さよならの言い方なんて知らない。2 (新潮文庫nex) | |
河野 裕 | |
新潮社 |
著者の「階段島」シリーズに続く、「架見崎」シリーズの第二弾。
舞台は、「架見崎」という架空の街。5㎞四方の土地に、1000人の住民が住んでいる。そして、永遠に8月をループしている。8月31日が終われば、次の日は9月1日ではない。8月1日なのだ。資源は、8月1日になれば、元の通りに回復する。住民たちは、この中でいくつかのチームに分かれて、陣取りゲームをしている。端的に言えば殺し合いをしてチームの領土を広げているのだ。敵を殺せば、ポイントを手に入れられる。ポイントを稼げば能力を手に入れられるのである。
この「架見崎」には、3大と言われるチームがある。領土が最大で総ポイント数2位の「平穏の国」、「総ポイント数」および「メンバー数」が1位の「PORT」、そしてワンマンアーミーで、メンバーは月生という男一人だけだが、個人の所有ポイントが断トツである「架見崎駅南改札前」。
この「架見崎」というのも色々と謎が多いのだが、「運営」という言葉がそこかしこに見られることから、どうも誰かの作った仮想世界のようだ。ここで死んでも現実の世界に戻るだけらしい。
ここで死んでも、現実に戻るだけだよ。なにが悲しいってんだ(p100)
主人公は、香屋歩という高2の少年。そして冬間美咲、秋穂栞という彼の幼馴染が主な登場人物だ。香屋の望みは、「架見崎」から争いを無くすこと。しかし、この巻では、架見崎の三分の二を巻き込むような大きな争いが起こる。
最大領土を誇る「平穏な国」は、リーダーで死者を蘇らせる力があると言われている聖女リリィへの信仰から成り立っている。しかし物事には裏があるもの。明らかになるのは、「平穏な国」の真実。また、「PORT」にも派閥争いがあるようである。人間が集まるところには派閥が生まれ、権力の亡者が生まれるということだろうか。わずか5㎞四方の土地の中で、ポイントを求めて争う。これが人間社会の縮図を表しているような気がする。
1巻を読んでいない人で、細かいところは分からなくても、読んでいるうちに、なんとなく想像できるだろう。
☆☆☆☆