奈良の仏像 (アスキー新書) | |
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奈良の代表的な仏像について紹介した、「奈良の仏像」(紺野敏文:アスキー新書)。
百済から仏教が、奈良の飛鳥の地に伝来したのは、552年(538年とも)欽明帝の時代である。それ以来、我が国では、仏教美術が大きく発展し、多くの仏像が作られてきた。本書は、そんな仏教文化の原点とも言える奈良に伝わる20組の仏像について紹介したものである。「組」というのは、三尊像や堂内の諸仏というものも紹介されているからだ。仏像の特徴、見所、その仏像が表すのは、どのような仏さまなのかといったようなことが、簡潔に分かりやすく説明されており、旅行などで実際に目にする際の参考になるだろう。
意外だったのは、法隆寺に隣する中宮寺の菩薩像。あの半跏思惟の美しいお姿から、てっきり弥勒菩薩だと思っていたら、寺ではなぜか如意輪観音と伝えられているという。しかし、この像が作られた時代は、日本では如意輪観音は知られておらず、やはり弥勒として作られた可能性が高いという。それでは、どうして、寺では如意輪観音と伝わっているのか、ちょっとしたミステリーである。
残念なのは、仏像のお姿が、写真ではなくペン画だということだ。単に各仏さまについて紹介するような本ならこれでもよいだろうが、本書は、実際に寺に安置されている個々の仏像について解説したものなのである。ペン画では、実物とはどうしても感じが違ってくるので、写真を載せて欲しかった。
もうひとつ。なぜ、秋篠寺の技芸天がはいっていないのだろう。興福寺の阿修羅像と並ぶ美しい仏像だとおもうのだが。
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