こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『9の扉』北村薫ほか

2014-07-20 19:40:39 | 本と雑誌

最初の執筆者が次の執筆者を指名し、お題を渡して書いてもらい、また次の方をという風なリレー形式の短編集です。

法月綸太郎さんの「まよい猫」は、ユキムラさんとちひろさんの入れ替わりについて、どちらとも取れる結末になるところが面白いです。

鳥飼否宇さんの「ブラックジョーク」麻耶雄嵩さんの「バッド・テイスト」は、見事に連作になって面白く、拍手を贈りたい気持ちになりました。

そういう意味では、貫井徳郎さんの「帳尻」と歌野晶午さんの「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」も続き物になっていましたが、痛々しい結末になっていましたので、ちょっと辛く感じました。

ラストの辻村深月さんの「さくら日和」は少女の切ない物語でしたが、結末が最初の執筆者である北村薫さんの「くしゅん」に戻って円環になっているように思われ、うまいなあと思いました。

収録の順番はバラバラになってしまいますが、北村さんの「くしゅん」は、長年連れ添った夫婦の妻の独白が、とてもやりきれない空気を醸し出し、殊能将之さんの「キラキラコウモリ」は、日常の中に寒気を感じさせるものとなり、竹本健治さんの「依存のお茶会」は、人間関係の薄ら寒さを思わせるものでした。

面白かったです。

9の扉 (角川文庫) 9の扉 (角川文庫)
価格:¥ 562(税込)
発売日:2013-11-22
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする