スイ～ト スイ～ツ ショコラ

ゆうきりんさんの『スイ～ト　スイ～ツ　ショコラ』を読みました。

智代はパティシエールである。
製菓学校の卒業旅行で、連日、本場のスイーツを食べまくり、胃が重くなったところで訪れたショコラトリー、
つまりチョコレート専門店で勧められたジャンジャンブル。
ぽ、と頬が熱くなり、重かった胃がすっきりと軽くなり、背筋までしゃんと伸びる思いがした。
あれが、智代がショコラに目覚めた瞬間だった。

帰国してからも、チョコレートに力を入れているパティスリーでショコラの基礎を学びながら、
数年後には渡仏して、その店のオーナーも働いたショコラトリーを紹介してもらえそうな感じにもなっていた。

だが、父が事故に遭ったときから生活は一変した。
父の介護のために店を辞め、親元に戻り、父が困った時にすぐ自分を呼べる範囲で新しい店を探した。
最初は、父が治るまでの腰かけ程度のつもりだった。

しかし、ほとんど完治し職場復帰しても、娘との同居を喜ぶ父に、本物を学ぶために
独立したいとは言えなかった。
また、客にあの喜びを知ってもらいたくても、銀座のデパートで売るならともかく、
この店に買いに来てくれる客層には、高価で売れないことは明白だった。

智代の葛藤の行方も気になるところですが、同じ店でアルバイトをしている高校二年生の愛子に起きた
焼き芋事件に心を温められ、販売スタッフ唯一の正社員である優花の過去が、物語を引き締めてくれます。

いつもは近くの安価な洋菓子店で、たまには高価で美味しく繊細なパティスリーで、
私たちが何気なくいただいているケーキやショコラから、こんな素敵な物語が生み出されました。
近いうちに、本物のショコラを食べに行きたいな。そんな気になるお話でした。