文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

怪獣記

2019-04-22 09:52:26 | 書評:小説(その他)
怪獣記 (講談社文庫)
高野 秀行
講談社

 探検家の高野さんが今回挑むのはトルコのジャナワールという怪獣。ジャナワールというのはトルコのワン湖にいるというUMAのニューフェイスだ。このワン湖というのが、アルカリ度が強い湖で、洗濯や水浴びをすると、石鹸がなくとも綺麗になるらしい。この湖にはインジ・ケファリという体長20㎝くらいのコイ科の魚1種類しか生息していないのである。

 高野さんによるとジャナワールを扱ったCNNのニュース映像を最初に視たときはフェイクだと思ったようだ。それがなぜ探検に行くことになったのか。実は、撮影者が著者として名前を連ねた「ワン湖のジャナワール」という本を東洋文庫(国会図書館付属のアジア専門図書館)で見つけたからだ。そしてこの本には、48人もの目撃証言が顔写真入りで掲載されていた。

 実は上記の本は、トルコのイスラム復興運動のオピニオン・リーダーのような人がメインで、ニュース映像を撮ったという人物はその助手のような人間らしい。そして、今はどこにいるか知らないという。

 こんなことから始まった一行のトルコ珍道中。CNNのニュース映像はヤラセだということが分かったが、本に書かれていた人たちに話を聞いていく。途中出されたアイラン(トルコでポピュラーなヨーグルトドリンク)でピーゴロゴロになったり、高野さんが記事を書いている「小説現代」を「小説天台」と紹介されたり。

 この手のものは、それらしいものには出会わないというのが普通なのだが、一行は調査が終わったと思ったときに、謎の物体に遭遇する。色々な仮説はでたものの、その正体は謎のままだ。いかにも高野さんらしいユーモラスな語り口で探検の様子が語られており、読んでいるとなかなか楽しい。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

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