こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『春となりを待つきみへ』沖田円

2021-10-19 20:00:47 | 読書感想
 
瑚春が人通りの多い大通りを仕事帰りに歩いていると、見知らぬ男にお願いをされた。
「俺を連れて行って」

気づいてみると冬眞と名乗るその人物は、瑚春のアパートに上がり込み、ちゃっかり住み着いて家事はするものの瑚春に養われていた。

当の瑚春は、ずっと一緒だと思っていた春霞がいなくなってから実家を飛び出し、一度も戻ることなく両親からの手紙さえ見ていない。
なぜなら、彼らが春霞を守ってくれなかったから彼がいなくなったと思っているから。
冬眞は、そんな瑚春の心をまるで春霞のように和ませ、少しずつ心を開かせていった。

しかしある事から、瑚春は冬眞の正体を知る事となる。

心の傷を負った女性が、何気ない出会いからその傷を癒していく、とても優しく、泣ける話だと思います。

ただ、裏表紙のあらすじはいただけません。
物語の90%は、明かしているではないですか?
今の若い読者は、そんなにも思いと違う内容を嫌うのでしょうか?
失敗と思えても、それで違った考えや発想に出会えて、いい経験だとは思えないのでしょうか?
また、新しい本を選ぶ時のヒントになるかもしれません。

確かに生活が厳しいのは分かるのですが、あまりにも無駄を嫌うのは、一歩間違うと怖い発想になるかもしれません。
例えば、嫌いな人物は無駄だから殺すとか、自分自身でさえ無駄と思えば自殺するとか。
考えすぎかもしれませんが、最近の世の中が殺伐としているのは、そういう考えもありそうで恐ろしく思います。

本作とは関係ありませんが、そういう事も考えてしまうあらすじではありました。
コメント
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