すぐれた判断は「統計データ分析」から生まれる | |
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実務教育出版 |
統計データ分析について、ビジネスへの応用という観点から、手ほどきしてくれる、「すぐれた判断は「統計データ分析」から生まれる」(中西達夫:実務教育出版)。
最近、ビッグデータとかデータサイエンティストという言葉をよく聞くが、統計データを意思決定に役立てるということは昔から行われていた。しかし、データを分析して、上手く活用しているようなところは、意外に少ないのではないだろうか。
データを並べたりグラフにしたりするだけなら誰でもできるだろう。しかし大切なのは、そのデータから、どのような意味を読みとるかということだ。気をつけないといけないのは、同じデータを見ても、色々な解釈が可能だということである。データとは、まだ磨かれていないダイヤの原石と同じだ。そこから、本当に役に立つデータを切りだしてくることは、意外に難しい。いったい、どのようにして、データの山から有用な情報を切りだしていけば良いのだろうか。
本書の特徴は、竹鶴くんという、統計のことには弱い若いビジネスマンが、データ分析のエキスパートである白須さんから、いろいろとツッコミをされながらも、次第にデータ分析についての技術を習得していくというストーリーを中心にして、各エピソードに関連する統計知識を解説するという構成になっているということだ。だから、実際のビジネスに置いて、どのような場面で、どのようなことをすれば良いのかが、とても分かりやすい作りになっている。本書を熟読すれば、誰でもデータ分析に習熟できそうな気がする。
どの章にも、統計データの活用について、役に立つ事が多く記述されているが、特に読んでほしいところは、<PART5 「偶然かどうか」を判断するには>と<PART6 「一見差のないデータ」、さてどう読む>というところだ。統計データには、「偶然」というものが入りこむ。だから確率的に、そのデータは意味があるのかどうかということを評価しなくてはならない。しかし、案外とこういったことは行われてはおらず、単に生データだけを比べて、早急な判断を行っていることが多いのではないだろうか。
また、統計には、かなりの恣意性が入った見せ方がされていることも多い。本書は最初に19世紀のイギリス首相であるベンジャミン・、ディズレーリが言ったという<世の中には3種類のウソがある。ウソ、大ウソ、そして統計だ>という言葉が紹介されているが、統計データを見る場合には、ヘンなフィルターがかかっていないかどうかということも、考えながら見ていく必要があるのだ。本書には、そのために必要な知識は一通り揃っている。本書の内容をマスターすれば、統計を道具として使いこなせるようになるだけでなく、統計のウソに騙されることもなくなるだろう。
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