![]() | 落ちこぼれネクロマンサーと黒魔術の館 (創元推理文庫) |
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東京創元社 |
絶世の美女と逃避行。なかなかロマンチックな響きがするが、ではその女性が凄腕の殺し屋で、おまけにゾンビだったらどうだろう。たとえ、美女が自分に夢中だとしても、なかなか答えにくい問題だ。そんな奇想天外な設定が面白い、「おちこぼれネクロマンサー」シリーズ第2弾、「落ちこぼれネクロマンサーと黒魔術の館」(メラニー・カード/圷香織:東京創元社)。
主人公は、ヘタレネクロマンサーのワードと、彼が蘇らせた美女シーリア。前巻で、インネクロエストリ(邪悪なネクロマンサー)の絡む事件に巻き込まれたあげくに、シーリアの父親を殺した犯人として、賞金稼ぎに追われる身となっってしまった二人は、ある屋敷に逃げ込む。ところがそこは、前巻で登場した奴とは比べ物にならないくらいの強力なインネクロエストリ・マセリオの住処だった。マセリオの弟子候補とそのヴェスペリティ(強力な不死身のゾンビ)に間違えられて、館に招き入れられた二人だが、色々な思惑のもと、マセリオの所有する伝説の魔術書を手に入れなくてはならないことになってしまう。しかし、彼には、ヴェスペリティが12人も取り巻いている。果たして二人の運命やいかに。
前作では、お互いに相手を気にしながらも疑いあっていた2人だった。しかし、この巻では、二人とも、頭の中は相手のことでいっぱい。しかし、いくら思いあっても、二人は生者と死者。愛し合うことは、この世の法に背くこと。背徳の愛なら、もっと燃えてもよさそうなものだが、そこはヘタレのワード君のこと。まるで昔の中学生の恋愛のようにうじうじと悩むばかりで、まったく前に踏み出せない。そんな彼にイライラしながらも、結局は彼のいい面ばかり考えてしまうシーリア。傍から見ていると、なんとももどかしい関係なのだが、女性読者には、「そこが可愛いんや!」なんて言われるかもしれない(笑)。
ところで、マセリオの12人のヴェスペリティ。数が多い割には、結局3人しか目立った活動はない。もともと一体一体が強力な存在なので、12人全部を作品の中で動かすことには、無理があるのだろうが、少し残念である。このヴェスペリティたち、ゾンビにも関わらず、自分の意思を持っており、それぞれ思惑を持っている。結局ワードは、アレットというヴェスペリティの企みに乗せられて、彼女をマセリオのくびきから解放し、怪物として世に放ってしまった。次巻は、おそらくこの怪物を追っていく話になるのだろうが、まだ原書も発刊されていないらしい。どのような展開になっていくのか、今から楽しみである。
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