『泰平ヨンの未来学会議』スタニスワフ・レム

コスタリカで開かれた第八回未来学会議に出席した泰平ヨンは、テロ事件に遭遇。
さらに、それを鎮圧するために軍が投下した幻覚薬物を吸ってしまう。

ホテルの地下に逃げ込み死ぬ思いをし、すったもんだしたあげく冷凍睡眠を施され、未来の世界で目覚めることとなった。
そこは戦争やテロのないユートピアに見えたが・・・。

うーん。初めはかなりおちゃらけた明るいＳＦだと思わせて、そう来ましたか。
かなり多層的に騙してくださって、この世界に冷え冷えした心持ちにさせられました。
面白かったです。

６月に「コングレス未来学会議」という映画としても公開されたので、活字の苦手な方は、そちらを見るのもいいのかもしれません。
私は、公開された映画館が遠かったので、まだ見られませんが、そのうちレンタルででも見られたらいいなと思っています。

『落語こてんパン』柳家喬太郎

喬太郎さんが、季節やその日の気分で選んだ古典落語のあらすじや解説ばかりか、やりどころや難しさについてなど、落語家さんの視点も加えて語ったエッセイ集です。

私は聴いて笑うばかりで、演じる上でそういう難しさがあるとは気づきませんでしたので、「へぇ？この噺がねえ」と驚かされてばかりでした。
また、喬太郎さんが意外とご自身の落語に自信が無さそうなのに驚くとともに、少しホッとしました。
私も自分に自信が持てない方なもので（苦笑）。

余談ですが、少しはひいきにしているつもりの柳家三之助さんの名前が載っていたのは、嬉しかったです。
また、度々名前の出てくる入船亭扇橋さんのＣＤも、聴きたくなってきました。
ブックオフで偶然見つけて、買ったんですよね。
定価で買うのがすじでしょうが、その時は、買い逃すと出会えない気もして・・・。
六代目柳家小さんさんの襲名披露で初めて拝聴したのですが、あれが最初で最後になってしまいました。
東京までは、なかなか行けませんものね。でも、残念です。

あれ？本題から激しくずれてしまいました。
ともかく面白いので、未読の方はぜひ。

『ショートショート・マルシェ』田丸雅智

山菜採りに行った先で出会った、ネコの芽とは？
仕事関係の宴席で、珍しい茸があるという村に誘われたが？

食べ物に関するショートショート集です。
私が今回、特に気に入ったのは、「キープ」「カフェの素」「踊茸」「差し歯」「男をつかむ」「鯛の鯛」「ＭＥＮ」「二枚目の」です。

「キープ」に関しては、食べた人に副作用はないのか田丸さんに伺いたいのもありつつ、面白いですね。

『学校のぶたぶた』矢崎存美

今回の山崎ぶたぶたさんは、スクールカウンセラー。
正体を明かすのはほとんど相談者くらいなので、中庭で弁当を食べながら相談してもカウンセラーにかかっているとばれません。

自己表現が苦手なさおり、急に無口になってしまった昴、そしてイジメ問題も発生しますが、そのどれにもぶたぶたさんが時間をかけて根気よく相談に乗ってくれます。

最後の信くんには少々ずっこけましたが、まあ、こんな子にもいてもらいたいですよね。

それはともかく、本当にこんなに親身になってくれるスクールカウンセラーがいてくれたら、どんなに心強いだろうと思いました。

あと偶然にも、昨年の７月１４日に『ぶたぶたの本屋さん』の感想を書いていました。
発売日も近かったので、そう不思議でもないのですがちょっぴり驚きました。

『思い出のとき修理します３ 空からの時報』谷瑞恵

川添が高三のとき、他校の女子生徒を助けたが、その子が落とした懐中時計を返し損ねたという。
しかし、彼の優等生だった同級生や、肝心の女子生徒は、時計は盗まれたものだというのだ。
果たして、その真相は？

今回も、いくつかの時計が様々な背景とともに修理に預けられ、直されて持ち主の心までも軽くしていきます。

並行して、時計店の店主である秀司と恋人の明里の関係も深まりながら、問題や悩みが生まれてきます。
恋人を想うからこそ出てくるそれらのことを、明里はどうやって解決していくのか、まずは読んでみてください。