こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『代表取締役アイドル』小林泰三

2020-08-20 19:49:33 | 読書感想
 
河野ささらは、アイドルグループ「ハリキリ・セブンティーン」のメンバーだったが、ファンがセンターの子を切りつけた事件によってグループが活動停止となる。
そうでなくても、身近に傷害事件を見た事がトラウマになって引きこもっていた。

そんな中、レトロフューチュリア社長の石垣忠則氏が、偶然見ていたテレビでのささらの発言を気に入り、”ナウいヤング”の意見を取り入れようと、ささらを社外取締役に抜擢した。

問題は、この忠則社長(後の会長)が、どんなに無茶な要求でも、部下は実現しなくてはならないし、できると思っているという、パワハラ社長で、息子の忠介(後の社長)も、そう思っている事。
さらに、社長の交代時の「売り上げを十倍にしろ」という命令が、ただでさえ社員の歪んでいた心をもっと歪ませ、あらゆる不正が生まれてしまう。
あらゆる面で状態が悪くなっていく会社に、上層部では、ささらだけが心を痛めていく。

石垣会長と社長というトップばかりか、中間管理職まで腐敗していって、ささらじゃなくても問題意識を持ちますよねえ?
何と言いますか、二代目、三代目となるに従って、一族経営はこうなりがちなんでしょうか?
某国のトップのようにも思えるのですが。
小説は、それも改善されそうですが、現実が怖いです。
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『文豪 宮本武蔵』田中啓文

2020-08-19 19:44:07 | 読書感想
 
宮本武蔵は佐々木小次郎には勝ったが、士官の道も閉ざされ、ついには、柳生但馬守に殺されそうになる。
その瞬間、死んだはずの小次郎が話しかけてきて、明治時代にまで跳ばされる。
さらに、到着した先では、偶然なのか小次郎の妹の夏に瓜二つの女性にぶつかってしまう。
しかも、彼女の名前は夏子。
樋口一葉だった。

怪我をさせてしまったと自宅まで連れて行かれ、着物の洗濯までしてもらい、夏目漱石と正岡子規に紹介してもらう。
そこでつい、小説家志望と言ってしまった事から、生活費は健脚を利用して人力車を引く事で得て、迷いながらも小説を書く努力をするのだが・・・。

剣豪が文豪だったという、啓文さんお得意の駄洒落のようなスタートではありますが、明治という、まだまだ多くの差別が残る時代で、権力者の横暴や、男尊女卑思考の自称・示現流の師範らしき男などと、初めは腕っぷしで、後には知恵で、不条理を乗り切るところが爽快です。
同時に、お夏さんと夏子さんとの関係もしんみりさせてくれる素敵なエピソードであり、肝でもありました。
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『心にいつも猫をかかえて』村山早紀

2020-08-18 16:06:30 | 読書感想
 
村山さんが飼ってきた3匹の猫などに関するエッセイと、やはり猫にまつわる短編小説が収録されています。

舞台は長崎。
なので、長崎弁で会話されています。
翻訳なさったのは、生粋の長崎の方々らしいのですが、ところどころ「こういう言い回しいたっけ?」というのが、いくつかあります。
まあ私も、長期の休み限定で、長崎でももっと南の地域に遊びに行っていただけなので、一概には言えません。

物語としては「レストラン猫目石」「クリスマスの女の子」エッセイとしては「しっぽの話」「付き添う猫」「帰りたかった子どもの話」が、特に、気に入っています。
私としては「しっぽの話」のBGMは、谷山浩子さんの「しっぽのきもち」
そのまんまですね(苦笑)
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『キスギショウジ氏の生活と意見』草上仁

2020-08-14 20:33:23 | 草上仁
 
この本を予約した時点では、文庫として普通のページ数で価格でした。
しかし、少し経ってから予定価格が値上がりしたと書店からのメールがあった時、ある予感がしました。
読了してみて「新規の方には、手加減して分冊という手もあったのではないですか?日下さん」と思いました。

まあ、分冊するくらいならもっと分量を増やすでしょうし、ここが落としどころだったのでしょうね?
もちろん!ずっと待ち続けていた私としては、この読み応えと楽しさは、大歓迎なのです。
でも、500ページ超えで、価格が1540円というのは、驚きでした。
大長編が流行った時代の本に、負けず劣らずの満足感です。

それでも、まだ、角川書店の「野生時代」に載った作品のうち、4篇が未収録だというのですから、今後を期待したいですね。

内容としては、変わったところにお住まいのキスギショウジさんの暮らしを描いた表題作が面白いのはもちろんの事、家屋が移動しまくる宇宙都市の「十五パズル」寝坊したためにお父さんの新聞を取り損ねた少年の冒険「お父さんの新聞」やせるためなら手段を選ばない女性の生態を見せる「ダイエット・ペット」など、とても楽しくバラエティに富んだ作品が並んでいます。

何より、書下ろしの「R依存対策条例」は、ある意味、「お喋りセッション」の裏のようでもあり、常識を思い切り覆してしまう、素晴らしいものとなっています。

どこかに、あなたのお気に入りが見つかるはずですので、ぜひ!ご購入いただいた上で、お探しください。

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『あしたの華姫』畠中恵

2020-08-13 19:36:45 | 読書感想
 
真実を語ると言われた真の井戸から出てきた二つの小さな玉。
それを目玉とした姫様姿の木偶人形。
それが、井戸の代わりに真実を語ると言われる”まことの華姫”

もちろん、人形なので人形遣いの月草に動かしてもらい、話すのも彼。

今回の話の中心は、華姫と月草がお世話になっている山越の親分の娘・お夏の婿探し騒動。
初めは、お夏の腹違いの二人の兄から始まり、姉のおそのの婚約者だった正五郎など、山越の親分の跡取り問題もからんでいく。

今回も、腕っぷしはもちろんの事、ほとんど頼りにならない月草ですが、華姫の力を借りつつも事件解決に励む姿を見ていると「もしや?」という気もしてきます。
・・・まあ、無いでしょうねえ。
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