高良健吾の目つきがファナティックな調子をよく出したし、褌姿はセクシーといえばセクシー。
ただし、逃げる二人にも追っ手がかかっているはずなのだがそのあたりの描写が手ぬるい。
ラスボス的な位置の寺島進をそれなりに理解も胆力もあるキャラクターにしているのだが、これがかえって悲壮美を損ねた感じにもつながった。体制側が理不尽な方が悲壮美は映えると思うのだが、そういう時代ではないか。
前半、全身を入れたフルショットでゆっくりとカメラが動いている。単調になるのを避けつつじっくり見せる、御年84歳の中島貞夫監督のベテランらしさというか。
画面はかなり暗くしてあるが見づらいほどではなく、殺陣はリアルな調子の一方であまり血のりや泥まみれ汗まみれにはしていない。
いろいろな段階の時代劇を通り抜けたあとでぐるっと回って原点回帰した感もある。
「多十郎殉愛記」 - 公式ホームページ
「多十郎殉愛記」 - 映画.com