『居酒屋ぼったくり』秋川滝美

こぢんまりした昔ながらの商店街の中ほどにある居酒屋ぼったくり。
開店当初はどこにでもあるような屋号だったのが、店主が「誰でも買えるような酒や、どこの家庭でも出てくるような料理で金を取る。うちの店は、もうそれだけでぼったくりだ。」と常々呟いていたので、常連たちが、いっそ店名から「ぼったくり」にしてしまえと、新しい暖簾まで贈ったことから始まる。

現在、店は娘で姉の美音と妹の馨が引き継いで、それまでの常連も引き続き通っている。

工事現場で足場の組み立てをやっているトクさんの若い弟子が、仕事がいやになったと現場に来なかったことを話したり、早紀という少女が、共働きをしている両親のために小遣いで貯めた少ない金額で買える鰻を、一家で食べられる知恵をさずけたりと、小さな居酒屋でも、客やご近所の悩みをみんなで解決していきます。

中でも、店じまい前に現れた新しい客が、新しい風を持ってきたようで、日頃穏やかな美音が怒る姿が面白いです。
もちろん、美味しい食事に美味しいお酒が安価にいただけて、居心地もよいという風景が読者の心を和やかにしてくれるところもいいですね。
３巻まで出ているので、未読の方はぜひ。
私も続きが早く読みたいです。