文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:ペコセトラプラス

2014-10-28 19:58:37 | 書評:その他
ペコセトラプラス
クリエーター情報なし
幻冬舎



 渡辺ペコによる、いくつものオンナの物語を短編漫画で描く、「ペコセトラプラス」(幻冬舎)。作者は、北海道出身の女性漫画家で、少女や若い女性向けの雑誌に書いていたようだ。漫画も決して嫌いではない私だが、さすがに女性向けの漫画雑誌までは守備範囲に入っていない。だから、これが、初めて読むペコ作品となるが、その絵柄や作品の醸し出す雰囲気には独特の魅力がある。今回読んでみて、いっぺんで、その魅力の虜になってしまった。

 オンナの物語には、オトコが必要だ。オンナの物語は、オトコとの相互作用の中で初めて語ることができる。だからどの作品にもオトコは欠かせない。しかし、やはり中心となるのはオンナ。作品によっては、一見オトコが主役になっているものもあるが、その目を通して語られるのはやはりオンナの物語。

 特に面白かったのは、「N浜温泉紀行」という作品。仕事や人間関係に疲れた主人公の女性は、心を癒しに、有休を使って温泉旅行へ行く。行きの列車内で知り合った男に、「よかったら晩ごはん一緒にどうですか」と言われて、なにかを期待した主人公、急に色々なことが気にかかってくる。なにしろ、下着はおばさん御用達の冷え対策用パンツに猫背矯正ハイパワーバッテンブラ。ムダ毛もナチュラル、無為自然。備えあれば憂いなし(何の備えだ!?)と慌てて下着、剃刀を買いに走り、ついでに高級スキンまで。このばたばたぶりがなんとも笑える。

 「透明少女」、「たまゆら透明少女」は、ゴスロリの鎧に身を包む少女・朝子の物語。唇ピアス付きで、ビジュアル的にはかなり強烈。電車に乗ると、前に座った子供が泣き出すほどだ。しかし、そんな朝子にハットリ君というボーイフレンドができる。秋田出身の彼は、電車の中で朝子を見て、子供の頃家に来た「なまはげ」を思い出したらしいが、なんとそれが恋のきっかけなのだ。「なまはげ」を図書館で調べた朝子の感想も、「豪快で なかなかいいなと思った」というから、オトコとオンナの仲というのは分からないものだ。でも、このゴスロリ少女、なかなか可愛いところがあるので、ハットリ君、きっと当たりくじを引いたに違いない。

 そして、「ひとはだ」は、わずか6ページでオンナの一生を描いた作品。最後のページが、驚くようなオチになっており、なかなかシュールだ。この他にも様々なオンナたちの物語が繰り広げられるのだが、どれを取っても、コミカルな中にしょっぱさがある。このような物語が描けるのも作者が女性漫画家だからなのだろうか。表紙イラストもなかなかいい感じなのだが、そこかしこに生えているキノコがなんだか意味深で、気になってしまう。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと共通掲載です。

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