先月末、福島県中通りへの旅行で購入してきた日本酒「南郷・佳撰(かせん)」を、先日飲んでみた。
福島県矢祭町にある「南郷」の蔵元、矢澤酒蔵店を訪れた折に買った酒である。
工場のわきにある事務所兼売店におられた方が、「ふだん酒として飲むならこれがいいですよ」と勧めてくれたお酒だ。
「佳撰」は南郷ブランドの中にもある純米酒や吟醸酒、大吟醸酒といったいわゆる高級酒ではなく、「普通酒」である。だが、地元の人たちに親しまれ、よく飲まれている酒とのことであった。
心して瓶のフタを開け、この日はまず冷やで(燗をせず)飲んでみた。
口に含んで、目を閉じ、意識を集中して味わってみると、なるほど飲みやすい。スッキリしていてクセがない。
つぎの日、燗をつけて飲んでみた。
すると前日とは打って変わって、グッと甘く感じるではないか。
この「南郷・佳撰」は、燗をすることで大きく表情を変える酒のようだ。
でもそれは、しつこい甘さではない。酒がより美味しくなる自然な甘さで、これなら ‘飲み飽き’ もしないであろう。
「ふだん酒」に向くと言った蔵元の方の言葉に、‘合点’ である。
瓶の正面のラベルの左肩に、大きく原材料名が書いてある。
よく見ると、一般の普通酒にはよくある「醸造用糖類」の文字がない。
酒の原材料と味について、広く実証的に研究したわけではないが、「南郷・佳撰」の自然な甘さは、ここに秘密があるのではないだろうか。
「甘みは糖分を外から加えるのでなく、酒の製造過程の中で自然に醸しています」
と、言わず語らずのうちに主張しているようにも見える。
醸造元としての「控えめな矜持」を感じた次第です。
湯と酒と人情を味わう旅・・福島県中通り2020 1 - 興趣つきぬ日々 (goo.ne.jp)
↑ 「南郷」蔵元訪問記