語りたいと思います。先の夢がないと社会は前に進みません。アメリカ大統領選でヒラリーは「オバマには経験がない」と言いました。それに対してオバマはこう言いました『言葉が持つ、人を鼓舞する力を軽んじては行けない』と。人間はつい目先を見てしまい、小さいことにしか目がいかない。そんなときに広げる力になるのは大いなる原理なんです。大きなビジョンを持ちたいと思います」
小宮山さんは穏やかな学者という印象からかけ離れて、とっても面白いアジテーターでした。
※ ※ ※ ※
まずは経済の今後の見通しから。
「21世紀の新しい需要とは何だろうか?社会に新しい状況が生まれたらそれに対して需要が発生するものです。そしてこれから生まれる新しい社会の状況とは三つのことがあるでしょう、つまり
①爆発する知識 … 1000~10000倍に20世紀の知識は増えた
②有限の地球 … エネルギー不足、環境、パンデミックもそうもしれませんだ
③高齢化する社会… 高齢化は確実に来る未来、人口予測は簡単
このうち、②の有限の地球について少し話をしましょう。今後の未来に何が起こるかと言えば、
① 人工物の飽和
② 地球温暖化の進行
③ 資源の欠乏 ということになるでしょう。この現実をまず理解して欲しいのです」
「人工物の飽和というのは、先進国では人口がもう増えないから、モノが売れなくなるのは当然です。自動車だって国内では10年に一度の買い換え需要しかなくなるんです。日本には自動車が6000万台あるけれど、10年に一度買い換えるのでは、年間に600万台しか売れなくなるのです。しかしそうなると、車の材料ももう大部分がリサイクルでつくれるようになります。車のために必要な鉄は車のスクラップを再利用すればいいんです。触媒のためのインジウムなど希少金属だって、車に使われている形で国内にあるわけで、これらを再利用すればもう輸入する必要だってなくなっちゃう。日本ではこれが2050年頃までにそうなるだろうと考えています。つまり循環型社会に変わることで、日本は原料資源をそれほど輸入しなくて済む国になるんです」
資源輸入国の宿命を背負っていると思われた日本ですが、循環社会を形成すれば原料輸入が少なくて済むというのは…なるほど~。
※ ※ ※ ※
「そんな日本だけれど、やはりエネルギーと食料だけは輸入しなくてはなりません。しかしそのエネルギーだって、省エネ効率をさらにあげるような世界最先端の技術が日々生まれているのです。ニーズがあれば技術革新(=イノベーション)が起こって、新しい社会が到来するするんです」
「例えば家の省エネをもっと進めることだってできるのになぜしないのか。世界の住宅で一枚ガラスが標準なんて日本くらいなものですよ。世界は二重ガラスの窓が当たり前、ヨーロッパでは三重ガラスだってある。そうして一度暖めれば火を消しても暖かい住宅や、一度冷やせばエアコンを止めても良いくらいの保温性を持った家にすれば、エネルギー消費が押さえられるし、なにしろ家計の燃料費が少なくて済むんです」
「例えば200万円で太陽電池パネルを設置したとして、200万円の投資でも電気を売ったり省エネで電気代が安くなることで年間20万円が浮きます。すると10年で元が取れるじゃないですか。そうした投資を国が国債を発行することで設置を進めることができないか、という考えで提唱しているのが『自立国債』というわけ」
「絶対儲かるのになんでやらないのかな~(笑)儲かることをやれば結果として世界の環境に寄与貢献出来るんだからねえ。今日、こんなことができるのは日本くらいなんですよ」
「かつて公害で汚かった川崎や水俣を見てごらんなさい。今日こんなにきれいな都市になりました。日本はちゃんとしたことをやっているのであって、近現代の歴史はそれを物語っているじゃないですか、歴史を勉強しなくちゃ」
そのうえで、
「日本は自分の課題を解決出来れば世界のモデルになれる時代になったんです。これからの社会は明るいビジョンを作って前に進むことです。きっと誰かがついてきますよ」
ビジョンを作って前に進め、それが知の本質だ!というお話は心に染みました。
小宮山さんの著書「課題先進国」も読まなくては。
※ ※ ※ ※
今年も楽しい語らいの富士会議ですが、私は今年で卒業となります。何とも寂しいのですが仕方がありません。後輩に席を譲って、これを糧に前に進まなくては。
この会は、全国から50数名の50歳以下のメンバーが集まって、一つのテーマで意見交換をするというもので、普段は会えない各界の有志の話が聞けるのですばらしいのです。今回のテーマは「変える勇気、守る勇気」と題して、やや閉塞感漂う日本社会の有り様を考えるということになりました。
最初にプレゼンターとして毎回いろいろな方に講演をお願いしているのですが、今回は前東大総長にして「知の構造化」などの提言をし、現在は三菱総研理事長となられた小宮山宏さん。会の慣例により、敢えて『先生』とはお呼びしないことにします。
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小宮山さんの講演のテーマは「課題先進国」ということで、社会の変化をどう認識して、それに対応した社会にどのように変化して行くべきか、というお話でした。
「最初に、いつも言い続けている言葉を贈ります。それは『本質を捕らえる知』、『先頭を走る勇気』、『他者を感じる力』ということの三つで、これらを行うためには勇気が必要だろうということです」
「今日はビジョンについて語りたいと思います。先の夢がないと社会は前に進みません。アメリカ大統領選でヒラリーは「オバマには経験がない」と言いました。それに対してオバマはこう言いました『言葉が持つ、人を鼓舞する力を軽んじては行けない』と。人間はつい目先を見てしまい、小さいことにしか目がいかない。そんなときに広げる力になるのは大いなる原理なんです。大きなビジョンを持ちたいと思います」
小宮山さんは穏やかな学者という印象からかけ離れて、とっても面白いアジテーターでした。
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まずは経済の今後の見通しから。
「21世紀の新しい需要とは何だろうか?社会に新しい状況が生まれたらそれに対して需要が発生するものです。そしてこれから生まれる新しい社会の状況とは三つのことがあるでしょう、つまり
①爆発する知識 … 1000~10000倍に20世紀の知識は増えた
②有限の地球 … エネルギー不足、環境、パンデミックもそうもしれませんだ
③高齢化する社会… 高齢化は確実に来る未来、人口予測は簡単
このうち、②の有限の地球について少し話をしましょう。今後の未来に何が起こるかと言えば、
① 人工物の飽和
② 地球温暖化の進行
③ 資源の欠乏 ということになるでしょう。この現実をまず理解して欲しいのです」
「人工物の飽和というのは、先進国では人口がもう増えないから、モノが売れなくなるのは当然です。自動車だって国内では10年に一度の買い換え需要しかなくなるんです。日本には自動車が6000万台あるけれど、10年に一度買い換えるのでは、年間に600万台しか売れなくなるのです。しかしそうなると、車の材料ももう大部分がリサイクルでつくれるようになります。車のために必要な鉄は車のスクラップを再利用すればいいんです。触媒のためのインジウムなど希少金属だって、車に使われている形で国内にあるわけで、これらを再利用すればもう輸入する必要だってなくなっちゃう。日本ではこれが2050年頃までにそうなるだろうと考えています。つまり循環型社会に変わることで、日本は原料資源をそれほど輸入しなくて済む国になるんです」
資源輸入国の宿命を背負っていると思われた日本ですが、循環社会を形成すれば原料輸入が少なくて済むというのは…なるほど~。
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「そんな日本だけれど、やはりエネルギーと食料だけは輸入しなくてはなりません。しかしそのエネルギーだって、省エネ効率をさらにあげるような世界最先端の技術が日々生まれているのです。ニーズがあれば技術革新(=イノベーション)が起こって、新しい社会が到来するするんです」
「例えば家の省エネをもっと進めることだってできるのになぜしないのか。世界の住宅で一枚ガラスが標準なんて日本くらいなものですよ。世界は二重ガラスの窓が当たり前、ヨーロッパでは三重ガラスだってある。そうして一度暖めれば火を消しても暖かい住宅や、一度冷やせばエアコンを止めても良いくらいの保温性を持った家にすれば、エネルギー消費が押さえられるし、なにしろ家計の燃料費が少なくて済むんです」
「例えば200万円で太陽電池パネルを設置したとして、200万円の投資でも電気を売ったり省エネで電気代が安くなることで年間20万円が浮きます。すると10年で元が取れるじゃないですか。そうした投資を国が国債を発行することで設置を進めることができないか、という考えで提唱しているのが『自立国債』というわけ」
「絶対儲かるのになんでやらないのかな~(笑)儲かることをやれば結果として世界の環境に寄与貢献出来るんだからねえ。今日、こんなことができるのは日本くらいなんですよ」
「かつて公害で汚かった川崎や水俣を見てごらんなさい。今日こんなにきれいな都市になりました。日本はちゃんとしたことをやっているのであって、近現代の歴史はそれを物語っているじゃないですか、歴史を勉強しなくちゃ」
そのうえで、
「日本は自分の課題を解決出来れば世界のモデルになれる時代になったんです。これからの社会は明るいビジョンを作って前に進むことです。きっと誰かがついてきますよ」
ビジョンを作って前に進め、それが知の本質だ!というお話は心に染みました。
小宮山さんの著書「課題先進国」も読まなくては。
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今年も楽しい語らいの富士会議ですが、私は今年で卒業となります。何とも寂しいのですが仕方がありません。後輩に席を譲って、これを糧に前に進まなくては。