最初の執筆者が次の執筆者を指名し、お題を渡して書いてもらい、また次の方をという風なリレー形式の短編集です。
法月綸太郎さんの「まよい猫」は、ユキムラさんとちひろさんの入れ替わりについて、どちらとも取れる結末になるところが面白いです。
鳥飼否宇さんの「ブラックジョーク」麻耶雄嵩さんの「バッド・テイスト」は、見事に連作になって面白く、拍手を贈りたい気持ちになりました。
そういう意味では、貫井徳郎さんの「帳尻」と歌野晶午さんの「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」も続き物になっていましたが、痛々しい結末になっていましたので、ちょっと辛く感じました。
ラストの辻村深月さんの「さくら日和」は少女の切ない物語でしたが、結末が最初の執筆者である北村薫さんの「くしゅん」に戻って円環になっているように思われ、うまいなあと思いました。
収録の順番はバラバラになってしまいますが、北村さんの「くしゅん」は、長年連れ添った夫婦の妻の独白が、とてもやりきれない空気を醸し出し、殊能将之さんの「キラキラコウモリ」は、日常の中に寒気を感じさせるものとなり、竹本健治さんの「依存のお茶会」は、人間関係の薄ら寒さを思わせるものでした。
面白かったです。
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9の扉 (角川文庫) 価格:¥ 562(税込) 発売日:2013-11-22 |