もとの麻雀放浪記が戦後の荒廃した世相を背景にしていたのに対して、こちらは「戦後」ということになっていても、まったく戦争の匂いがしない、三崎亜記「となり町戦争」のように、こういう一種漂白された現実味のない白々しいイメージが今の日本の戦争のイメージということか、単にイメージがつかめないでいるということか。
「杜」会長(もちろん森喜郎のもじりだろう)役のピエール瀧が麻薬取締法で逮捕された云々の字幕が冒頭に出るが、どうせなら日本選手団から集団的にドーピングが発覚してオリンピックを返上せざるを得なくなったという設定はどうだろうと思ったりした。
今のところ現実に日本選手からドーピングが検出されたことはないのだが、今の日本の公的記録の捏造隠蔽ぶりを見ていると大丈夫かいなと思わざるを得ないので。
AIやメイドなど現代風のガジェットが雑然と詰め込まれていて、ギャンブルの魔性というか先がわからない不安感とそれと裏腹の興奮といったものがAIとは相容れないさまがそのまま作品の座りの悪さになっている。
ベッキーがAI役というキャスティングが虚実が反転している感あり。
脚本に「オー!マイキー」の佐藤佐吉の名前があるのが目を引く。外人のマネキンに動きも何もなくセリフを被せてカット割りしただけでキャラクターに仕立てたナンセンスコメディの作者。AI はじめナンセンス趣味はこの人のものだろうかと想像する(実はこういう想像は見当外れなことも多いが)。
確信犯的に支離滅裂にしたと思しいけれど、それがはっちゃけたパワーを持つかというとそういうわけでもない。
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