こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『もういちど』畠中恵

2021-11-11 20:06:24 | 読書感想
 
廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の主夫婦が西の旅から帰って来た後。
江戸では田植えも始まっていないのに夏のように暑く、いつになく雨が降らない状態が続いていた。
よって長崎屋では、若だんなが暑さで身体を壊さないよう細心の注意を払っていた。
それでも、身体に熱がこもって倒れてしまったため、根岸に避暑に行く事にした。

しかしこのところの干ばつのため、多くの人々の雨ごいからたくさんの龍神が集まり、龍神同士の争いに巻き込まれたことと、ちょうど星の代替わりの時期にづつかったせいか、若だんなの姿が赤ん坊になってしまった。

今回、若だんなが願った事もあるのか赤ん坊ながら初めて健康体で、急速ではあっても幼児期まで育つ事で、元気な子どもがやるちょっとした悪さまで体験できてとても嬉しそうでした。
それだけに、元に戻った時の落胆は大きかったのでしょう。読んでいる方もつらかったです。
ただ、そういう中でも佐助と仁吉のいつもと変わらない態度が、ある意味では救いなのかもしれません。

健康体で日常生活を営めたら、という事だけなのに切ないです。
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『ヴィクトリア朝英国人の日常生活(下)』ルース・グッドマン

2021-11-10 20:03:05 | 読書感想
 
下巻でのヴィクトリア朝英国人の生活は、昼食から始まります。
労働者階級の家庭では「ディナー」つまりその日の主要な食事で、中流階級では「ランチ」または省略せずに「ランチョン」ただし、オフィスで働く男性は、朝しっかり食べてから夕飯までの時間は紅茶とビスケット程度でしのいでいたようです。
上流階級ともなると、男女ともに「ランチ」をもっと優雅に豪華、ただしシンプルに摂っていたようです。

続いて取り上げられる生活は洗濯。
これが湯を沸かして行われる一番の重労働で、その工程を知ると、確かにうんざりする熱気と蒸気に耐えながら全ての家事を止めて行われ、後片付けも大変なので、そりゃ嫌だろうなあとしみじみと同情しました。

他には、医療のほとんどは家庭の主婦に任され(薬の選別、調合までも)その薬を作る製薬会社でも、成分を明記しなくても良かったため、とんでもない毒性のあるものや依存性のある薬物を平気で入れていたというから、驚きでした。
あのフロレンス・ナイチンゲールさえ、アヘンチンキの依存症になったというのですから!

さらに学校、余暇、夕食、性生活と続きますが、全てにおいて身分差と経済格差を感じさせられる時代でした。
そんなわけで、例えタイムマシンができたとしても、安易に他の時代に行きたいなんて言えないなあと思います。

最後に、グッドマンさんは、実際にこのヴィクトリア朝の家事を体験なさってから書いておられるので、なおさら実感がこもっていました。
面白かったです。
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『鬼哭洞事件』太田忠司

2021-11-09 19:58:06 | 読書感想
 
狩野俊介、中学二年の夏。

鳶笊村の旧家である佐方家の跡継ぎ、康之氏が、先代所長の石神法全を頼って石神探偵事務所を訪れ、行方不明の母と妹を探してくれという依頼をした。

しかしその翌日、宿泊先の旅館で殺人事件の被害者として発見された。
そこで終わりかと思いきや、事件と依頼を知った佐方家当主の看護婦がそれを引き継ぎ、鳶笊村の宿泊まで設定してくれた。

問題は、訪れた村でも新しい事件が発生した事だった。

久々の狩野俊介君の新作ですが、今回は、彼とは考え方が真逆の探偵、兼、ミステリ作家と対決せざるを得ない状況となり、再び葛藤する事となります。
Twitterでも書きましたが、そのミステリ作家が初期の作品内のエラリー・クイーンのように鼻持ちならない奴で、イラッとさせられました。
その後の俊介君自身は今までとは違い、悩みながらもある本を読む事で成長し、平常心を取り戻せるようになったのが嬉しかったですね。
今回もとても面白く読め、俊介君の成長過程を今後も見守りたいと思いますし、ぜひ!大人になるのを見届けたいです。
という訳で太田さんと東京創元社さん、宜しくお願いいたします。
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映画『すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』

2021-11-05 14:05:49 | 映画
今日公開の映画『すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』を観てきました。

末っ子のふぁいゔが、まほうのせかいに帰り損ねたところに居場所を作ってくれたすみっコたちに恩返しをしようとして失敗するところで、とんかつが『こげぱん©たかはしみきさん(?)』みたいになるとは思いませんでしたねえ。
同じ夢をもっているはずなんですが、とんかつの方が前向きなんでしょうか?

ぺんぎん?も、ずいぶん変われば変わるものですし、ねこはともかく、しろくまも、顔色を青くしながらああなっているというのも・・・夢というよりも、やせ我慢です。

まあ全体として、夢はかなわなくても目標としてあった方がいいという事でしょうか?

可愛くて楽しかったです。
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『エラリー・クイーン創作の秘密 往復書簡1947ー1950年』ジョゼフ・グッドリッチ

2021-11-04 19:47:02 | 読書感想
 
エラリー・クイーンのペンネームを持つ二人の従兄弟同士、マンフレッド・B・リーとフレデリック・ダネイが、著作を完成させるために互いに送り合った手紙の一部が、グッドリッチ氏編集の下、三年に渡っての往復書簡として載せられています。

『十日間の不思議』『九尾の猫』『悪の起源』について、二人のクイーンが喧々諤々のディスカッションを行っているのに驚き、よく二人が生活のためであっても交流を途絶えさせなかったなあとも感じました。
だからこそ、クイーンのミステリは面白いとも言えるのかもしれませんが。

あと、この本自体の話ではないのですが、アメリカ本国でクイーンのミステリが売れていないばかりか、出版されていないという現実にも驚かされます。こんなに面白い知的遊戯はないというのに!
これについては、本編後の「最後の一撃」でその理由が意見として表されており、「なるほど!」と思うと同時に今の日本も教育を疎かにし始めているように感じられ、同じ道を歩んでいる気がして寂しくなります。
これが杞憂であることを願います。
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