ブタカン!~池谷美咲の演劇部日誌~(新潮文庫) | |
青柳 碧人 | |
新潮社 |
ブタカンというとあなたは何を連想するだろうか。決して鯖缶や鰯缶のような、豚の缶詰という意味ではない。舞台監督の略だ。ヒロインの池谷美咲は、父が餃子屋の経営に失敗して極貧の暮らし。何しろ、白飯だけの弁当に、幼馴染の親友の北条ナナコからおかずをのせてもらっていたくらいである。
このナナコ、人を驚かせるのが得意である。家出をすれば、鹿児島の漁師の家に居候していたり、温泉を掘るといって、不発弾を掘り当てたり、昆虫採集に行っては、絶滅したはずの古代トンボを捕まえる。
家に生活費を入れようと、アルバイトに明け暮れ、美咲には、部活などに割く時間はなかった。ところが美咲が高校2年になったころ、伯父が、宝くじに当たり、そのおかげで借金は完済。アルバイトに明け暮れなくとも良くなったのだ。美咲は遅まきながら部活をやって高校生活を謳歌しようと、ナナコの入っていた演劇部に入ることにする。
ところが、今度はナナコが病に倒れる。本人曰く「白血病的な」病気らしい。病に倒れた親友の代わりに、舞台監督をやることになった美咲だが、この部、奇人・変人ばかり。
いかにも著者らしく、変なネタが満載なのである。なにしろ演じる劇が、「走るなメロス」だったり、「白柚子姫と六人の忍者」だったり。でも全体を通して、美咲が舞台監督として成長していく物語なのだろう。
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※書評は、「風竜胆の書評」です。