白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫) | |
小野 不由美 | |
新潮社 |
中国風の異世界を舞台にした十二国記。この世界では、麒麟が、天の意思に沿って王を選ぶ。麒麟と言うのは、某ビールメーカーの瓶に絵があるように、中国の霊獣としてしられているが、この作品世界では人間の姿をしている。そして選ばれた王は不老不死になるらしい。本書は、新作文庫4巻構成の第2巻。舞台は、戴国。18年ぶりの新刊だという。この国では阿選という男が、王の驍宗に反旗を翻して、覇者となっている。
大分前にNHKでアニメを放映していたので雰囲気は分かっていた。帯にシリーズ累計1000万部突破とあるように、熱球的なファンがいることも理解できるような気がする。
あえて言えば、「グイン・サーガ」(栗本薫:栗本の死後、五代ゆう、宵野ゆめが書き継ぎ)となんとなく似ているのだろうか。嵌る人は嵌るんだろうと思う。今回は、私がこの作品に嵌るかどうかという実験も兼ねていたのだが、どうもそこまではいかなかったようだ。
ハイファンタジーなのだが、その世界で無双しまくる絶対強者のようなものは出てこない。どうも古代中国を舞台にした作品を読んでいるようで、この巻を読む限り、別に異世界の物語にするだけの根拠は見当たらなかった。
「しかも、地の底から妖魔が湧く。」(p130)
「これまでに三度、出たことがある。二度が妖魔で一度は妖獣だ。」(p138)
「黄海は妖魔の跋扈する人外の地で、・・」(p191)
「瑞州に妖魔が出て大変な騒ぎになったことがございますが・・」(p308)
「獣の姿も、妖魔の影もない。」(p420)
と言うような記述があるように、この世界にも魔物がいるのだが、あまり存在感がない。確かアニメでは結構出ていたような記憶があるが、この巻では、直接は出てこず、話の中に出るばかりなのだ。
注文したいのは、登場人物が多いので、主要な登場人物だけでも、巻頭にでも簡単な紹介文をつける方がいいと思う。それと色々な官位が出てくるが、これも組織図のようなものも欲しい。そして4巻構成にするからには、前巻までの簡単なあらすじを付けるなど、途中から読みだした人へのサービスも欲しいところだ。
熱狂的なファンなら不要なのだろうが、そうでもない人、たまたま読んだ人にとっては、あった方が親切ではないかと思う。特に今回は、前作から年数が経っているのだから、この作品の世界観を占めすなり、なにか工夫が欲しかった。
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。